223話 「メイドは最高だ。『ラノア吸い』も堪能しよう」


「やあ、セノア、ラノア、久しぶりだね。元気にしていたかい?」


「は、はい! お久しぶりです…ご主人様」


「んー、はーい!」



 久々にホテルに戻ってきたアンシュラオンは、ロゼ姉妹と再会。


 アンシュラオンとサナが部屋の中に入ると、二人がとっとこ小走りで出迎えてくれた。その仕草が妙に可愛い。



「こら、ラーちゃん、ご主人様でしょ!」


「ははは、まだ子供なんだ。そんなことは気にしないでいいよ。それにしてもラノアは元気だねー。セノアはまだまだ表情が硬いかな?」


「も、申し訳ありません」


「謝る必要はないって。元気ならそれでいいよ。ホテル生活は楽しめているかな?」


「そ、その…緊張して……まだ実感が…」


「遠慮することはない。君たちはオレのスレイブだ。堪能する権利がある。それによくがんばってくれたからね。十分な働きだ」


「そ、そんなことはないです。こんな豪華な食事を食べられるだけでも…」


「ねーね、さいきんあまりたべてないね」


「しっ、そういうことは言わないの! あっ、いえ、今の言葉は嘘じゃなくて…値段を考えると食べるのが怖くて…うっ、また吐き気が」



 なんだかデパートでのシャイナを彷彿させる台詞だ。


 一般人や労働者階級にとっては高級ホテルに泊まること自体が異常事態なのだろう。食事はさほど豪華ではないと思うが、それでも彼女たちにとってはご馳走である。


 豪華すぎると逆に食が細るというのだから、人間とはなんとも報われない生き物だ。



(そりゃまあ、いきなりこんなホテルに連れてこられたら驚くよな。両親が亡くなってからさして時間も経っていない。しばらく絶望しかなかっただろうし、そこからの急上昇だもんな。疑うのが当然だ。最初は逆に身の危険を感じるのが普通の感性だろうし…)



 最初は驚き感動しつつも「もしかして騙されているのでは?」という疑念が湧き、徐々に不安になってくる。


 しかもホテルに閉じ込めるというのは明らかに怪しい。ほぼ軟禁である。こうなるとエロいイメージしか湧かないので心配して当然だろう。


 ただ、身の危険はないと察したようで、幾分か安心感は見て取れる。それだけでも十分な進歩だ。



「そのうち慣れるさ。ただ、ホテル暮らしはそう長くは続かないかもね」


「そのほうが…気が楽です」


「えー? そうなのー? もっといたいー」


「こら、ワガママ言わないの! す、すみません!」


「いいっていいって。微笑ましいよ。なでなで」


「うきゅ、んふふ、ふふふ♪ これ好きー」



 ラノアの頭を撫でる。まるで綿のようなふんわりとした髪質が心地よい。彼女も気持ちいいのか、安心して頭を委ねてくるから可愛い。


 まだ常識を知らないだけなのかもしれないが、ラノアはまったく物怖じしない。世間でいうところのフリーダムな「次男次女タイプ」なのだろう。


 一方のセノアは長女としての責任があるのか、多少神経質なところがある。これも他人の中で生きてきた緊張感ゆえだろう。


 本当はラノアのような態度が他人に溶け込む秘訣だが、このご時勢どこに危険があるかわからない。彼女の警戒感は必須である。そう考えるとバランスの取れたよい姉妹だ。



(うーん、どっちもいいなぁ。サナとは違う反応があって楽しいよ)



