第2話 取り戻した日常
木曜日の夜。寝る時間となった。
璃緒に勉強は教えたし、昨日の悪夢についても語った。
「それなら、もう悪夢は消えたってこと?」
「そうよ。もう誰も苦しまないのよ」
「すごいじゃん!」
璃緒は瑠璃たちの活躍を絶賛する。少し恥ずかしくて照れる。
「一番かっこよかったのは、大崎先生よ。だって私を救ってくれたんだもん!先生がいなかったら、今頃私、大怪我してたわ」
「でも、その大崎先生、本当のことをお姉ちゃんたちに隠してたんでしょ?」
確かにそうだ。それはよく考えれば大問題である。
「あんまり悪く言いたくないけど、先生失格なんじゃ…」
「でもさ、私たちは大した怪我はしてないわ。他の人たちも大事にならず済んだから。終わりよければ全て良しっていうじゃない?」
「今回のは本当に奇跡だよ。もし私だったら死んでるわ…」
それは心配しなくて大丈夫よ。璃緒には行かせないって決めていたから。それに第一、もう悪夢は見ない。
「とにかく、今日はもう遅いし、寝ましょ?」
「そうね」
布団に入る。いつもの癖で、インカムを一回頭に付けてしまう。
「これは、もう、しなくていいんだった…」
インカムを手に取り、睨めっこする。
今まで、危ないこともあったけど、多くの人を悪魔から救い、さらに昨日はその元凶も倒した。
瑠璃は、今まで戦ってきた悪夢を思い出して見た。
最初は自分の悪夢。思い出したくもない芋虫。
次はセアカゴケグモ。全く活躍できなかった苦い思い出だ。
そして鳥。合体なんかして、インパクトがある悪夢だった。
璃緒の悪夢は自分だった。それは本当にびっくりした。そして手強い相手だった。運が味方していなければ、勝てなかっただろう。
その後も色んな悪夢があった。一番多かったのは虫系で、特に被害者は女の子だった。時にはこれが悪夢? って思いたくなるようなものもあったけど、主にとっては怖いものだ。慎治は爆笑してたけど、私は真面目に戦った。
私と同じ芋虫が誰かの悪夢に出てきたことはなかった。みんなはあれ、大丈夫なの…?
丈の夢はサメだった。あの時脚に受けた傷は小さく、スカート履いていても全然目立たない。本当にそれだけでよかった。もしかしたら、脚を切り飛ばされていたかもしれない。危ないところだった。
そして、昨日。聞かされた真相は衝撃的な内容だった。未だにそれが、本当のことだと思えない。真実という実感が湧かない。ただ、がしゃどくろは強かった。刀が折れた時はもう駄目だと思った。あれほど絶望したのは昨日が初めてだった。とっさの判断と、投げた刀が刺さったのは幸運だった。
でも、もう悪夢は見ない。今日からこのインカムは、つけなくていい。
瑠璃は一度布団を出て、インカムを机の上に置き、また布団に入った。
今日は、どんな夢を見るんだろう?
悪夢じゃないのは久しぶりだ。
そして、それがこの先ずっと続くのだ。
それが嬉しくてたまらない。
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