体育祭 借り物競争 中編

 借り物競争は2年男子が終わり次は1年女子のようだ。


「なんか一際声援が大きくないか 」


 確かに女子の声援が大きく聞こえる。


「ああ、桜がいるからかな 」

「桜ってあの王子様とか言われてる女子か 」


 1年女子の先頭には今日もかっこよく決め、笑顔で優雅に手を振る桜の姿があった。


「俺もあんなにキャーキャー言われてみてぇな 」


 陽太が感心している中、桜はお題の紙を拾ったようだ。


 キョロキョロとなにかを探しているようでこちらを向いた時に目がバッチリと合った。


「なんかこっちにきてないか 」

「気のせいだよきっと 」


 そう、気のせいであろう。

 ずっと目が合っていて真っ直ぐこちらに走ってきているとしても、だ。


 走ってきた桜は僕の目の前でとまる。


「瀬羽係。着いてきてもらおう 」

「僕? 」

「さぁ、早く行くぞ 」

「えぇ、僕さっきも行ったんだけど 」

「なっ、関係ない早く来い 」

「お姫様抱っこしてくれたらいいよ 」


 オロオロとしている桜をからかうつもりで言う。


「なーんて 」

「わかった 」

「えっ、ちょっ 」


 颯爽と僕を抱き抱えお姫様抱っこの状態になる。

 女子達のキャーという声が聞こえる中桜は走り出した。


「桜、桜 」

「なんだ 」

「冗談だったんだけど 」

「なっ、もう今更下ろせるか、バカ 」


 まさか本当にお姫様抱っこするなんて。

 さっきより恥ずかしい…。


「それにしても軽いな。ちゃんと食べているのか 」

「食べてるよ! 」


 なんか女子に軽々しく抱っこされている僕って…。


「なに半泣きになってるんだ 」

「もう、なんでもいいよ 」


 桜はマジマジと僕を見ている。


「なにさ 」

「案外かわいいんだな 」

「なっ 」

「ふっ、顔が赤いぞ 」

「そんなことないし 」

「いつもの仕返しだ、ばーか 」


 そんなこんなでなんと1位でゴールできたようだ。

 お題、難しいのばかりなのかな。


「さて、1番最初にゴールしたのは1年5組、王子様こと、速水桜さんでーす 」


 さっきぶりですマイクの体育祭委員さん。


「あれっ、さっきの 」

「気にしないでください 」


 お姫様抱っこの状態でマイクを向けられのは恥ずかしすぎる。


「下ろしてよ 」

「ああ 」


 桜はそっと下ろしてくれる。


「さて、仲の良さそうなお二人ですがお題は何だったのでしょう 」

「仲なんて良くないお題の通りライバルだ 」


 ライバルって、そのお題で僕を連れてきたのか。


「それにしても仲良さそうに見えましたけどね。カップルみたいでしたよ 」

「なっ、僕とこいつがカップルなんてそんなわけない 」


 桜が狼狽えている。

 さっきの仕返しでもしてやろうか。


「そんな僕の事は遊びだったの 」


 声を高くして上目遣いで桜に言う。


「はっ、なにを言って 」

「可哀想に。こんなに可愛い子を弄ぶなんて 」


 どうやらこの委員さんは察してくれたようだ。


「僕のこと嫌いになっちゃったの? 」

「うぅ、別に嫌いとかじゃなくて、ライバルだし元々そんなんじゃ 」


 奥義、目を潤ませる。


「桜、僕の事…。嫌いになっちゃた? 」

「可愛い… 」


 あの委員さん振りですよ振り。


「うぅ、泣くなよぉ。その、少しはす、す、好きだから 」

「なんて?、聞こえないよ 」

「だ、だから 」

「だから? 」

「好きだって言ってるんだ 」


 マイクがキーンと鳴る。


 あっ、これマイク越しで全員に聞こえてたんだった。


 おぉー、と男子の声と女子の恨めしそうな目線を感じる。


「委員さん、次行かなきゃ 」

「はっ、そうでした。では1位は速水桜さんでしたー 」


 桜は顔を真っ赤にしてこちらを睨んでいるり


「その、やりすぎたごめん 」

「ふんっ、お前なんて…別に普通なんだからな。覚えてろよ 」


 普通なんだ。

 嫌われてなくてよかった。


 桜と話していると何故かSっぽくなっていく自分がいる。


「ちょっと自重しないと… 」



 再び自分の持ち場に帰った。


「ただいま 」

「おかえり 」


 陽太がジーッとこちらを見てくる。


「なんだよ 」

「係の交友関係が謎すぎてな 」

「そうか? 」

「年上の美人な先輩に、学年の王子様系女子。それに、初めは受けでその後は攻めときた 」

「受けとか攻めとか言うなよ 」


 やっと一息付ける。


「あの係君いいかな 」

「恵? 」

「お題できて欲しいんだけど 」

「次は鬼の委員長ときたか 」

「誰が鬼だって? 」


 恵はニッコリと笑い陽太を睨んだ。


「ははっ、冗談だよ。美人委員長だよ 」

「まあ、説教は後にしましょう 」


 陽太よ、残念ながら説教は確定のようだ。


「またか 」

「あら、私にもお姫様抱っこして欲しいのかな 」

「さぁ、いこうか恵 」



 そして3度目の1位を取れたようだ。


「あら、また君かモテモテだね 」

「はは、さっきぶりです 」


 マイク外でこんなやり取りをする。


「さて、1位は1年3組、杉原恵さんでーす。おめでとう 」

「ありがとうございます」

「お題はなんだったのでしょう 」

「同じクラスの生徒です 」

「それ、僕じゃなくても良かったんじゃ 」


 隣に陽太もいたし、それこそクラスのスペースの方が近かったはず。


「係君がよかったんだよ 」


 わざとマイクに通るようにウインクしながらいった。


 今日何度目かの黄色い声援をあびる。


「モテモテなんですね 」

「そんなしみじみ言わないでください 」


 次がゴールしたようで委員の人はすぐにマイク持って話を聞きに行った。

 あれも大変そうだ。


「それじゃ係君、頑張ってね 」


 なんか含みのある言い方に聞こえる。


「ああ、頑張るよ 」



 そして3度目の帰還をした。


「お疲れモテ男君 」

「そんなんじゃないって分かるだろ 」

「まあ、満更でもない気がするけど 」

「結構疲れたよ 」

「あと1回あると思うけどな 」


 あと1回?。

 まあ、僕の番はまだだしゆっくりするか。


「係はあの人の存在を忘れていたのだった… 」

「何独り言言ってるんだよ 」

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