部活動勧誘

「ねぇ、係君 」


 放課後帰る準備をしていると恵が話しかけてきた。


「どうしたの、恵 」

「この学校はなにかしら部活に入らないといけないの、知ってた? 」


 確かに、先生がそんな事を言っていたような気がする。


「多分この時期は部活の見学とかできるから放課後見て回った方がいいと思うよ 」

「そっか、僕バイトしてるからあまり参加出来ないかもしれないんだけど 」

「大丈夫だと思うよ。この学校は部活動の種類がたくさんあるって有名だから融通のきく部活もあると思うの 」

「じゃあ見て回ろうかな 」

「私もついて行きたいんだけど、今日用事があって 」


 正直、恵が居てくれないのは不安だが、まあ仕方ないか。


「そっか、じゃあ気持ちだけ受け取っておくよ、それになにか良さそうな部活があったらまた報告するね 」

「ありがとう。じゃあまた明日ね 」

「うん、また明日 」


 さて、どう見て回ろうかな。


「私も行くわ 」

「おんぶはしないからね。朝したし 」

「むむむ。仕方ないわね、今回はそれで妥協してあげる 」


 顎に手を当てかなり悩んでいるようだった。


「ほんとに 」

「なによそのびっくりした顔は 」

「いや珍しいこともあるもんだなって 」


 まあ、まだ会って数日しかたってないんだけど。

 顔の表情はあまり変わらないがおんぶはすでにデフォルトとなっていた。


「失礼な人ね 」

「ごめんごめん。じゃあ行こっか 」

「ええ 」


 外に出ると、屋台のように部活動勧誘が行われていた。


「それにしても恵が言ってたとおりいっぱいあるな 」

「ええ、そうね 」


 王道なものから珍しいものまでたくさんある。


 サッカー、野球、バスケに水球、茶道、書道部、カレー部なんてのもあるのか。


「運動部は無理かな 」

「バイトしてるからかしら 」

「うん。聞いてたんだ 」

「ええ 」

「盗み聞きなんて悪いんだー 」


 少し茶化すように言ってみる。


「ふんっ、聞かれる方が悪いのよ。昔からいうじゃない、壁に耳あり障子に目ありってね 」

「なんという極論。てか、それは盗み聞きの理由にはならんでしょ 」

「ぷぅ 」


 歩美は頬を膨らます。

 つい膨らんだ頬を指でつついてしまった。


「あにすうのよ 」

「ははっ、リスみたいで可愛いなって 」

「なっ、可愛いなんてそんな 」

「おお、次はタコになった 」

「ぷぅ 」

「あっ、いてっ、ポカポカするな 」


 そんなやり取りをしながら部活棟と呼ばれる文化部の活動する部室がある所にきていた。

 どうやら皆外で勧誘しているようで中で勧誘している人は少ないらしい。


「そこの可愛いカップルさんや 」


 なにやら胡散臭そうな声がする。

 発せられた方を見るといつの間にか、夢叶えよう研究会と手書きで書かれた紙が貼られた部屋の前に来ていた。


 ちょび髭にサングラス、シルクハットを被った声の主が続ける。


「夢の世界へ行きたくはないかい 」


 歩美と無言で顔を合わせる。


「あー、ダーリン今日はお泊まりする日じゃないかしらー 」

「おー、そうだったハニー今日は寝かさないぜー 」

「ああ待って待って、そんな棒読みの小芝居してまで逃げないで 」


 謎の男は、ちょび髭とサングラスを取り、慌てて止めにくる。


「えっとなんのようですか 」


 諦めるように溜息を吐き言った。


「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれた 」

「行くわよダーリン 」

「そうだなハニー 」

「ああごめんごめん。普通にするから 」


 僕達はジト目で睨みつける。


「最後ですよ 」

「ありがとう。僕はそこにある夢叶えよう研究会の会長なんだけど 」


 さっきも思ったけどちょっとダサいな。

 

