サムライズ・リグ -近未来剣劇斬夢譚-

作者 三ツ葉亮佑

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★★★ Excellent!!!

「天鎧」という強化外骨格、優しさと獰猛さを併せ持つ主人公、漢気ある強敵。いくつもの惚れ込む要素が、ときに静かに、ときに力強い描写で紡がれ、ふと気付くと読んでいるこちらも息をひそめたり鼻息を荒くしていました。

特に戦闘シーンの描写が格別で、筆者の巧みな文章に心躍ります。
緻密かつ重厚な命のやり取り――その刹那の連続に圧倒される時間が心地よかったです。

★★★ Excellent!!!

近未来、戦争から更に三十年後の世界。
誰もが刀を帯びる事が出来るようになった世界には、「天鎧」と呼ばれるパワードスーツが存在していた。その力と剣術を以て、刀は、銃よりも強くなっていた。

復讐と抱えた借金の返済のために闘う、一歩間違えればすぐにでも鬼になるであろう主人公。そして、彼を取り巻く人々と環境。

圧倒的、その上で鬼気迫る戦闘描写や心理描写。
ヤベーヤツら(特に女性陣)に、ちょっとしたエロス。さらに社会の暗い影。

筆者曰く続きのプロットはあるようなので、是非とも続きを読みたいと思いました。

★★★ Excellent!!!

ひとは、『生きたい』と願うと同時に、『死にたい』とも願っているそうです。
だから、ひとは生まれたときからすでに、矛盾を抱えているのかもしれません。

『武』というものに精通している訳ではないので個人的な見解になりますが、そもそも『武術』とは、戦いにおいて相手より勝るために存在しているのだと思います。
相手に殺されないために、先に殺す。それが極致なのではないでしょうか。

ところが、『武術』を体得していくうちに、もっと自分を磨きたいというようになってくる。それがおそらくは『武道』と呼ばれ、そうなると最早、相手は関係なく、己自身との戦いになっていくのではないでしょうか。

ひとを殺めるために生まれた術が、いつの間にか、己を育む道標となっている。

そんなことを、この物語から考えさせてもらった気がします。

★★★ Excellent!!!

誰もが帯刀できるようになった未来の日本。
剣術もパワードスーツを着込み、銃よりも刀が優位となったその時代において、二天一流の到達点とも言われた流派あり。

SF的な世界観ながら剣に生きるという古風な要素も併せ持ち、復讐のために闘うというダークヒーロー的な主人公。そこにやや淫靡な要素も加えていながらただ受けるからと入れた感じは一切無く、しっかり一つの話としてまとまっている。

狂気と狂喜、剣気と剣鬼。
淫靡なヒロイン、隠微な裏社会。
日常と非日常の交差する生活の中で闘いの果てに主人公、蒼司郎は、剣士として、鬼として――どこへたどり着こうというのか。

その結末まで見届けたいこの作品。
ぜひとも皆に一度、その御眼を拝借仕りたく思います。

★★★ Excellent!!!

現代で日本刀を振り回す話は僕も何度か考えたことがある。けれどなかなか世界観を表現できず、結局無理が出てやめてしまった。

本作はこうした難しい世界観に対して妥協なくチャレンジした良作である。主人公が立ち向かう困難や障壁に立ち向かう基本的なストーリーに、再生の物語、スピード感のある描写、パワードスーツのような超科学なども駆使していて、まずはアクション作品として楽しめる。

が、個人的にはやはりそれを支える世界観がすごいなと思う。映像を想像したときに、多少複雑ではあるものの、違和感なくアクションのカッコよさや背景に積まれた悲哀をダイナミックに感じることができる。

剣術の流派という概念が趣味以上の権威を取り戻し実戦の中核に位置付けられる舞台というのは、やはり独特な美的感覚がないと書くのが難しい。しかしこの作品はとにかくそのバランス感覚が良く、そうした世界観に組み込まれたドラマも雰囲気に合っていて、こういうタイプの作品が好きな僕としてとても嬉しいかぎりである。

時代劇が好きな人やアクションが好きな人には、この作品へも足を伸ばしてくれるといいなぁ、と思う。

★★★ Excellent!!!


