体育祭実行委員

「手伝ってくれてありがとうね係君 」


 恵は耳元で囁いた。

 気にしないでいいよといった意味を込めて微笑み返す。


 僕達は今、体育祭実行委員会という会議に出席していた。

 本当は恵ともう1人他の人が担当だったのだが、体調不良という事で代打として僕が選ばれたのだ。

 体育祭も遂に明日となり、最後の準備のための会議らしい。

 あと、体調不良の子が明日までに治ることを祈らないとね。



 話を聞く限り、1年生全員と2年生の半分は必要な機材やテント、競技に使用する物の運搬を担当するらしい。

 3年生と残りの2年生は競技や連絡体制の最終チェックだ。


 はぁ


「どうかしたの? 」


 ついつい出てしまったため息に気がついたようで恵が心配そうにこちらを見ていた。


「なんでもないよ 」


 会議中なのであくまで小声で返す。

 まあ、なんでもなくないのだけど。


 今日ここに集まっているのは体育祭実行委員の人達で、2年生も勿論いるわけで…。

 ため息の元凶をちらりと見るとバッチリと目があい、こちらにウインクをしてくる。


 そう、日奈子先輩がいるのだ。

 別に日奈子先輩が嫌いとかでは無い、色気のあるからかいかたをしてくるので正直僕には対処しきれない。


 何度か部活に参加したが案の定可愛がられた。

 それも嫌じゃないけどガッツリ思春期の僕としては恥ずかしくてたまらない。


 今日は恵もいるし変な絡み方してこなければ良いのだけど。


「準備の担当振り分けは今の通りだ。それじゃあ、明日の体育祭に向けての最後の準備に取り掛かるぞ 」


 体育祭実行委員長の先輩がそう言って締めくくった。

 今年で最後の体育祭となる3年生は目の色が生き生きとしていてやはり気合いの入り方が違う。


 さて、重労働に勤しみますか。


 僕は体型は細くて華奢だけれど、力には少し自信がある。

 重いものとかは任せてほしい。


「けーいー君。なにドヤ顔してるのかしら 」


 背中になんとも言えない気持ちの良い柔らかさを感じる。


「なっ、日奈子先輩。ドヤ顔なんてしてませんし離れてください 」

「はーい 」


 今日は大人しく離れてくれるようだ。


「こんにちは、日奈子先輩 」

「あら、恵ちゃん。こんにちわ 」


 恵が何事も無かったかのように日奈子先輩に挨拶をした。


「恵、日奈子先輩と面識あったんだ 」

「うん、日奈子先輩もずっと委員長なんだよ 」


 まあ意外でもないか、中高一貫校だし面識があってもおかしくないそれに日奈子先輩が委員長しているのも違和感はない。


「それに、日奈子先輩は大人っぽくて綺麗だから男子にも女子にも人気あってかなり有名人だよ 」

「えっ、日奈子先輩が 」

「なによ私が有名なのは意外ってことかしら 」

「いえ、大人っぽいのも綺麗なのも事実ですし意外ではないですかね 」


 うん、意外じゃないか。


 あれっ、日奈子先輩は顔を真っ赤に染めている。


「あはは、今日も通常運転だね係君は 」


 恵は呆れ顔で言う。

 なんだか、馬鹿にされている感じがするのは気のせいなのだろうか。


「本当に困るわね 」

「わかります 」


 まだ少し赤い日奈子先輩が言うと恵が同調した。


「僕そんな困らせるようなことしましたか 」

「そんなことないから気にしなくていいよ 」

「そうそう、それが係君のいい所の1つよね 」


 なんだか、諦めた感じの声質に感じる。


「それより、準備に取り掛かりましょ。2人は私と一緒に準備してもらう事になってるからよろしくね 」


 どうやら2年生1人、1年生2人でペアを組んで準備を進めるらしい。

 周りはすでに準備のため会議室から退出していた。


「よろしくお願いします先輩 」

「まあ、お手柔らかにお願いします 」

「何をお手柔らかにか分からないけどよろしく係君 」


 そう言って日奈子先輩は妖艶な笑みを浮かべるのだった。

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