世界の軸
日曜日
公園で
おれはアイスクリームを買おうと
移動販売車の前に並んでいた
ちょうどすぐ前の奴で売り切れになってしまった
………
最後の一つを手にしたのは小学生で
阿呆みたいな顔をして笑っていた
おれはそいつをぶん殴ってアイスを奪うことにした
「よこせ」
「あーん!」
恋人が後ろで口をあんぐりと開けこちらを見ていた
何て面だ
こんな女を恋人にしていておれの品性が疑われないだろうか
「ねえ………」
きっとフェラチオもこんな表情でするのだろう
それならドーナツの穴にでも突っ込んでいた方がまだましだ
「ねえっ、ちょっと聞いてるの?」
「なんだよ?」
おれは言った
彼女は大きなため息をついた
心労があるのだろうか?
どうせならそのまま心筋梗塞か何かで死んでくれないかな?
そうしたらおれもペニスを咥えられる心配が無くなるから………
彼女はおれの方へ近寄ったかと思うと頬をぴしゃりと叩いた
「あんた、この世界が自分を中心に回ってるとでも思ってるわけ?」
………
おれは彼女を見つめた
何?
なんだってえ?
何を口にするかと思いきや
この世界が自分を中心に回ってるかだって?
ははっ
そんなことぐらいとっくの昔に了解してるよ
おれは今、何歳だと思ってるんだ
この世界がおれを中心に回っているか? だと
「そんなの当たり前じゃん」
おれは答えた
もしも
もしもだぜ?
おれが何らかの
そう例えば神に近い者によって生命が奪われ
死んでしまうような出来事が起こってしまったら
この星は回転すべき軸を失くして
永遠に漆黒の宇宙空間を理由も無くさまようことになるだろうね
そのようなことを彼女に説明してやった
彼女は何も言わなかった
おれはその顔をじっと見つめた
何か気味の悪いブヨブヨとした仮面のようにしか見えなくなった
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