白と黒の裏社会抗争編「第一幕『始動』」

124話 「サナ吸いとホロロの調教」


 あれから一週間が経過。


 なんとなく一週間単位で行動してしまうのは、地球時代の名残というものだろうか。


 その間、アンシュラオンが何をしていたかといえば―――



「すーーはーー、すーーはーー」



 これは深呼吸でも危ない粉を吸っているシーンでもない。



 彼が吸っているのは―――サナ。



 相も変わらずベッドでサナを抱きしめながら、その香りを楽しんでいたのだ。



「いやー、やめられないなぁ! これは最高だよ! すーーはーー、すーーはーー! き、効くー!」


「………」



 猫吸いならぬサナ吸いは、アンシュラオンにとって元気の源である。


 もはやこれなくして生きてはいけないほど依存しているので、ある意味においては麻薬以上に危険なのかもしれない。


 一方のサナは、それに対して何らリアクションを取らないため、なかなかシュールな光景でもある。



「あー、可愛い、可愛いー、ごろごろごろー」



 サナを抱っこして、ベッドの上をゴロゴロする。


 正直、美形少年だからこそ許されるが、オッサンだったら即座にアウトの光景だ。



 一週間、アンシュラオンはほぼホテル内にいた。



 グラス・ギースには連絡馬車というバイク便に似たシステムが存在するので、用事を伝えるだけならばそれで十分なのだ。


 普通の手紙くらいならば早馬で届けられるので、そのあたりは意外と不便はない。むしろ待つ楽しみも増えたので、昔ながらの手紙文化も悪くないと考えているくらいだ。



 コンコン


 そんな時、ノックの音がする。



「いいよー。入ってきて」


「失礼いたします」



 入ってきたのは、当然ながらホロロ。


 この階全部を常時波動円で監視しており、その接近にも気がついていたため驚きは皆無だ。



「それで、どうだった?」



 サナをベッドで抱っこしながら報告を聞く。



「しっかりと入金されておりました」


「額は?」


「一千万円です。これで一週間分とのことです」


「うむ、結構、結構。ホテル暮らしって案外便利だよね」



 海外からの客が多い高級ホテルは、ハローワークと同じく金融機関での出入金が可能となっている。


 正確に言えば、ハローワークと提携しているので、ここでも同じ機能が使えるというわけである。


 ホロロに頼んだ用件は、入金の確認。


 ソイド商会名義で、まずは一週間分の金が振り込まれた。ホロロが言ったように、額は一千万だ。


 契約では一日百万なので、十日分の金ということになるが、三百万は相手からの心付けということだろう。


 増えた残高を見て、アンシュラオンはニンマリと笑う。



(これだけの額が勝手に入ってくれば、何もしないで遊んで暮らせる。やっぱりこのままでもいいんじゃないか? …って、そうだった。それだとシャイナの件が解決しないんだ。はぁ、犬を助けるために年金を捨てる気分だな。いや、これも投資だ。後で何倍にもなって返ってくるはずだ)



 一瞬、安易な安金に目が眩みそうになるが、麻薬組織の利権を奪えばもっと儲かるので、面倒くささに目を瞑ってがんばることにした。


 若干忘れそうになるが、これはシャイナのため、ひいてはサナの情操教育のためである。子供には犬が必要なのだ。


 そのついでにごっそりと大量の資金を得ようとしているにすぎない。あくまでついでだ。本当に。たぶん。きっとそうだ。



「それにしても、豚君は上手くやっているようだね」


「彼はソイドファミリーのナンバー3ですので、組織内ではかなりの発言力があると思われます。しかも次期組長候補ですから、よいところに目を付けられました。さすがホワイト様です」


