ファンタジーの評は気にするべき?

ダ・ヴィンチの「短歌ください」に、3年ぶり位に投稿歌が載った。

人魚界クロールで泳ぐ人魚らはみな労働者階級である

ファンタジー小説的発想で詠んだ歌だ。

嬉しくて雑誌を購入し、パラパラめくっていた所、阿部智里さんの「八咫烏シリーズ」の特集が載っていて「おっ」と思った。

このシリーズ、どこの書店でも大々的に展開されていて、今最も勢いのあるファンタジー小説のシリーズといえます。

ワタクシ未読なんですが、ちょっと思う事があって書いてます。

意外なんですけどこのシリーズ一冊目、『烏に単は似合わない』は、松本清張賞を受賞して世にでた作品なんですね。

当時「公募ガイド」という雑誌に公募小説で賞を取るための指南をするコラムがあり、そこで取り上げられてたんですが、もう、その評価は散々なものでした。受賞理由が分からない、公募挑戦者が決して真似ては、いけない、という位の事が書かれていたように思います。「そんなに酷いのかなあ、タイトルのセンスだけでもなかなかのものだと思うけど…」と思いつつ、と思いつつ、ワタクシ今日までこの作品読んでおりません。

それがこんな大人気シリーズになるのですから分からないものです。

今回のダ・ヴィンチの特集読むと、結構面白そうなんです。『烏に単は似合わない』は宮廷バトルにミステリー要素絡んでる感じだし、『玉依姫』は、「なんか映画『ミッドサマー』みたいな感じ?」と思わせてくれるし。世界観もガチで作り込んであるみたいで、それだけでも読みごたえありそうな感じです。

一部の評者に酷評されたというのは、恐らく評価の軸がずれてたんだろうって想像します。

小説には、特にファンタジーには、評価の軸ってたくさをあるって思います。人が小説に求める物はいろいろ。

ダンプにはねられて異世界に飛ぶような「陳腐」と評されて仕方ないストーリー展開も、読者にとっては「安心感」につながるのかもしれません。主人公が何の苦労も成長も無く無双する話も、文学的な観点からは評価されないにせよ、仕事に疲れて帰って即席でスカッとしたい人には求められるのでしょう。

八咫烏シリーズは、従来の公募作品を読み続けてきた評者には評価に値しない作品であっても、ある読者層には需要があった、という事でしょう。

阿部智里さんがすごいなって思ったのは、「年齢以外に受賞理由が見当たらない」とまで言われつつ、(雑誌でそう明かしています。弱冠20歳で受賞されてるんですね)この世界をブレずに描き続けた事。ワタクシなら自信無くして、全然別の作品書こうとしてドツボにはまりそうです…。

ファンタジー、特にハイファンタジーは、世界の構築から作業が始まってるので、大変な労力がいる一方で、執筆時の楽しみも大きい。あまり「評価」を気にせず、自分の世界を書いて行けば、誰かがその世界を気に入るかもしれません。

ファンタジーは、評価や人気よりも自分のニッチな「好き」を追及する事が大事なのでは。そんな風に思うのであります。

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