243話 「サナちゃんが凄いことになってるぅぅううう! 後編」


 アンシュラオンは情報公開を発動。


 サナを見てみる。



―――――――――――――――――――――――

名前 :サナ・パム


レベル:8/60

HP :210/210

BP :80/80


統率:F   体力:F

知力:F   精神:F

魔力:F   攻撃:F

魅力:B   防御:F

工作:F   命中:F

隠密:F   回避:F


【覚醒値】

戦士:0/3 剣士:0/3 術士:0/3


☆総合:評価外


異名:白き魔人に愛された意思無き闇の少女

種族:人間

属性:闇

異能:トリオブスキュリティ〈深遠なる無限の闇〉、観察眼、天才、早熟、即死無効

―――――――――――――――――――――――



(おっ、増えてる増えてる。HPとBPが上がっているじゃないか! これは素晴らしいぞ!!)



 まず目を見張るのがHPの多さである。地味にサリータに迫る勢いなのがすごい。


 これだけあればナイフで刺された程度で行動不能にはならないだろう。下級魔獣の攻撃にも一発や二発は耐えられる。これはありがたい。


 BPの量も80ある。剣衝のような基本技で消費BPが2~5、虎破などで10~15といった感じなので、下位技ならば数回は楽に使える量がある。


 これもサリータに迫る数値だし、レベルが8であることを考えれば悪くない上昇率だ。



(レベルが8か。うむ、しっかりと上がっているな。そういえば、荒野に出たときに魔獣を倒したよな。ワイルダーインパスはともかく、ヤドイガニは普通の武人でも難しい相手だ。それを倒したのは大きかったかな。最近はそこそこ戦闘に参加させているし、そこで戦った相手はすべて格上だ。やっぱり強い相手と戦わせる意味は大きいな)



 グランハムのような一線級の武人とも出会わせているので、間接的ながら得た経験値はかなりのものなのだろう。


 この短期間に、これだけのレベルアップは素晴らしいことだ。


 もちろんレベルが1だったので、RPGよろしく最初は簡単に上がるものである。今までの経験でいえば、30くらいまでならばすぐに到達できる。


 討滅級魔獣を単独で撃破すれば、一気にレベル1からレベル20くらいには上がるだろう。それだけ初級の人間が得るものは大きいわけだ。


 それが50に近づく頃には、かなり上がりにくくなっていく。アンシュラオンがラーバンサーを褒めたのは、あのレベルに到達するのに尋常ならざる努力が必須だと知っていたからだ。


 とはいえ完全に一般人であったサナが、すでにレベル8というのは劇的な変化といってもいいだろう。ルアンが敵わないわけである。


 ホテルで調べたデータを思えば、ルアン戦はまったくフェアではなかったようだ。現状の戦闘力には明確な差がある。


 公正というのは完全な嘘情報であった。ルアン、涙目である。



(あの時はそんなに大差があるようには見えなかったが…まあいいか。オレからすると誤差の範囲内だ。あいつが弱いのが悪いんだ。…しかし能力値は『F』のままか。元の能力が低いせいなのかな。あまり上がりはいいとは言えないか。そこが課題だな)



 これだけレベルが上がっても能力がFのままだ。


 元の能力値がわからないので判断に困るが、仮に上昇値が『10』あれば、レベルが10上がれば『+100』になり、結果的に「E」にはなっているはずだ。


 となると、サナの各能力の上昇値が10未満である可能性が極めて高い。想定していたことではあるものの実際に見ると少しだけショックだ。


 サナには強くなってもらいたい。できれば自分に次ぐレベルにまでなってもらいたい。そういう欲求があるからこそショックなのだ。


 期待が高すぎるのが悪いのでサナはまったく悪くない。そもそも上昇値が10以上など、武人の中でも素養に優れた一部の者しか該当しない。一般人なのだからこんなものだろう。



(しょうがない。可愛い女の子なんだ。単純な能力上昇に過度な期待はやめよう。そっちは薬物や術具に任せればいいんだ。そうだよ。べつに腕力が強いだけが武人の強さじゃない。それだったらゼブ兄最強になっちゃうじゃん。あんなムキムキだって師匠にはボコられていたし、強さにはいろいろなタイプがある。うん、そうだ! サナにはサナの長所があるんだよ! そっちを少しずつ伸ばしてあげるほうがいいだろう。まだレベル上限も先だし、限界まで上げてやろう)