「たまたまだよ。リンダ…じゃなくて、ミチルがあいつと婚約者ってことまでは知らなかったからね」


「それでも屈服させたのはホワイト様のお力です。感服いたしました」


「そう素直に言われると嬉しいもんだね。やっぱりホロロさんみたいな人が傍にいると落ち着くな」



 反発するシャイナもいいが、やはり従順なほうがいいに決まっている。


 改めてホロロの良さを知った気分だ。



「ミチルの様子はどう?」


「業務に問題はありません。基本的には調理の下ごしらえやゴミ出し、下層階の客室のベッドメイキングなどが仕事ですので、他者と接触する機会があまりありません」


「コシノシンは?」


「継続的に使用しています。日に三回は打っているようです」


「なんだか意図せずに中毒者にしちゃったな」


「あれがないと精神が不安定になりますので、業務にも必須かと思われます。もともとは自分が関与していた組織のものです。同情の余地はないでしょう」


「まあ、そうだね。因果応報、か」



 ミチルは、そのままホテルで従業員をして働いている。


 彼女はあくまでソイドファミリーから送られてきた密偵であり、いまだに正体はバレていないことになっている。


 そして、密偵の役目は監視。


 ホワイトの行動が逐一ビッグに届くようになっている。これは予定通りであるし、そうすれば組織側も安心するだろう。


 また、当然ながら人質としてホテル内に閉じ込める意味合いもある。


 報告時に逃げ出すことも可能だが、彼女はそんなことはしないだろう。アンシュラオンに逆らうことは破滅を意味する。


 骨の髄、魂の奥底にまで恐怖を植え付けたので、ビッグともども逆らうことはないと考えて大丈夫だろう。



(仮に豚君が反抗したら、その場合は組織もろとも消して終わりにすればいい。もしシャイナを人質に取っても、オレが見捨てればいい話だ。そもそもシャイナは、まだオレのスレイブじゃない。優先順位は間違えないようにしないとな)



 アンシュラオンが助けるのは、自分の所有物のみである。


 まずはサナの安全。これに勝るものはない。次にシャイナの救済だが、サナとは天秤にかけられない。


 ラングラス一派への破壊活動を開始した以上は、より多くの危険が待ち受けるだろう。その過程でどうしてもシャイナにも危険が及ぶ可能性がある。


 サナはアンシュラオンが守るとしても、遠くに住んでいるシャイナまで守るのは難しい。



(ソイドファミリーと手を結んでいると思わせている間は、まだなんとかなるだろう。ただ、それ以後のことはわからないな。…かといってホテルに移動させるのも危険か。あいつにはまだ売人の仕事をやってもらわないといけないし、地理的にもあっちのほうが便利だ。借金を肩代わりして返してやるという手もあるが…それだと逆に人質にできるってことを教えるようなもんだし…やはり現状維持かな)



 シャイナが離れているのが一番のネックだが、現状では近くに置くことはできないと判断。


 結局、現状維持である。




「まったく、あのワンコロはいつも微妙なところにいるな。さっさとオレのスレイブになれば話は早いんだけど…」


「ホワイト様、あの女をスレイブにするおつもりなのですか?」


「うん? まあ、そのつもりだよ。でも、ただの犬だからね。ホロロさんとは違うさ」


「…それならば私を先にスレイブにしてくださいませんか?」



 たまりかねたように顔を紅潮させて、アンシュラオンをじっと見つめる。



(うーん、この前の一件から、さらに崇拝の具合が激しくなった気がするな。慕われるのはいいんだけどさ)



 ロリコン妻を見てもわかるように東大陸の女性の結婚適齢期は早いらしいので、ホロロの歳ともなれば自分の将来を早く固めたいと思うのは自然な感情なのだろう。


 それが結婚にせよスレイブにせよ、何かしら落ち着きたいのだ。


 ただ、こちらにも事情がある。



「ホロロさんが望むなら、もちろん先にやるけど……もうちょっと待ってもらおうかな。まだ何も整っていないんだ」


「私はいつでもかまいません。どうかすべてを奪ってくださいませ!」


「うーん、魅力的な提案だけどね。まずは今の案件を処理するほうが先かな。シャイナもそうだけど、今の段階ではいつも傍にいるわけじゃないから、守りきれるかわからないしね。まだそこまでいかないほうがいいよ」