 セノアの少し硬い表情でさえ楽しく思える。サナとは違い、感情というものが強く出ているからだ。



「…じー」



 その様子をサナも観察している。


 普通の女の子たちなので、この二人の存在もサナにとっては有益だろう。ぜひここで女の子らしさを学んでもらいたいものだ。


 理想としてはここでヤキモチを焼いてもらいたいものだが、その段階に至るにはまだまだ時間が必要なようである。


 「お兄ちゃんは私のなの!」と言って胸を擦り付けてくるくらいが理想だ。正直サナがそんなことをするとは思えないが、あくまで馬鹿兄の願望である。




「それにしても二人ともなかなか似合うね。すごく可愛いよ」


「は、はい、ありがとうございます!」



 可愛いと言われてセノアは赤くなる。そういった反応も子供らしくて微笑ましい。


 すでにアンシュラオンがホワイトとして活動を始めたので、二人は影武者を一旦辞めてメイドになっている。


 現在は可愛らしいメイド服に身を包んでおり、ホロロの隣にいると完全にメイド見習いといった様相だ。


 それに―――感動。



(メイドはいいなー。オレの言うことは何でも聞くし、従順だし。最高だよ! それに昔からずっと子供のメイドが欲しかったんだ。これで一つ夢が叶ったかな。でも、もっと欲しいと思っちゃうんだよなぁ。出迎えに三十人くらい並べたいし)



 支配欲が強いアンシュラオンにとって、主人に従うメイドは実に素晴らしい存在だ。ホロロも良いが、子供のメイドというのは個人的にも大好物である。


 何度かサナにもそういう格好をさせたことがあるが、彼女はほとんど反応しないので味気ない。観賞して楽しむくらいだ。


 その点、セノアの態度は初々しくてよい。着慣れないメイド服、突然の変化に戸惑う姿、謙虚な姿勢。コスチュームプレイとしては完璧だ。


 サナと比べると可愛さという点で数段劣るが、白スレイブになれるほどの容姿は持っている。十分合格点だろう。ラノアともども80点はあげたい。


 今のところロゼ姉妹に性的な欲求は感じないし、このまま可愛い愛玩メイドとしてがんばってほしいところである。


 ただ、当人が嫌がるようならば無理はさせたくない。メイド候補ならば白スレイブにいくらでもいるので、術の資質のある彼女たちにはある程度の自由を与えたいと思っている。


 なので、当人に感想を訊いてみた。



「メイドの練習もしているんだって? どう、楽しい?」


「は、はい。まだまだ至らないところが多いですけど…ご主人様のご期待に沿えるように…が、がんばります!」


「す、素晴らしい」


「…え?」


「ああ、いやいや、こっちの話だよ。大丈夫。うん、いいよ。そのたどたどしさ。さらに加点だ。ぜひそのままの君でいてくれ」


「は、はい」



 緊張しておどおどしている感じが嗜虐心をくすぐる。当然彼女をいじめたりしないが、見ているだけでゾクゾクするのは素晴らしい。


 スカート自体もはき慣れていないのだろう。時々恥ずかしそうに、ぎゅっと裾を握って下に引っ張る仕草もいい。これは個人的にポイントが高い。


 ぜひこのまま真っ直ぐに育っていってもらいたいものだ。


 セノアは問題なし。次はラノアだ。



「ラノア、膝においで」


「はーい。んしょっ…ん! のぼった」


「よしよし、いい子だな。なでなで」


「んふふ♪」



 ラノアを呼ぶと喜んでやってきた。背中を預けて膝にもちょこんと座る。


 どうやら頭を撫でられるのが気に入ったようだ。触っている間は、足をふりふり動かしてご機嫌である。



(この反応はいいぞ! 超可愛い!! まさに子供を膝に乗せている感覚だ!! サナがこれをやってくれたら…本当にやばいかもしれん。いけない欲求を抱いて興奮しちゃうかもな!)



