49.公式生放送 ~公式イベント告知と情報開示と~
「続いて、第2陣参入記念イベントの告知に移らせていただきます」
「お、待ってました!」
陸斗が言葉通りにガッツポーズをとりながら叫ぶ。
「こら、陸斗、静かにしなさい」
「おっといけねえ」
そんな姉弟のやりとりがある中、イベント内容が発表される。
「まずは『取得経験値増加キャンペーン』です。
こちらは主に新規ユーザーの皆様向けのイベントとなっており、種族レベル30、職業レベル1次職10までの方を対象に、イベント期間中は各取得経験値が上昇いたします。
また、スキル経験値の量につきましても、ある程度のレベルまでは入手量が上昇するようになっております。
開催期間は来週のメンテナンス終了後から
「えー、それだけかよ……」
今回のキャンペーン対象から外れている陸斗は目に見えて落ち込んでいる。
「それ以上のレベル帯のユーザーの皆様につきましても、上昇量は少なめとなっておりますが、普段よりも経験値が上昇するようになっております」
「ホントか!」
「こら、陸斗。うるさいって言っているでしょ!」
陸斗のやつが発表内容にいちいち一喜一憂している。
それにしても取得経験値増加キャンペーンか。
この機会に少し戦闘レベルを上げて新しい街へ足を運ぶのもいいかもしれないな。
「それでは次に初の公式イベントとなる『第一回 武闘大会』の開催を告知させていただきます」
「おお、武闘大会、つまりPvP大会か」
今度は陸斗も叫ばなかった。
いい加減、学んだらしい。
「『第一回 武闘大会』ですがGW期間中に開催させていただきます。
また、出場資格はこちらで指定した条件で分けさせていただきます。
まず、第2陣の方のみ参加出来る『ノービスクラス』。
次に、生産者をメインとした方のみが参加出来る『マイスタークラス』。
最後に、すべてのユーザーの皆様向けの無差別級『オープンクラス』。
以上、3つのクラスにて競っていただきます。
そのほか、武闘大会に参加されないユーザーの皆様には、勝者を予想する『賭け』に参加していただくことが可能です。
それぞれのクラスの開催日ですが、『ノービスクラス』が5月3日、『マイスタークラス』が5月4日、『オープンクラス』が5月5日と5月6日になっております」
武闘大会か……参加するかどうか悩むな……
「お兄ちゃんは武闘大会参加するんでしょ?」
「いや、何で参加することが前提なんだ」
「いや、お前は参加するべきだろう。βテスト時の優勝プレイヤーなんだからな」
「そう言われてもな……いまの俺は生産職だしな……」
そんな話をしている間にも武闘大会の説明は続いていく。
「……以上が優勝賞品となります。各クラスの詳しい出場資格につきましては、公式ページのお知らせに詳しい内容が掲載されていますのでそちらをご確認ください」
詳細情報が公式ページに載っているらしいので、あとからそちらも確認しなきゃな。
「最後になりますが、来週のメンテナンス終了後より課金アイテムを実装させていただきます。
こちらは、
ただし、これらのアイテムを使ったからと言って必ず優位に立てると言ったものではありませんのでご注意ください。
……それからいわゆる『ガチャ』にあたるシステムやアイテムは販売いたしません」
ああ、課金アイテムもついに実装か。
便利系グッズは値段次第では買おうかな。
「以上をもちまして運営からの発表を終わらせていただきます。
では、ここからは質問コーナーと行きましょうか。
コメントの方に気になることを書き込んでいただければ、答えられる範囲でお答えしますよ」
そうして、運営の質問コーナーが始まった。
最初に多かった質問は、やはり『眷属』システムについての質問だった。
「やはり最初に多かったのは『眷属』システムについての質問のようですね。
『眷属』システムなどと仰々しい名称を使っていますが、わかりやすく言ってしまえばペットシステムですね。
先ほどから何回か固有名詞が出ていますが……最初に開放された眷属がそれに関するクエスト絡みのものなのは間違いありません。
運営という立場上、多くを語ることは出来ないのですが……ここだけの話をさせていただくと、こんなに早くあのクエストが発見され、しかもクリアされるとは思ってもみませんでした。
完全に運営の想定外の事態でしたね」
なかなか言いたい放題言ってくれる。
……俺だってたまたま見つけただけなんだからな。
「それからクリアした方の名誉に関わる事なので、ここで明言させていただきますが、いわゆるチートの類いは使用されておりません。
クエストクリア者の行動ログや戦闘内容の録画記録を運営管理者全員が確認いたしましたが、不正を行っていない事が確認されております。
現時点での当該クエストのクリア者は2組ですが、どちらも正規の手段でクエストに挑み、クエストクリアしている事をここに保証いたします」
運営のお墨付きをいただいた。
こういうことはすぐにチートだなんだと騒がれるからな。
騒がしくなる前に火消しを行っておこうという事なんだろう。
「掲示板の方で話題になっている討伐動画ですが、あれは2組目の攻略PTが撮影した動画です。
あのクエストにおける模範的な戦闘方法を用いている、運営的にも大変参考になる動画ですね。
ただ、個人的な話をさせていただくと、最初にクエストクリアしたPTの方が見応えのある戦いをしていましたね。
こんな倒し方もあるのかと言う事で、運営管理者全員の度肝を抜いた戦いが繰り広げられていましたからね。
禁止事項に該当するために動画記録を皆さんにお目にかけられないのが残念です」
そんなに変な戦い方はしてないんだけどな。
……いや、あのレベルであの高威力魔法連発は変な戦い方か……
「あのクエストについて詳細を語ることはできませんが、代わりに運営より特別にいくつか情報を開示します。
今回のクエスト以外の現時点で実装されている『眷属』の種類です。
……これについて許可を取るのも結構苦労したんですよ?
