体育祭 二人三脚 後編

 二人三脚も進み遂に僕達が走る番となっていた。

 コースはトラックの半周とまあまあ長めで、二人三脚でカーブを走るのはかなりむずかしそうだ。


「勝つわよ 」

「もちろんだよ 」


 歩美もやる気満々のようだ。


 桜の方を見るとやってやるぞー、という感じで見てくる。


「では皆さん位置について、よーい。どんっ 」


 一斉に走り始める。


 僕と歩美のスタートはかなり上手く決まり、1位でスタートができた。

 周りをちらっと見ると、息がまだあってないところが多い。


 体育祭の二人三脚で僕達ほどガチで練習した所はないんじゃないだろうか。

 掛け声を出さなくても合わせられるようにまでなった。


 桜達は2位ですぐななめ後ろにいる。

 早く行こうとしている桜にもう1人の女の子が頑張ってついて走ってる感じで危うい気がする。


「歩美疲れてない 」

「余裕よ 」


 そう言った歩美はなんだか楽しそうだ。


「カーブも頑張ろう 」

「ええ 」


 カーブに突入すると桜達がすごい勢いで追い上げてきた。


 やばい抜かれる。


 桜達が横から抜こうとした瞬間、急に2人が視界から消える。


「あれ 」


 何が起きたのかと思い後ろを見ると、女の子を庇いながらグラウンドに倒れていく桜の姿があった。


「歩美ストップ 」


 僕の焦りように歩美もなにか察したらしくすぐに止まった。


 僕達は急いで桜達のほうへと向かう。


「桜君大丈夫ですか 」


 女の子は心配そうに言う。

 桜の体操服は砂まみれで、足と腕は痛々しく赤く染まりかけていた。


「君が無事で良かったよ 」


 少し体を起こした桜が女の子に言う。


「でも、桜君が 」

「可愛い女の子に傷ができるよりましさ 」


 なんで…、こんな時まで…。


「ばか。桜だって可愛い女の子だろうが。頼むから無理はしないでくれよ… 」


 口に出してからはっとする。


 僕は大声でなんて事を。


「そうよ、桜。あなたはもっと自分を大切にするべき 」


 それを聞いた桜は顔を赤くして震えだした。


「ご、ごめん。言いすぎたかな、この子を怪我させないように庇ったのはほんとに凄いことだよ。でもね、桜の事も心配する人がなんにもいるって事をわかって欲しいんだ 」

「あ、ありがとう 」


 涙を流しながら桜は礼を言った。


「さあ、おんぶしてあげるから保険係のところに行こ 」


 歩美もそれは了承してくれるようで足をくくっていたひもを外した。


「ほら、おいで 」

「お…め…がいい 」

「なんだって 」

「お姫様抱っこがいい 」


 桜は上目遣いで僕に頼んできた。

 甘えてくる桜は珍しく、僕はドキドキさせられる。


「でも 」

「だめ 」


 ああ、これは断れないかな。


「仕方ない 」


 桜を抱きかえる。


「桜、あなたそれはずるいわ 」

「えっ、あっ、歩美違うんだ。その… 」


 歩美はじっと桜を見据える。


「あなたは違うと思っていたけれど、そういう気なら私も容赦はしない 」

「僕は、そんなんじゃ 」

「別に責めてる訳じゃない。桜は1度自分の事についてしっかり考える事ね 」

「それはどういう 」

「係、運んで上げて。私はこの子と体育委員に伝えにいくから 」

「分かった 」


 歩美達の会話の意味は良くわからなかったが、保険係の所に運んでいくまで桜はなにかを考えこんでいた。

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