 という変態発言は置いておき、ラノアにも訊いてみる。



「ラノアはメイドは楽しいか?」


「んー、メイド?」


「お姉ちゃんと一緒にそういう格好をして暮らすことさ」


「たのしい!」


「そうかそうか。満足しているならそれでいいんだ。ほかに何か欲しいものはあるかい?」


「んー、なでなでして」


「そんなことでいいなら、いくらでもしてやるぞ。ナデナデナデナデナナデ」


「んふふ♪ きゅっきゅっ♪」



(すごい甘えてくるな。そうか…まだ子供なんだよな。この子も守ってやらないといけないな)



 ラノアはアンシュラオンを完全に信頼しているのか、身体を預けて甘えてきてくれる。可愛い反面、親を失った寂しさが影響しているのは間違いないだろう。


 これもサナには欠けている感情である。寂しいとか甘えたいとか、イチャラブ要素はまだまだ足りない。これも彼女たちから学んでほしいものだ。



(すーすー、くんくん。うん、いい匂いだ。サナとは違って軽い感じだが、子供らしい甘さがあっていいな。うむ、これはいいぞ。すーーーすーーー、はーーー。素晴らしい味わいだ)



 さりげなく『サナ吸い』ならぬ『ラノア吸い』もやってみる。



(むぅ、軽い甘さが鼻に残りながら、けっして不快ではない。たとえるならば草原に自由気ままに咲く野花のように爽快で柔らかく、心が弾むような味わいだ。集中して吸うのではなく、気分が向いたときに感情に任せて吸うのが一番よさそうだ。すーーすーーー、うむ! 逸品だ)



 と、まるでソムリエのような感想だが、あくまで幼女の香りの話である。だんだん変態度が上がってきた気がしないでもない。


 むさ苦しい連中と一緒にいたストレスだろう。正直、あんなやつらと一緒にいると心が荒む一方である。臭いしムサいし汚いし醜いし、強さ以外にいいところが一つもないのだ。



 それと比べると、ここは―――天国。



 サナ以外の幼い蕾を思う存分堪能できる。まさに楽園だ。ここにやってきた目的の一つも女の子成分の補充であるので、たっぷり吸っておく。



(これは素晴らしい。やはりオレは間違っていなかった。この子たちは絶対守ろう)



「君たちの健康と豊かな生活を守るのがオレの仕事であり責任だ。二人ともまだ若い。まだまだこれから成長していくんだ。今はいろいろなものを見て学ぶことを大切にしてくれ。失敗してもへこたれないようにね。人生は失敗から学ぶんだから」


「はい。ありがとうございます、ご主人様!」



 セノアは、ぎこちなくも笑う。その笑顔は、少しだけ緊張から解放された本来のものであった。



(ご主人様は本当に優しい人みたい。ラノアは悪い人には絶対に懐かないし、あんなに甘えたりしないもの。それにすごく綺麗だし…お医者さん…だっけ? もしかしてすごい人なのかな…)



 アンシュラオンは、ホワイトの時と違ってとても優しい。ロゼ姉妹を見る目も慈愛と受容に満ちていた。


 今は仮面も脱いでいるので、その美しい顔も相まってセノアの緊張をほぐすことに成功している。


 自分のものに対しては心からの愛情を注ぐ男である。その点に関してはまったく問題がないだろう。買われたセノアは幸せだ。


 ただ、裏で不純なことを考えていると知ったらどう思うのかは怖いところだ。さきほどからの思考内容は、すべて変質者そのものである。そもそもラノア吸いの段階でドン引きだ。


