入部

「あの、結局どういう部活なんですか 」

   

 当初の目的であったケーキを僕達は食べていた。

 部として認められていない割りに冷蔵庫などあるのはやはり、お二人はかなりのお金持ちの家柄なのだろうか。


「えっとそれはね、ってそんな距離取らないでよ 」


 警戒のため距離をとっていたが、話を聞くのならちゃんと聞くべきか。

 しぶしぶ日奈子先輩の正面の席につく。


「えっと、気を取り直して、この部活はね、名前の通りなの 」


 夢を叶えよう、か。


 僕達が頭にハテナを浮かべていると、


「んーそうだな、係君たちは漫画とかアニメは見る方? 」

「僕はまあ見る方ですかね 」

「まあ、それなりかしら 」

「それはよかった。簡単に言えば漫画とかアニメ、小説なんかでもいいのだけど、その中で普段なら絶対にできない自分がしてみたいシーンを実現するって感じね 」

「まあとりあえずしたい事をするって言うのがこの部の信条だ 」


 なるほど、夢を叶えようとはそういう意味なのか。

 亮先輩はともかく日奈子先輩がそういうのに興味があるのは以外だな。


「以外だなって思ったでしょ 」


 先程からちょくちょく読心術を使っているのではないだろうかと思う。


「係君が顔に出やすいだけよ 」


 そうなのだろうか。

 顔に出やすいのか僕は…。


「まあまあ 」


 もうちょっと、鉄仮面の歩美を見習うべきだな。


「また失礼なことを考えてたわね 」


 歩美がジト目で睨みつけてくる。


「そんな事ないさ、それより、日奈子先輩が夢を叶えるって事に興味があって、活動しているのは以外ですね 」

「そうかしら、私は結構ロマンチストな方だからかな、それにせっかくの高校生なんだし楽しんだもん勝ちだと思わない 」


 そう言って笑った日奈子先輩の顔はとても魅力的に見えたのはきっと、その考え方に憧れているからなのだろう。


 先輩がロマンチストなら僕はリアリストだ。

 ここ1年それがより顕著に現れている気がする。


 高校に対して希望や期待があったのは事実だが、それでも現実見続けることが僕に必要な事だと思っている。


 青春と言う夢を見る事は僕にはまだ出来ない。


「大丈夫? 」


 よく見ると日奈子先輩の心配そうな顔が目の前に広がっていた。


 日奈子先輩を僕から遠ざけようと歩美が引張っているが、日奈子先輩はビクともしていない。


 歩美さんや、非力すぎるぞ。


「すみません、ちょっと考え込んじゃって 」

「ほんと?、無理しちゃダメよ 」

「はい、ありがとうございます。それと離れてください 」

「あら残念 」


 今回は素直に引き下がってくれた。

 歩美は少しムスッとした顔で僕の隣にピタッと座った。


「えっと、具体的きどんな活動をしたんですか? 」

「聞いて驚くが良い 」

「例えばそうね漫画肉とか作った事があるわ 」


 亮先輩の発言権はないようだ。


「マジですか! 」


 歩美はとなりでびくっとする。


「ええ、興味を持ってくれたかしら 」


 日奈子先輩はニマニマした顔で歩美に尋ねた。


「べ、別に 」


 目が泳いでいるよ歩美…。


「入ってくれたら、もっと楽しいことできるのになぁ 」


 歩美はソワソワし始めている。

 釣られやすすぎではないか。


 まあ、正直な所、悪くはないと思っている。

 バイトがあるし頻繁には来れないがそれでもたまに夢を見るのもいいかもしれない、なんて思っていた。


「うーん、まあ興味は持ったんですけど 」


 色々な利点を考えた上で…、人選がなぁ。


「あの、さっきみたいな事はしないから、そんな警戒しないで 」


 なにかを、察したみたいで日奈子先輩は慌てて言ってくる。


「ほんとですか 」


 じーっと見つめる。


「あっ今目を逸らしましたね 」

「うう、仕方ないじゃない、その結構ほんとにタイプなの 」


 いきなりそんなこと言うのはずるくないですか。


 自然と顔が赤くなる。


「なに赤くなってるのよ 」


 歩美は、本日何度目かのジト目になっていた。


「えっ、別になってないだろ 」

「なってるし 」

「いてっ、蹴るなって 」

「ふんっ 」


 歩美は、何故か拗ねてしまったようで完全にそっぽを向いてしまった。


「歩美ちゃん 」

「なによ 」

「ほらケーキのお代わり 」


 ぱぁっと音が出るかのように表情が明るくなる。


「おいおい 」

「だからね2人とも是非入ってくれないかな 」

「まあ僕はいいけど。歩美は 」

「貴方が入るなら入るわ、…目を離すと何されるかわからないし 」


 最後ボソッとなにかを呟き、日奈子先輩を睨んでいた。


「じゃあ決まりね 」

「あのさっきから部長のはずの俺が空気なんだけど 」

「一応、先輩としてよろしくお願いしますね 」

「一応じゃなくても、先輩なのだが

「ははっ、日奈子先輩もよろしくお願いします 」

「何その愛想笑い、部長泣いちゃうよ 」

「よろしくね、係君 」


 

 日奈子先輩がそう言うと、何故か歩美が腕にがっちりとしがみついてくる。


「よろしく、先輩 」

「よろしくね、歩美ちゃん 」

「あのだから無視しないでくれないかなー 」


部室には、部長の悲痛な叫びとバチバチと音を鳴らす睨み合いの火花が…。


この部活に果たしてロマンなどあるのかと心配になるのだった。

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