体育祭編

ライバル?

 入学してから半月が過ぎ、僕もしっかりとクラスに馴染める事が出来た。


 全く不本意なキャラでの定着ではあるがとても楽しい生活を送れている。


「おはよう、恵 」

「おはよう、係君 」

「それであの、僕の席に座っているのは誰かな? 」


 そう言って自分の席に座り歩美と話し込んでいる生徒を見る。


 ズボンはいてるから男子生徒なのか?。


 歩美が僕以外の男子と喋っている事に少しびっくりしていた。


 なんだろうか、モヤモヤするような。


「ああ、速水桜さんだよ 」

「へー、有名なの? 」


 そう思ったのは教室の中の主に女子がその生徒に釘付けになっていたからだ。


「まあね、中学校の時は合唱部のローレライなんて言われてて、その容姿や性格から王子様とも呼ばれてるよ 」


 へぇ、現実にもやっぱいるんだモテ男さんが。


 そう話をしていると向こうが気づき、こちらにずかずかと詰め寄ってきた。


「やあ、君が瀬羽係かい 」

「ええ、そうですけど 。…確かに綺麗な人だ 」


 つい口に出てしまう。


 肩まで位しかない短めの綺麗なブロンドの髪を靡かせる。

 中性的で切れ長の目にスラッと通った鼻、整い過ぎている顔立ちはカッコイイとか可愛いとか簡単に表現ができないくらい綺麗だった。


 そして僕よりも身長がある。

 別に悔しくなんてない。


 でもこの人…。


「な、君は初対面の人になんてことを 」


 顔が少し赤くなる。


「いや、ごめんつい。でもなんで王子様なんだどちらかと言えばお姫様だろうに 」

「それは僕が男っぽいからだろう 」

「性格でそう言われてるのか。でもやっぱ綺麗な女性に王子様っていうのはどうにもしっくりこないかな 」

「じ、女性? 」

「えっ、なに 」


 何故そんなに驚いているのだろうか。


「僕がかい 」

「ああ、他に誰がいるんだよ 」

「初対面でちゃんと女性扱いしてくれたのは君が初めてだよ 」


 そう言って目を丸くしている。


 確かに中性的ではあるけど、どう見ても女子にしか見えないと僕は思うな。


「係君よく気づいたね 」

「さすがに気づくよ。いくらズボンはいてるからって、さすがに間違えないよ 」

「ほとんどの人は僕の事王子様扱いなのに 」

「でも、やっぱお姫様の方が似合うかな 」


 きっとドレスとか着たらすごく綺麗になるんだろうな。


 よく見ると速水さんの顔が耳まで赤くなっていた。


「ふんっ、別に嬉しくなんかないし 」


 そっぽを向きボソッと呟いた。


「なんだって? 」


 僕がそう言った直後お腹に頭突きをくらわされる。


「うっ、痛っ 」


 頭突きの主は案の定歩美だった。


「すけこまし 」

「なにがだよ 」

「知らない 」


 すると、なにやら恵がこちらをジト目で見てくる。


  「むむ、係君は意外とジゴロさんなのですか 」

「ジゴロって、現実で初めて聞いたよ。そういや速水さんはなにか用があったんじゃないの? 」

「そうだ。おい、瀬羽 」


 まだ少し赤い顔をこちらに向け僕を指さす。


「いきなり呼び捨て 」

「歩美のお世話係なんて呼ばれていい気になってんじゃないだろうな 」

「えっ、僕そんな風に呼ばれてるの?! 」


 恵を見ると目を逸らされた。

 歩美を見るとなぜか照れくさそうにしている。


 そう言えばなんだか入学式の日にそんな事言われた気が。


「なんだ知らなかったのか 」

「いや、まあ 」

「ふんっ、まあそんな事どうでもいい 」


 話振ってきたのそっちじゃないか。


「瀬羽、君はもう歩美の面倒みなくてもいいぞ 」

「いや、別に面倒みてるつもりはなかったんだけど 」

「そうか、なら好都合だ。元々僕の役割だったんだ、僕がこれから彼女を支えるから 」


 ドヤ顔で宣言してきた。


 少し初めに感じたモヤモヤと悲しさを感じた。


 わかった、自分だけに懐いてると思っていた猫が実は他の人の飼い猫だったみたいな感じだ。


 まあ、1日中おんぶもしんどい日があったし、それに責任感がある人ひしっかり面倒見て貰えるのならそれが一番だよね。


「そっか、じゃあ頑張って下さい 」

「あっ、いえいえご丁寧にどうも、って他になにかないのか 」


 他になにかあるだろうか、いやない。

 歩美はこちらを睨んできている。


「普通、嫌だとか、お前にはやらん、みたいな事があるだろ 」

「じゃあお前にはやらん。こんな感じかな? 」


 急に歩美がもじもじしはじめた、情緒不安定なのだろうかこの子は。


「いや駄目だ、歩美は僕が貰う 」


 じゃあ言わせなくても


  「じゃあどうぞ 」

  「なんだ、張合いのない 」


 結局、速水さんはなにがしたいのだろうか。


  「もういい、歩美に決めてもらえば一目瞭然となる 」


 何を決めるのだろうか。


「さあ歩美こっちにおいで 」


 歩美がおもむろに椅子を持ってきたかと思えば、僕の後ろに置いた。


「なに、座れってこと? 」


 返事はなく、そのまま椅子に登り背中にダイブしてくる。


「お、おっと。急になんだよ 」

「別になんでもないわ 」


 もう慣れたものだ。


「なっ、あ、歩美 」


 速水さんは驚いた顔でこちらを見て言った。


「なに 」

「なんでそんな奴がいいんだよ 」

「別に 」

「むむむむむ 」


 そう言いながら下を向いてしまった。


「あのー、速水さん大丈夫?」

「瀬羽係 」


 こちらを真っ直ぐ指さして言った。


「はい 」

「今回はこの位にしてやる、1回勝ったからと調子に乗るなよ 」


 僕達は何か勝負をしていたのかな?。


「ふんっ、おぼえてろよ 」


 そう吐き捨て教室から出ていった。

 なんか面白い人だったな。


「なあ、恵 」

「どうしたのかな 」

「あの人の性格のどこが王子様なの? 」


 初めは王子様っぽいかもしれなかったけれど話してみた結果、あまり王子様という印象は受けなかった。


「いやー、いつもはあんな調子じゃないんだけどね 」


 なんだか最後はドジな負けキャラみたいになってた。


「まあ、それは置いとくとして。歩美さんいつまでそう居るつもりですか 」


 背中に乗っている歩美に尋ねる。


「ふんっ、知らないわ 」


 結局なんだかんだ世話を焼いてしまうんだろうな僕は。


 まあ、そんな日常も悪くないかな。

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