大福
朝
目が覚めた
随分、長く眠っていたようだが
まるで一回、瞬きをしただけのように思考は明瞭だった
上半身を起こした
(………眩しい)
窓から狂った朝日が刺し込んでいた
それは雨のように感覚を伴って降り注ぐ光だった
昨日までとは異なり
窓硝子が変形するほど強烈なものだった
おれはパジャマのまま一階へと降りた
台所に母親がいた
思いつくままに往復びんたをした
テーブルの上の朝食を全てひっくり返した
ココアを作って飲んだ
妹を強姦して玄関を出た
もう二度と戻って来ることはないであろう玄関を
おれは旅人になろうと思った
寝癖、頭をぼりぼりと掻きながらそう思った
さあ
何処へ行こう?
パジャマは動きやすいから良いと思った
つまりおれはこれから常に寝るときの格好で動き回ることになるわけだ
それはとても良いことだろう
歩き出した
もはや自分が何年も過ごしてきた筈の家の場所も、形も、そこに住む人々の顔もわからなくなっていた
バス停で父親に会った
「おはよう」
「おはよう」
父親は電信柱の匂いをくんくんと嗅いでいた
おれにはそれが何を意味しているのか理解、出来なかった
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