学校案内

 今日の終わりを知らせるチャイムが鳴る。


 放課後の予定を楽しそうにたてるクラスメイトを他所に僕は机にに突っ伏し、昼までという短いはずの時間でこれまでにない疲労を感じていた。


 やっと終わった、知り合いがいないおかげで1日中気を張っていたせいかとてつもなく疲れた。


 突っ伏したまま横を見る。


 この子は結局ずっと寝てたな。

 全然疲れてなさそうで羨ましい限りだ。


「瀬羽君ちょっといいかな 」


  急に声をかけらればっと姿勢を正すと、声の方向には杉原さんがいた。


「杉原さん。どうしたんですか 」

「疲れてるのにごめんね。あと敬語じゃなくていいよ。これから1年よろしくね 」

「わかった。こちらこそよろしく 」


  改めて杉原さんを見る。

 女子の委員長と言えば真面目というイメージがあったのだが優しいオーラをしていて話しているとすごく落ち着く。


 艶のある黒髪に整った顔立ち、まさに清楚系美少女っ感じだな。


「あの。そんなにまじまじ見られると恥ずかしい… 」

「あっごめん、そんなつもりはなかったんだ。それより用事があったのかな? 」


 下心がなかったとしても危なかった。

 友達もいない状況で変態のレッテルを貼られたら孤独な高校生活になる。


「うん、そうだった。瀬羽君って高校からだよねこの学校にきたの。だから、今から学校案内どうかなって 」

「ほんと?。ありがとう、でも杉原さんも入学したばかりじゃない? 」

「そうなんだけど。中学生も自由に出入りしてよくて、私、生徒会だったからよく来てたの。だから任せて 」

「そうだったんだ。生徒会か、中学の頃は僕も生徒会してたよ 」

「そうなの。一緒だね 」


 そう言ってふわりと浮かぶ笑顔に少しドキッとした。


  今思えばこの高校に来てから可愛い子とばかり話している気がする。

 まあ1人はほぼ寝顔しか見てないのだけど。


「じゃあ杉原さんお願いします 」

「恵。恵でいいよ 」

「わかったじゃあよろしく恵。僕も係でいいよ 」


  委員長や生徒会をしていたら女子と関わることも多かったため下の名前で呼ぶのに抵抗はなかった。


「うん、よろしくね係君。なんて言うか係君って可愛いね 」

「うっ、そんな事ないよ 」

「ごめん気にしてた?、でも可愛いよ 」

「気にしてないよーだ 」


 そう言ってそっぽを向き怒った振りをする。

 そうあくまでふりだ。


 別に気にしてなんかいない、ちょっと背が低くて、女顔で、華奢なだけだ。

 そうまったく気にしてなんかいない。


 力だってあるし、身長なんて別にいらない。

 そう気にしてない。


「ごめん、ごめん拗ねないで。ねっ 」


 そっぽ向いた僕の顔をのぞき込むように上目遣いをしてくる。


 だから上目遣いはずるい。


 恵の可愛さには勝てないよ。

 とかサラッと言えたらモテるのだろうか、なんてしょうもない事を、顔を赤くして考える。


「冗談だよ。学校案内よろしく 」

「うんっ。がんばるね 」


 学校案内してもらうため席を立つと後ろから声が聞こえた。


「学校案内。私もいくわ 」


 声の主はなんと水森さんだった。


「水森さんもくるの? 」

「歩美 」

「えっと。水森さん 」

「歩美 」


 そう言いながら無表情のまま少しずつ迫ってくる、背は低いのに凄い迫力だ。


 これは下の名前で呼べという事なのだろうか。


「あ、歩美もくるの? 」

「もちろん。なに、嫌なの 」


  頬が少し膨らむ。


「嫌じゃないけど。ちゃんと自分で歩いてくれるよね 」

「ふっ、私を舐めてもらっては困るわ 」

「だよね。じゃあ行こっか。恵もいいよね 」

「うん。歩美ちゃんなら大歓迎だよ 」

「じゃあ2人ともよろしく 」


 今度こそ出発しようとすると服を少し引っ張られる。


「ん?。歩美どうし… 」


 歩美は両手を広げている。


「ふぅ。まあ一応聞こう。なにをしてる 」

「おんぶ 」

「さっき私を舐めてもらっては困るって言ってなかったっけ 」

「ええ。私がちゃんと歩くとでも思ったの 」

「そういう意味なの?! 」

「やれやれまだまだね 」


 なにがまだまだなのだろうか。


「まあいいわ。おんぶで許してあげる 」


 なにが許されるのだろうか。


「はぁ、今日だけだなからな 」


 こんなやり取りで杉原さんを待たせるのも悪いし。


「ありがとう 」


 こういうとこは素直で可愛いんだけど。


「2人とも仲良いのね 」


  どこをどう見たらそうなるんだよ。


「ええ、仲良しよ 」


おいおい。


「そんなことより早く行くわよ。王子様 」


 まだそのネタ引っ張るんだ。


「王子様? 」


「ああ、気にしないで。それより行こうか 」


 教室にはすでに僕達しか残っておらず窓からはからは運動部の声と吹奏楽の演奏が聞こえてきた。

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