「ダサいわね 」


 さっすが歩美さん声にだすとかマジぱねぇ。

 どうやら謎の男には会心の一撃が入ったらしく絶望しているような顔をしている。


「なっ、そんな事ないだろ、代々伝わるうちの研究会の名前だぞ 」


 胸を張り堂々と言い放った。

 が、そこが怪しい。


「ほぉ、ちなみに何年目ですか 」

「そ、それは、にねんめ 」


 語尾がごにょごにょと消え入るように言った。


「なんて? 」

「あぁ、もう、2年目だよ 」


 2年目という事はこの人が部の名前を決めたのではないのだろうか。


「あなた、2年生ね 」

「な、なぜそれを。貴様さてはスタンド使いだな 」


 謎のポーズで歩美に言った。


「そうよ、よく見破ったわね 」


 答えるかのようにこちらも謎のポーズをしている。


「こら便乗するな、この人が調子に乗るだろ。それより、ネクタイの色でわかりますよ 」


 うちの学校では1年が赤、2年が青、3年が緑とネクタイでわかるようになっている。


「チョップしないでもらえるかしら 」

「はいはい。まあ話を戻すけど、先輩がこの名前考えたんですね 」

「い、いいじゃないか、1番おしゃれだと思ったんだ 」


 開き直ったし。


「まあ僕はいいと思いますよ 」

「そ、そうか。わかってくれるか 」

「ええ、な、歩美 」


 目で合図を送る。


「ん?。まあそうね 」

「そうかそうか 」


 胡散臭そうな先輩はうんうんと上機嫌に頷いている。


「それでは失礼します 」

「ああ、ありがとうな。ってちょっと待て 」


 チッ


「おい、今先輩に向かって舌打ちしたのどっちだ 」

「えっ、なんのことですか。僕達には何も聞こえてませんよ 。ねぇ 」

「ええ 」

「な、なに。まさか、俺にだけ聞こえるというのか 」


  ((この人扱いやすい ))


「それで何のようなんですか 」

「そうだったそうだった。さて本題に入るとするか 」


  ((そしてめんどくさい))


「わが夢叶えよう研究会、略して夢会は僕を含めまだ3人しかいない。この学校では5人以上いない部、研究会は部費がおりず正式なものとしてみとめられないのだよ 」

「なるほどだから勧誘というわけですね 」


 ただ勧誘したいのなら部活棟はあまり人が来てないから効率がわるいんじゃ。


「看板とかもって、人通りの多い所で勧誘したらいいのに 」


 そう言うと先輩は肩をびくっとさせる。


「気づいてなかったんですか 」

「ま、まさか、この私が気づかぬなどあり 」

「気づかなかったんですね 」


 僕と歩美はジト目で見据える。


「まあよいでわないか 」

「まあ確かにどっちでもいいですけど 」

「どっちでもいいとか言うなよ 」


 そんな理不尽な。


「こほんっ。まあそういうことだ取り敢えず中にでも入らないか 」

「何が取り敢えずですか 」

「頼むよそこをなんとか。美味しいお茶をだそう 」

「物でつるとか、じゃあ先輩が喜ぶ言葉を返してあげしょうか 」

「おお、それはありがたい 」

「だが断る 」

「ナニッ!!ってそうじゃない 」

「嬉しくないんですか 」

「いやとても素晴らしい。じゃなくて、その言葉はまた別の機会にしてくれ 」


 その別の機会が永遠に来ないことを祈ろう。


「そうだ甘いケーキかあるぞ 」


 隣でピクッと肩が浮いた。


「歩美さんや 」

「なによ 」

「もので釣られるのはどうかと 」

「別にそんな事ないわ 」


 謎の先輩に送っていたジト目でそのまま歩美を見た。


「なんと今なら五つまで無料券までついてくるよ 」

「胡散臭い。歩美さんやほんとに大丈夫なんですよね 」

「ええ、もちろんよ 」


 と胸を張る。

 まあ流石にこんな胡散臭い奴に着いてはいかないか。


「でもほら、私は優しいし、それに優しいから仕方なく入ってあげなくもないわね 」

「なにその、欲にまみれたツンデレは 」

「よし、契約成立だな 」


 謎の先輩はキラキラした目で嬉しそうだ。


「10個よ 」

「え? 」

「10個でいいわよと言っているの 」


 何故だろう歩美の方が背は低いはずなのに上から見下ろしているように見える。


「いやそれは流石に 」


 慌てる謎の先輩。


「10個 」


 動じない歩美。


「せめて7個 」


 さらに慌てる謎の先輩


「10個 」


 動じない歩美。


「じゃあじゃあ、間をとって 」


 どんどん小さくなっていくように見える先輩。


「10個 」


 それに反して歩美が大きくなっていくように見える。


「はい 」


 少しは同情するよ謎の先輩。


「契約成立ね 」


 鬼や、可愛い小動物の仮面を被った鬼がおる。


「じゃあ行きましょうか 」

「あ、ああ 」


 歩美は満足気な顔で部室のほうへ歩き出した。


「ああ、僕の今月のお小遣いが 」


 泣きながらついてくる謎の先輩。

 自腹なのか。


「先輩、僕は5個でいいんで 」


 目が点になり口を開けたま動かない。


「返事がない、どうやらただの屍のようだ 」

「あなた鬼ね 」

「歩美に言われたくないよ 」


 初めの勢いなど見る影もなく消沈している謎の先輩を置いて、僕達は部室に入ることになった。

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