帰宅

 長いようで短い、とても濃い時間となった登校初日を終え、僕は家に帰っていた。


「ただいま 」


 こんなに疲れた日は久しぶりだ、本当に濃い1日だった。


 リビングに入るドアを開けるとすぐに脱ぎ散らかされた服があった。

 そして服の先には、缶ジュースを片手にソファで寝転がる姉の姿がある。


「凛姉、脱いだ服をちゃんと片付けてっていつも言ってるだろう。それと下着姿でうろつくな 」


 服を集めながら注意する。


「ああ、おかえり。そんなこと言いながら服片付けてくれるなんて優しいねぇ 」

「たく、褒めたってだめだ。ほら服着て 」

「はーい 」


 瀬羽凛、大学2年生の僕の姉。

 外ではなにをやらしても完璧にこなし、またその綺麗な容姿から多くの人に慕われてるが家に居る時はいつもこんな感じだ。


 まあ、いつも頑張っているし家ぐらいはゆっくりさせてあげたいけれど。


「なんだよ 」


 何故かこちらをニヤニヤしてみてくる。


「いやなに。甘やかされてるなって 」

「別に甘やかしてなんか 」

 

 凛姉が渡した服を着ず下着のまま抱きついてきた。

 肌が触れる所が熱くなり、どくどくと脈が早くなるのを感じる。


「やっぱ係君の匂いは落ち着くなぁ 」

「こらっ、抱きつくな。それによしよしするな 」


 姉と言えど流石に下着姿で抱きつかれるのはなかなかやばいのだが。


「凛姉さん。兄さんから離れなさい 」


 この声はきっと妹だろう。

 妹は怒ると怖いからなぁ。


「おぉ。怖い怖い。離れますよーだ 」

「大丈夫ですか兄さん 」


 買い物袋を片手に心配してくれるのは瀬羽優香、中学3年生の僕の妹。

 姉に引けを取らないくらい可愛い容姿で優しく家庭的な子だ。

 いつも僕と2人で家事をまわしている。


「大丈夫だよ優香。それより買い物ありがとう。後は持つよ 」

「あっ、いえありがとうございます 」


 優の顔を見ると少しだが赤くなっていた。


「顔が赤いな熱でもあるんじゃないか 」


 顔色を確認すべくしっかり覗き込む。


 風邪なんて引いたら大変だしな。


「べ、別になんでもないです。そうだ、ご飯作らなきゃ 」


 早く地になり慌てて顔をそっぽに向けた。

 兄に近付かれるのは嫌なのだろうか、そう思うとちょっとショックだが。


「そうか、無理するなよ 」


 今日は優香が料理担当の日だ。

 基本1週間交代で土日は一緒に作ったり暇なほうが作ったりしている。


 ほかの家事も、料理担当じゃない方がその日担当するようにしている。

 この当番制に凛姉は含まれない。


 元々家ではズボラだというのもあるが、大学に通いながらバイトをしているからという理由が大きい。


 僕もバイトはしているが、凛姉の方が忙しい。


 凛姉には金銭面で負担をかけている。

 だから僕達が家事をするようにしているのだ。

 金銭面うんぬんはまあ、やんごとなき事情がある訳で…。


「凛姉さんに係兄さん。ご飯できましたよ 」


 まあ、ご飯の時にそんな事考えるのは無粋かな。


「おぉー。さっすが優香ちゃん。今日も美味しそうね 」


 食卓にはホクホクと湯気がたつ美味しそうな肉じゃががメインに置かれていた。

 優香の料理は母さんの味そっくりで、優しくて落ち着く味になっている。


「ありがとう。兄さんも準備手伝わせちゃってごめんなさい 」

「いやいや、お箸とかお茶の準備しかしてないから 」

「それでも、ありがとうございます 」

「もう、いちゃいちゃしてないで早く食べようよ。お腹空いたー 」

「いちゃいちゃなんてしてません」

「まあまあ2人とももう食べよう 」

「そうだな 」

「はい 」

「じゃあ 」

「「「いただきます 」」」


 瀬羽家のルールその1、晩御飯はみんなで一緒に。


 今日も3人、笑顔で食卓を囲める幸せをホクホクの肉じゃがとともに噛み締めた。

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