 近未来、『天鎧』というパワードスーツが実用化され、銃器ではなく刀剣が主武器となった時代。母を殺した父を仇とする灯塚蒼司郎は莫大な借金を返済するため、『灯塚二天流』の当主にもかかわらず、闇の仕事人として人知れず剣を揮っていた。

 本作のすぐれたところは、端的に述べて、きっちりした設定とキャラクターである。

 『天鎧』というパワードスーツに演算装置が組み込まれ、脳髄のクロックアップをともなって、敵の攻撃予測ラインをAR表示する設定などは、メカ好きであれば興奮しないはずがない。
 また、その『天鎧』が実用化された架空の歴史的経緯を、丁寧に設定し、さらにそれを読者に飽きさせず解説してくれるため、突飛な物語世界へも抵抗なく没入できる。

 また主人公の蒼司郎を筆頭に、暗い過去、というよりは深い闇を抱えた登場人物が多く、それぞれに重い物語が与えられていて、ドラマも分厚い。

 各キャラクターの過去が、暗いし、重い。
 だが、この暗さや重さを呑み込んで、読破し、そしてのち、本作の見事なラストシーンに辿り着くのだ。
 うん。あのラストはいい。なんと、まさか……。燃えました。


 いっぽう殺陣は、ぼくとしては、ちょっとワケワカラン部分がある。
 右手がこっちに動いて、左足があっちに動いてとツイスターゲームみたいで、丁寧に解説してあるから、きっと実際にその通りにやってみれば理屈に合う綺麗な形がでるのだろうが、どうにも読み解けなかった。
 とはいえ、総じて剣戟シーンは、実際に剣術居合をやっている御仁からは、「んなバカな」という声は上がるかも知れないが、剣術に詳しいとは決して思えない作者様の、自由な発想から生まれる「トンデモ・チャンバラ」はなかなかに楽しい。


 ぼく個人の、作中の名戦闘シーンは、やはり「剣術vs銃剣術」。敵キャラも良かったし、なにより剣術と銃剣術が戦うシチュエーショ… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

斬らば鬼、修むるは仏。背反の絶技『灯塚二天流』。
この一文が、すべてである。いわばこの物語は、二律背反するすべてのものを丸の儘に表現した作品といえるだろう。

正気と狂気。活人剣と殺人剣。護るものと奪うもの。集団と個。光と闇。巌と流水。陰と陽。数々の反駁するそれらは、正に人と魔を分かつ分水嶺。

そもそも、パワードスーツ及びウェアラブル端末ともいえる天鎧と、元来生身で扱うものであるべき剣そのもの。このふたつを有りの儘に丸くひとつにし得るそのアイディアがまず、二律背反するものなのである。
それは、二つの剣にて一つの太刀を放つかの如く、矛盾しつつも心高鳴るアプローチだ。

それを芸術的なまでに高みへと昇華させながらも、読みやすさやキャッチーさも決して忘れていないのが本作の更なる魅力。あくまで、キャラクタそのものに焦点を当て続けている作品でもあるのだ。

その中でやはり輝いて来るのが、昼行燈と夜の鵺。昼は肚の底に憎悪を宿し、夜は張り子の虎を纏う。ここでも来るか、二律背反と思わず膝を打つ演出だ。

そして最後、すべてを凪の如く包み込み、静寂の河岸へと身を捧げる昼の落とし子の姿に、胸がすくような心地を抱く。それは、やはり最後は「ひと」。ひとそのものを筆者が描き切っているから至る境地なのだ。

二律背反を丸くひとつに。その絶景を見届けたくば――、すぐに頁を捲るが良い。圧倒的な背反の絶技が、読者を待っている。

★★ Very Good!!

剣の道、男女の情、親子の情、立会いの情、剣の道を歩む先達との情。
それらを丹念に描きつつ。
SFとしても剣豪が現代戦において主戦力として通用する存在になったら何が起こるのかについても描写しているという魅力があり。
「剣豪が現代戦において主戦力として通用する」SF的前提ガジェットである天鎧の理論。
そして、非情に緻密な剣術描写。指一本筋肉の一筋までをも描くような描写と、緻密で理論的な剣の術理。殊に術理描写は、果たしてこの技の真の正体は何であろうかと読み進めたくなる事必然。
見事な剣豪小説であると言えるでしょう。

★★★ Excellent!!!

今この瞬間に、レビューを書かなければいけないと思った。

それほどまでに凄絶で、これ以上ないほどの剣客としての生きざまを見せつけられたからだ。
それは──見事というほかなかった。

その人物のすごさについて、この場で語ることははばかられる。
ただ、気持ちよく、潔く、後を託して、その命は散った。


この小説は、平易な言い方をすれば、剣士がパワードスーツを着て戦うものだ。
刀が紡ぎあげてきた術理の歴史を、科学技術にて更なる高見へと押し上げた世界。
そこにあるのは戦いの美学であったり、戦いのみにくい部分であったり、そして命のきらめきそのものだ。

人間ドラマの描写も、必然性を持って描かれており、より作品に没入することができる。

大きな大きな作品になりそうなこの物語を、今後も追いかけていきたいと思う。

文句なし、星三つ!