閑話 速水 桜の独白

 あいつの事を初めて聞いたのは高校生になって初登校した日だった。


 初登校というのは入学式の日ではなくそれから約1週間後の事だ。

 怪我で入院していたため入学式には出られなかった。

 幸い中学からの友人が多くいたため入院していたというとは周知の事実だったから突然登校しても浮くという事はなかった。


 そして初登校。

 あの歩美と仲良くしている男がいるという噂を耳にしたのだ。

 あの歩美がだ。

 幼稚園からの付き合いになるから男と一緒にいる所なんて正直想像も出来なかった。

 気になって見に行ったら僕と同じくらい仲睦まじく話していたのだ。


 はじめは本当に男なのかと疑った、僕より少し背が低いしなにより単純に可愛いと思った。


 そして初会話。

 僕を初対面から女の子扱いする男は初めてだ。

 そんな風に扱われたら調子が狂う。

 なんであいつと話す時は動悸が早くなるのだろうか。

 なんであいつの顔を見るだけで嬉しくなって話しかけてしまうのか。


 体育祭。

 借り物競争では大勢の前で、す、好きなんで言っちゃうし。

 昼休みではみんなもあいつの事好きみたいだし。

 あっ、みんなもじゃない、みんなはだ。

 二人三脚で僕は初めてお姫様抱っこというやつを体験した。

 どこか照れくさくて胸が暑くなった。

 あいつと競うはずがなぜな歩美と張り合ってしまうし…。


 僕はどうしてしまったんだ。




 元々どちらが歩美の世話係かを決めるライバル…。

 そうだよただのライバル。

 そのはずなんだ。


 なのに……なんでこんなに胸が痛いんだ。


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省エネ系ヒロインの育て方 成咲せん @kann

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