 これは仕方ない。人間それぞれ向き不向きがあるものだ。


 生物全般にいえるが、女性は筋力に劣る傾向にあるものだ。サナも多分に漏れず、腕力型ではなかったということだろう。


 それはいい。それは問題ない。


 ないのだが…



(…何かおかしいところがある気がする。うん、やっぱりおかしいよな。ちょっと現実を見るか)



 最初に見た時から少し違和感を感じていたので、ようやくそこに向き合うことにする。


 それを一つ一つ、これから見ていこう。




 まずは―――レベル




(サナってこんなレベル上限だったかな…? 60もあったか? あんまり覚えてないが…こんなに高くなかったような気がするぞ。20か30か、そこらへんだった気がする)



 いい加減な性格かつ常時ポジティブなので、昔のことはすっかり忘れてしまうのがアンシュラオンという男だ。


 サナを見て、「あっ、一般人だわ、これ」と思ったので、その印象だけが刷り込まれて他の情報が頭に残っていないのだ。


 あの時は自分だけの可愛い女の子が欲しかっただけなので、それ以外の要素はあまり重要ではなかったわけだ。


 ただ、さすがに60もあれば印象に残るはずなので、ここにまず違和感を覚える。




 次に―――因子




(何度見ても…これは見間違いじゃないよな)



 サナの武人の覚醒因子が―――すべて『0/3』になっている。


 見間違いかと思って何度か見直したが、どう見ても『3』である。間違いない!


 重要なことは、「すべての因子が」という点だ。



(術士因子が3ってのはセノアと同じだ。もしかしてサナの因子も3を0と見間違えたのか? …いやいや、それはないだろう。いくら適当に見ていたとはいえ気付かないはずがない。というか、この段階で相当な逸材だろう)



 3という数字はやはり素晴らしいものがある。3あれば武人としては一流のレベルに到達できる。


 しかもそれが三つの分野に渡っていれば、もはや脅威の逸材である。おそらく何か『奥義』の一つくらいは修得できるので、不意打ちでガンプドルフに致命傷を負わせることすら夢ではない。


 階級でいえば、マキやファテロナと同じ第七階級の達験級か、それを超える名崙級に到達できる可能性を宿している。


 それほどの逸材なのだ。サナと出会った時に気付かないはずがない。もしわかっていたら狂喜乱舞だったはずだ。




 次に―――スキル




(スキルもおかしい。サナにスキルは一つもなかったはずだ。スッカラカンだった記憶があるしな。まあ、持っているスキル自体はそう珍しいものではない。『天才』はゼブ兄も持っていたからいいとして、『観察眼』や『早熟』も名前通りだろう。それはいいんだ。だが、『トリオブスキュリティ〈深遠なる無限の闇〉』って何だ? こんなの見たことも聞いたこともないぞ)



 まず目に入るのが、先頭に表示されている『トリオブスキュリティ〈深遠なる無限の闇〉』の文字。


 火怨山でもさまざまな魔獣のデータを見てきたが、このようなスキルに出会ったことはない。


 人間と魔獣であるから相違はあるにせよ、この雰囲気は明らかに『ユニークスキル』である。


 ユニークスキルは、必ず最初に表記されるという特徴があるのでわかりやすいのだ。



(韻としては、オレの『デルタ・ブライト〈完全なる光〉』に似ている響きだな。しかも闇となると…反対の性質ということか? いや、勝手に判断するのは危険か。危ないスキルだったら困るが…ユニークスキルにマイナスのものはないはずだ。仮に何かしらマイナスがあっても、違う箇所が劇的に向上するから結果的にはプラスになる。ううむ、もしかしたら何かしら有益なスキルなのかもしれないが…まったくわからん)



