体育祭 借り物競争 前編

「宣誓、私達生徒一同はスポーツマンシップに乗っ取り正々堂々と挑むことをここに誓います 」


 体育祭実行委員長である3年の先輩が声高々に宣誓すると、おぉーといった雄叫びのが運動場から空へ響いた。

 1年生から3年生ほとんどが声を合わせていて僕のような編入組は面食らっていた。



 開会式も着々と終わり全てのクラスは自分たちのスペースに戻ろうとしていた。


「最初の種目は借り物競争です。出場する生徒はその場に残っていてください 」


 あぁそうか僕は借り物競争にも出ないといけないんだっけ。

 最近二人三脚の練習ばかりしていて出場する事を忘れていた。


「さぁ、連れてって 」


 歩美は僕の体操服のを引っ張り手を広げる。


「こんな人の多いとこではしません 」


 学年の看板を持った体育祭委員のところに並べばいいようだ。


「さあ、行くよ 」

「ぷぅ 」


 歩美はいじけ顔でついてくる。


 この競技は3年生の女子からスタートして1年男子の出番は最後のようだ。

 歩美は恵に連れられて自分の持ち場に着いていた。


「おっ、係。こっちだこっち 」


 陽太がおーいと手を振っている。


「やぁ、委員長会サボった陽太君 」

「悪かったって、杉原さんにめっちゃ怒られて反省してる 」


 確かにあの時の恵は怖かった。

 これから怒らせないようにしないと。


 陽太の後ろに並ぶ。


「もしかして僕最後の走者なの? 」

「らしいな 」


 各クラス5人選ばれていて、クラス対抗らしい。

 もしかして背の高い順とかじゃないよね…。


 ちなみに、最終的に結果を出すのは学年ごとクラス対抗での順位、学年関係なく組ごとに色分けした時の順位だ。


 僕達は3組なので色は黄色3、2年生の皆さんの足を引っ張らないよう頑張らなきゃ。


「おっ、あれ告白してないか 」


 3年の先輩の男子の先輩がマイクを通して「お題は好きな人でした3年1組伊藤さん着いてきてくれますか 」と叫んでいた。

 体育祭実行委員がマイクを持って常に待機しているようだ。

 伊藤さんと思われる人は顔を赤くして出てきていた。


「お題で好きな人とかでるんだね 」

「まあ出てもあんなに公に言わなくても言いみたいだぜ。ゴールした時マイク通して聞かれるみたいだけど秘密ですっていってる人もいる 」

「なるほどね 」


 自分の時に出て欲しくないね好きな人とかは。


「おっ、2年女子の最初は東堂先輩みたいだ 」

「あっ、ほんとだ日奈子先輩だ 」

「ちょっ、おい係。知り合いなのか 」


 目を見開いて尋ねてくる。

 顔が近い。


 そんなこと聞いてる間に日奈子先輩はスタートしちゃってるし。


「うん、部活が同じで 」

「いいなぁ今度紹介してくれよ 」

「まあいいけど、そんなに会いたいの? 」

「ったりめぇよ。あの東堂先輩だぞ 」


 陽太が品行方正、容姿端麗など日奈子先輩の事を暑く語り始めた。


 長くなりそう。


「もしもーし、係君 」

「あっ、日奈子先輩 」


 周りの男子生徒は、おぉ、と声を漏らして日奈子先輩を見ていて、陽太はと言うと口を開けたまま固まっていた。


「お題でついてきて欲しいんだけど 」

「えっ、僕この後走らなきゃあなんですけど 」

「係君じゃなきゃだめなの 」

「まあいいですよ 」

「やったじゃあ行こっか 」


 そう言って僕の腕に抱きついてくる。


「ちょっ、日奈子先輩?! 」

「ふふっ、さぁいくわよ 」


 そのまま僕を引っ張りながら走り出す。

 陽太を始めとした嫉妬の視線を背中から感じる。


 こりゃ戻ったらなんか言われそう。



 走っている途中、多くの視線を浴びた僕達はどうやら1位になれたみたいでゴールテープをきった。


「1位は7組、東堂日奈子さんでーす 」

「ありがとうね 」


 かなりの拍手が聞こえる。

 さすが人気者。


「東堂さんお題はなんですか 」

「気になる後輩です。あっ、こんな可愛い子ですけど男の子ですから 」


 途端に黄色い声援のようなものが聞こえてきた。


「男の子ですか?! 」

「男です 」


間違える要素がどこにあるというのだ。


「ふふっ、可愛いでしょ 」

「ええ、ほんとに可愛いですね 」

「あげないからね 」


 また一段と大きい黄色い声がグランドを響かせた。


 どうやら次の人がゴールしたようでおめでとうと言い残しマイクを持った体育祭委員はその人の所に行った。


「さぁ、戻っていいわよ。ありがとね 」


 そう言って日奈子先輩は颯爽と自分のクラスのスペースに帰っていった。


 ほんとにあの人は…。



「さぁ、係。詳しく聞かせてもらおうか 」


 陽太だけでなく周りの生徒の圧がを感じる。


「あれだよ、からかわれてるだけだよ 」

「それでも、うらやましいわ! 」


 周りの生徒もうんうんと頷ている。


「それより、もう1年女子だからみんな応援しないと 」


 渋々と言った表情で追求をやめてくれるようだ。


「後でゆっくり聞かせてもらうからな 」


 陽太以外は…。

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