第23話 フィリップ・モリスについていく。

呼ばれた。どうしたんだい?エリカ?ネルーだわ。こんにちはまた会えましたねエリカさん。あなたは誰?わからないわ。それでいいんですよ。とはいえここにずっと佇んでいるわけにもいきません。


ネルーが手に持った杖を一振りすると、

夕暮れの街の中に、光がともった。光はたちまちに闇を打ち砕く。エリカは宇宙が開かれるような予兆を感じていた。


暖かい。始まりの時だ。エリカは自分が生まれる前の時を思い出していた。だが同時に、それは生命の孤独さを感じさせた。今回も僕がいるよ。大丈夫だよ、とフィリップはエリカが落ち着くよう背中から抱きしめる。光は貴重だ。世界に広がるのは闇ばかり。


懐かしい空が広がっている。時刻は夜明け前になった。大気も、下に広がる街も、まだ眠っていて、暗い中、音もなく、街灯の明かりは奇妙なさびしさをたたえていた。


このわけもない懐かしさはなんなのか。


君と僕は前世かその前の前世かさらにその前の前世かで、この鏡の街で暮らしていたんだよ。フィリップ・モリスはエリカに口づけし、左手の薬指に指輪をはめさせた。あなたは誰なの?フィリップ?君の夫。


君はこの世の平均的な人間より高い値の分散を示している。この世にとって特別な人間だ。でも出る杭は叩かれる。特に女の子はね。だから守ってあげるよ。僕と結婚してくれ。エリカはおし黙る。照れているのか?それとも僕を拒絶しているのか?エリカ?私もあなたのことは好きよ。

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