第6話 みんなの決意

 話を全て理解するのに、時間がかかった。

要するに、こうだ。


 悪夢の元凶は、生け贄にされた赤子。そしてそれが、夢が叶わなかった人たちの無念を吸い、力をつけた。神主さんが供養しようとした時には、既に手遅れだった。そして悪夢が始まった。その悪夢は、見せ続ければ人の命を奪う。


 なら私も、悪夢を見続けてたら、死んでいた?

 汗がだらだら出る。本当だと思うとぞっとする。今まで助けたみんなも、危なかった。あと少しで死んでいたかもしれない!

「ちょうど俺は大学時代に、夢について研究していた。それであの装置ができたわけだ。俺はわずかな期間しか悪夢の中に入ったことがないが、今のお前たちのように戦った。でも怖くなって、逃げ出したんだ…」

「そんなことが、あったんですか」

「そうじゃ。大崎とやらの未来を潰したのも、わしじゃ。彼は絶対に良き研究者になれた。優秀だったからのう。でもわしのせいで、研究をやめてしまったわい」

「神主さんのせいじゃない。俺も戦いには向いてなかった。このまま続けて、死ぬのが怖かっただけだ。結局、自分を守りたかっただけだ…」

「ちょっと待って先生、今死ぬって…」

「すまない。隠していた。本当だ。人の悪夢の中で死ぬと、本当に死んでしまうんだ。俺の同期の仲間は、実際に死んだ。俺の目の前で!」

「本当に、死ぬ…」

 今まで私たちは、そんな危険と隣り合わせだったのか…。

「先生! どうして黙ってたんだよ? オレは、何度も危ない目にあったんだぞ?」

 慎治が本気で怒った。

「俺は逃げたことに責任を感じていた。かといって、将来の決まった自分にはもう装置は使えない…。そこで、お前たちに託すことにしたんだ。悪夢の討伐を。将来のある、夢のあるお前たちなら、絶対に悪夢に勝てるって信じていた。万が一、死んでしまったら、俺は教師を辞めるつもりだ。いや、ことが片付いたら辞める。いつも辞表は持ち歩いている」

 先生も、本気だった。

「お前たちに、悪夢を終わらせてもらいたい。無理にやれとは言わない。命にかかわるからな。でも、やってくれるのなら、今日の晩、ここに装置を持ってきて欲しい」


 一度、四人は学校に戻った。他に誰もいない二組で、話し合った。

「…どうする? 今日、行く…?」

「あのやろう、嘘ついてやがったのか!」

 慎治が文句を言う。いやあの話を後から聞かされたら、誰だってそうする。

「行って負けたら死ぬんだよ? 僕は、嫌だ」

 忠義が真っ先に否定した。それはそうだ。命を守る権利は誰にだってある。

「言っとくけど、私は行く…。私たちがやめたら、悪夢討伐団がなくなる…。そしたら、誰かが悪夢に、殺される…」

 紗夜は覚悟を決めている。

ならば自分も。

「私も行く! 紗夜の言う通りよ! 確かに大崎先生は私たちに嘘をついていたけれど、それでも誰かがやらなくちゃいけないのよ? それに私、もう逃げないって決めたんだもん!」

 しかし二人はまだ、悩んでいる顔をしている。

「あんたたちが来ないなら、私と瑠璃だけで行く…。悪夢討伐団に足手まといはいらない…」

「なんだと! オレが弱いって言いたいのか!」

「そうじゃないの? あんたも大崎先生と一緒…。真実を知ったら怖くなって逃げ出した…。何が違うの?」

「うるせぇ! オレはあいつとは違う! 今日証明してやる!」

 慎治が決意した。

「おい忠義ぃ! お前まさか、行かねえつもりか? いつもの態度はどうしたんだ?時代はマシンガンじゃねえのか?」

「君に言われなくたって、僕は行くよ!」

「そうだ。いい返事じゃねえか!」

「これで、みんな揃った…」

「悪夢討伐団、討伐開始だね!」

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