さて、お待ちかねの『眷属』の情報ですが、
『猫妖精・ケットシー』
『一角獣・ユニコーン』
『守護石像・ガーゴイル』
の3種類になります。
これらの『眷属』達は、特定の場所で発生する特別なクエストをクリアすることで仲間にできます。
……ああ、ユニコーンですが男性でも眷属にすることが可能ですのでご心配なく」
「他にもこんなに実装されてたんだ……」
「俺も眷属手に入れてみたいぜ!」
これはなかなかの爆弾発言だな……
公式生放送で運営から、まだ見つかっていない眷属の情報が出るとは思わなかった。
「次の質問に移りましょうか……そうですね、『生産職がどれくらいいるのか』についてなど面白そうですね。
生産職の定義が難しいですが、サブジョブに生産系の職業を設定しているユーザー数は、全体の約4割になりますね。
ですが、サブジョブが生産系1次職になっているユーザーとなりますと、全体の2割弱と言ったところです。
生産系の2次職になっているユーザーになると数える程度しかいないのが現状ですね」
おや、予想以上に生産職は少ないんだな。
せめて1次職になっているユーザーは3割はいると思ってたんだけど。
「今回の生産系技能の難易度緩和は、生産に関わる人間が一人でも増えてもらいたいという運営からの意思表示でもありますね。
さて、次の質問ですが……」
それからしばらく質問コーナーが続き第1回目の公式生放送は終わりを告げた。
――――――――――――――――――――――――――――――
「さて、生放送も終わったし、武闘大会の詳細を確認するぞ、悠」
「はいはい、ちょっと待て……」
俺はUWの公式ページを開き、そこから武闘大会についてのお知らせを開く。
そこには各クラス共通のルールと各クラスごとのルールが記載されていた。
共通ルールとしては、『回復アイテムは運営側で用意したアイテムしか使えない』『予選はバトルロイヤル方式で絞り込む』『賭けは武闘大会参加者はできない』などのルールが書かれていた。
「回復アイテムは禁止って事は、攻撃アイテムは使えるって事だよな、悠」
「多分そうだろうけど、爆弾に期待してるなら諦めた方がいいぞ。かなり威力が下方修正されてるから」
「なんだ、使えないのか」
「うーん、使い方次第だな」
次に、『マイスタークラス』のルールを確認する。
……『ノービスクラス』は参加資格がないし、『オープンクラス』は出る気がないからな。
えーと、『マイスタークラス』のルールはと……まとめるとこんな感じか。
・参加するにはサブジョブを生産系または趣味系にする必要がある
・参加者の最大レベルは種族レベル40、メインジョブ1次職レベル20までとする
(上記レベルより高い場合、種族レベル40、メインジョブ1次職レベル20まで弱体化する)
・戦闘スキルについて、一部のスキルにレベル制限がつく
(制限されるスキルは一覧を別途用意してある)
・自分で制作したアイテム以外は持ち込み数に制限がつく
(自分で作成したアイテムの持ち込み数は制限なし)
「ねえ、お兄ちゃん。このルールって、参加するときにサブジョブを生産系にしてしまえば、誰でも参加出来るよね?」
「だな。でも、戦闘職がわざわざサブジョブの恩恵を切り捨ててまで参加するとは思えないぞ」
「そう? 優勝の実績がほしい目立ちたがり屋とかだったら出るかもしれないよ?」
「そういう人間はどんなルールにしてでも出てくるから関係ないさ」
万人に公平なルールなんてありはしない。
まして、これはゲームなんだからなおさらだ。
出来る限り平等になるようなルールしか作りようがないだろう。
「ねえ、トワくん。結局、参加するの?」
「うーむ、難しいところだな……」
「別に出ればいいんじゃないか?」
「……俺の場合、クランを代表してって事になりかねないからさ……」
「……ああ、お前、クランマスターだったな」
これはあとで皆に相談する案件かな。
こうして公式生放送の話題は終了し、その後は夕飯まで4人で適当に遊んで時間を潰し、海藤姉弟も一緒に夕飯を食べて帰っていった。
なお、俺達には関係なかったのであとから知ったことだが、この日の掲示板は眷属の情報公開の件で大いに盛り上がったということだ。
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いつもお読みいただきありがとうございます。
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