 といっても、それもまたギアスを付けるまでの短い心配であるが。





「さて、今日はみんなに大切な話がある。よく聞いてくれ」



 歓談が終わったところでラノアを膝から降ろし、本題に入る。女の子成分補充も大切だが、一番の目的はこちらである。


 この部屋には、アンシュラオンとサナ、ホロロ、ロゼ姉妹がいる。サリータは律儀に扉の前で番をやっているので、あとで伝える予定だ。



「これから少し動きがある。最初は大丈夫だろうけど、時間が経つにつれてここも危険になるかもしれない」


「っ…」


「セノア、大丈夫だ。君たちはオレが守ると言っただろう?」


「は、はい!」


「ただ、オレも忙しいから常時傍にはいられない。むしろ敵はオレを狙ってくるだろうから一緒にいないほうがいいんだ。それはわかってくれるね?」


「あ、あの…ご主人様は誰かから狙われているのですか? あっ、す、すみません!」



 セノアが素朴な疑問を口にするが、ホロロが視線を向けたので慌てて口を押さえる。


 しかし、彼女の疑問ももっともだ。理由がわからないと怖いものである。


 いきなり襲われたりしても、過去に揉め事があれば「やっぱりな」と思えるが、通り魔だと「なんで!?」と思うに違いない。


 その覚悟の差が咄嗟の判断力に影響を与えるのは事実だ。説明はしておいたほうがいいだろう。



「医者なんてやっているとね、いろいろとやっかむ者たちがいるものなんだよ。そろそろ医者なんて辞めて商売でも始めようと思っているけど、その準備でも邪魔が入ってね。ほんと困ったもんだよ。オレが成功するのが憎らしいんだろうね」


「…そ、そうですか。いますよね、そういう人たちって」


「そうそう、迷惑しているんだ。それが収まるまで君たちには警戒してほしいってことだね。逆恨みで家族を狙う者だっているんだ。注意はしたほうがいいだろう。でも、大丈夫。安心してくれ。その警護のためにサリータを用意したんだ。今もああやって扉の前で見張っているだろう? 君たちは安全だよ」


「は、はい! わかりました」



 嘘ではない。


 最初に何も考えずに医者をやっていたらソイドファミリーから攻撃を受けたし、医者を辞めても暮らしていけるだけの金を得るためにソブカたちと計画を進行中だ。


 本当のことを言って混乱を呼ぶのは愚かである。「課長、太りましたね!」と素直に言ってはいけないのだ。


 課長が太ったところで自分には何の不利益もないのだから、そっとしておくのがいいだろう。



「それでその…私はまたご主人様の代理になればいいのですか?」


「ああ、そっちは大丈夫だよ。危ないから、ここから先は代理にならないほうがいい。もう十分に役立ってくれたからね。おかげで計画がかなり進んだ。ありがとう、セノア、ラノア」


「は、はい! お役に立てて嬉しいです」


「ほめられたー、なでて、なでて!」


「はいはい、ナデナデ」


「んきゅきゅっ♪」


「セノアもナデナデ」


「あっ…んん…」



 二人の頭をナデナデしてあげる。


 セノアは若干恥ずかしそうだが、まんざらでもない様子だ。彼女もまだ十二歳。親がいないといけない年頃なのだ。親代わりというのはなんだが、頼られる存在でありたいとは思う。


 実際、ロゼ姉妹にはかなり助けられたものだ。彼女たちが影武者として活動している間に多くの準備ができた。これだけで買った値段以上の価値はある。


 ただ、これからは危険がぐっと高まる。彼女たちの希少性を考えれば無理に影武者にする必要はないだろう。


 なにせもう『代用品』は手に入れてあるのだから。



「ホロロさんには今後の計画書を渡しておくよ。いくつかのパターンが予測されるけど、その枠組みから大きく変わることはないと思う。そうそう、読んだら燃やしておいてね」


「かしこまりました」


「うん、やっぱりホロロさんのほうがいいな」


「…え?」


「いやいや、ホロロさんがいると安心するってことさ。君と出会えたことがオレにとっては本当に幸運だったよ」


「それは…とても嬉しいです」



 ホロロは頬を赤らめて柔らかく笑う。主人だけに見せる事務的ではない本物の笑顔である。



(ファレアスティさんが冷たかったからな。ホロロさんには癒されるよ。やっぱりメイドはいいもんだなぁ)



「じゃあ、ホロロさんもナデナデしてあげるね。ナデナデナデ」


「あっ…ふふ…ふふふふ。恥ずかしいです」


「ついでに胸も揉んであげようね。もみもみ」


「あっ、はい…んっ…はっ…あ、ありがとうございます」



 胸を揉んで感謝される。やはりメイドは最高である。もっと増やそう。



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