 情報公開ではスキルの詳細が表示されないので、これ以上の推測は難しい。


 今のところは、そういうスキルがあるということしかわからない。


 怖くなったので、自分のデータも見てみた。



―――――――――――――――――――――――

名前 :アンシュラオン


レベル:122/255

HP :8300/8300

BP :2230/2230


統率:F        体力: S

知力:C        精神: SSS

魔力:S        攻撃: AA

魅力:A(※SSS)  防御: SS

工作:C        命中: S

隠密:A        回避: S


※姉に対してのみ、魅了効果発動


【覚醒値】

戦士:8/10 剣士:6/10 術士:5/10


☆総合:第三階級 聖璽せいじ級 戦士


異名:転生災難者

種族:人間

属性:光、火、水、凍、命、王

異能:デルタ・ブライト〈完全なる光〉、女神盟約、情報公開、記憶継承、対属性修得、物理耐性、銃耐性、術耐性、即死無効、毒無効、精神耐性、扇動者、年下殺し(恋愛)、妹過保護習性、姉の愛情独り占め

―――――――――――――――――――――――



(さすがにレベルは上がっていないな。弱い相手と戦っても経験値がほとんど入らないんだろう。レベル100以降はさらに上がりにくくなるしな。異名も変わっていないし、せいぜいスキルが増えたくらいか。…って、『扇動者』かよ。人聞きが悪いな)



 言葉巧みに人々を争いと混乱に招き入れる者、すなわち『扇動者』である。


 誰が決めているのか謎だが、実に的を射ているスキル名だ。感服するしかない。


 あとは『年下殺し(恋愛)』と『妹過保護習性』が増えている。


 前者は年下に対してもそれなりの魅了効果を発揮するものであり、シャイナと長く付き合っていたせいで身についたものかもしれない。


 後者は見たままだ。サナへの対応を見ている限り、過保護以外の何物でもない。


 ユニークスキルが最初に表示されるのに対し、最後に表示されるのは基本的に「マイナススキル」なので、災難のほうが多いのだろう。ちょっと残念である。



(こうして見ると、やはりスキルは増えるものらしい。となれば、サナのスキルもレベルが上がったことによって覚えたものなのかな。あるいは何かがきっかけになった?)



 いろいろと考えてみるが、この世界で出会った人間の数はやはり少ないし、スキルに関してはデータも十分ではない。安易な結論は危険である。


 唯一間違いないのは、成長によってスキルが増える可能性があるということだ。一般人でも成長すれば、何かしら特殊なスキルを得る可能性がある。これはルアンにも朗報だ。




 最後に―――異名




(『白き魔人に愛された意思無き闇の少女』…か。白き魔人ってのはオレのことだよな? 姉ちゃんが魔人だったから、オレも同じ魔人のカテゴリーに入るのは変じゃないか。あとは『闇』が加わっているな。サナの属性にも闇属性が追加されているし…この関係かな?)



 闇はヤキチも持っている属性であり、アンシュラオンが持っている『光』同様、比較的レアなものだ。


 闇といってもファンタジーでよくあるようなダークという意味ではなく、単純に性質を示すものなので悪いものではない。


 なにせ闇を司る『闇の女神様』は、この世界で一番慈悲深い存在である。闇を崇拝しても何らおかしくはない。


 植物の種が土の闇の中で芽吹きを待つように、闇はすべてのものを優しく包むのだ。闇は女性の子宮、すなわち物質性を示すものであり、光と相まって霊に進化を促すのである。


 よって、サナの闇属性は歓迎すべきものだ。他人とは違うレアな技を覚えてくれることだろう。



(まったくわからん。なぜこうなったのか理解に苦しむ。単純なレベル上昇だけでこうなるものなのか? いやいや、そんな簡単なら苦労などない。うむ…可能性としては【命気】あたりが怪しいか。そういえばスラウキンが何か言っていたな。仙人の力を受け継ぐとかなんとか。だが、他の人間にはほとんど効果がなかったぞ。あれをどう説明する? もしそうなら患者の中に強いやつが生まれてもおかしくはないはずだ。しかし、そんな気配はない。サナだけ特別だったと言うのは簡単だが…あまりに都合がよすぎる。何かしらの要素があるはずだが…)



 可能性はいくらか考えられる。しかしながら、すべては可能性でしかない。


 わからない。まったくわからない。





 が、まずは一言。








「サナちゃんが凄いことになってるぅううううううううう!!」








 感動の雄たけびである。



 ここでようやく馬鹿兄は、溺愛する妹の異変に気付くのであった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます