ミス研の女部長は人使いが荒い2

 8階催し物会場の受付けで1500円の参加費を払った僕たちは、奥の薄暗いブースに通され、説明と演出を兼ねた動画を見せられた。

 黄金仮面の怪盗紳士が時限爆弾を示し、止める為の三つの数字を探せと、それなりの雰囲気で指令を出すような内容だ。

「リアル脱出ゲーム」とは銘打ってあったが、まあ所謂オリエンテーリング的なゲームと思われた。


「お腹が空いていたらこちらへどうぞ」

 ブースの出口のスタッフは、そう言いながら参加者証のパスケースと共に封筒を一つくれた。

 中には何枚かトランプのカードが入っていた。


スペードのA

ダイヤのA

ハートのA

スペードのK

スペードのJ


 うーむ……。

「ポーカーかな。だとするとこの手札なら役はスリーカード」

 真っ先にそう意見を言ったのは間村だった。

「出口の係の人が言った言葉を憶えてる? あれもヒントだと思うの」

 と、これは津村先輩。

「確か、『お腹が空いていたらこちらへどうぞ』。この台詞がヒントだとすると、この5枚のカードが示すのは、食べ物屋さんか、飲食店? 」

 香川先輩は恋人の言葉を補う。

「スリーカードが示す飲食店? 」

 と、間村。

「残り二枚のカードには意味がない? そんなヒントの出し方するかしら」

 と、津村先輩。

「トランプの絵札には、モチーフになった歴史上の人物がいるって、聞いたことがあるけど……? 」

 と、香川先輩。この人……さては自称より本読んだり雑学身に付けたりしてるし賢いな……?

 でも、5人の歴史上の人物が示す食べ物屋さんとか、複雑過ぎる気がするな……。

 逆に、帝急ハンズの中の飲食店の名前は……


……


……あっ!!!


「ちょっといいですか? 」


 僕はトランプを手に取ると、並べ変えてみんなに見せた。


「こうじゃないかな……? 」


A K A J A


「アカジャ? 」

「そんな名前のお店あったかしら? 」

「アカジャ……赤い、蛇? 」

「「「あー! 」」」


 女部長が掌を上げこちらに見せた。

 僕はきっかり一呼吸意味を組みかねた後、その掌にハイタッチした。

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