「いつ死んでも大丈夫です!」


「いやいや、それは勿体ないって。ホロロさんみたいな女性は貴重だよ? もうちょっとの辛抱だからさ。それにジュエルの問題もあるしね…」



 自分のスレイブに普通のジュエルは使いたくない。サナほどとはいかなくても、それなりのジュエルを用意する必要があるだろう。


 今回の騒動は、だらけていた時に発生した予定外のことなので、まだスレイブを本格的に養うだけの準備が整っていなかった。


 だが、ホロロの目はさらに潤んでいく。



「はぁはぁ、想像するだけで身体が疼いて…。こんな私があなた様のものになるなんて…最高で……はぁはぁ。これ以上我慢できるかどうか…」


「もう、しょうがないなー。それじゃ仕事に支障が出ちゃうでしょう?」


「も、申し訳ありません」


「ほら、こっち来て。ちょっと鎮めてあげるから」


「は、はい! 失礼いたします!」


「ベッドに四つん這いになって」


「はぁはぁ…はい」


「よっと!」


「あっ!」



 四つん這いにさせて、その上から覆いかぶさる。


 そして、ホロロの両手を自分の両手でがっしり掴んで逃げられないようにしてから―――首筋に噛み付く。



「あはぁあっ!!!」


「がぷがぷっ! がぷがぷっ!! うん、ホロロさんの首筋は美味しいな。はむはむっ! はぶっ!!」


「あっ、あああ―――!!」



 まるで吸血鬼のように首筋に噛み付き、がぷがぷと吸い付く。


 多少強めに噛んだことで、しっかりと歯型が首筋に残った。



「はっ、はっ…はぁ!!」


「どう?」


「いい…いいです! 支配されている感じが…ああっ!!」


「じゃあ、今度はこっちだね」



 今度は胸を強めに揉みながら、股間に手を回す。


 それからお得意の振動で刺激を加えると―――



「はぁはぁ…ああああああああ!!」



 身体をビクビクさせて―――軽く達する。



「くはっ…はっ!! はっ! いい、いいです!! もっと強く! もっと…もっとなぶってください!」


「はいはい。ぎゅっ、ぎゅっ」


「ああああっ、あはあぁあああああ~~~~~~~ん!!」



 さらに強めに胸と股間をいじると、ガクガクと痙攣させて完全に力が抜けた。


 そこをさらに体重をかけて上から押し付けてやる。


 ぎゅっ ぎゅっ ぎゅ~~~~~



「ふーー、ふーーーー!」



 ホロロは涙を流しながら、荒い呼吸でベッドに這いつくばる。


 その顔は激しく紅潮しており、羞恥や快楽などなど、さまざまな感情が入り混じった複雑なものだ。


 うん、エロい。


 もともと艶のある美人なので、実に素晴らしいイキ顔である。



(ホロロさんって、もしかしたらマゾッ気があるのかもしれないな。うん、支配されたい願望っていいよね。スレイブにしたらそれなりに可愛がってあげよう)



「今日はここまで。続きをしてほしければ、これからもオレと妹に尽くすように」


「は……はい…! あはっ! もちろん……です! ふー、ふーーー! 喜んで……ご奉仕いたします!」



(うむ、これこそメイドだな。素晴らしい)



 ホロロの従順な姿勢に支配欲が少し満たされる。


 これだ。これが欲しかったのだ。こういう女性を集めることに意味がある。


 あとはバリエーションを増やして彩を加えていくだけだ。そのことを考えるだけで再びスレイブへの情熱が湧いてくるので、楽しくてたまらない。




 それから三十分ほど、ホロロが回復するまで待つ。



「…じー」



 その間、サナがじっとホロロを見ていたりする。



「サナも興味があるか?」


「…こくり」


「そうか。でもな、うーん…まだ早いかな」



(サナにはまだ早いな。というかオレは、サナの年頃にはもうとっくに姉ちゃんとやっていたけど…。あれは駄目だ。人を駄目にする。まだ早い)



 過去の経験から、あまりに早すぎる経験は危険であることも知っていた。


 特に姉との絡みは人生を駄目にさせる。アンシュラオンの人格が大きく変化したのは、あの永遠の快楽の中でなのだ。


 あの甘美な快楽と洗脳効果によって、本当にしばらくは何も考えられない状態になっていたものだ。


 もし前世の経験がない弱い魂ならば、あっという間に虜になり、命令だけを聞く人形になっていたことだろう。



(サナは大事に育てよう。焦ったら全部が駄目になる。そういった快楽系はあとだ。そもそもサナは感情表現が希薄だから、あまり反応がなさそうだし…。それより、まずは【自衛】を学ばせようかな)



 今回のシャイナの一件で、まず強く思ったのが自衛の大切さである。


 自分はともかく、こうして他人との関わりが増えていくと、それに付随して各人の自衛の重要さも増してくる。



(サナも自分で、ある程度動けるようにならないといけない。今回はそれを試すよい実験になりそうだな。くくく、裏側の人間ならいくら死んでもいいからな。楽しみだ)





 それからアンシュラオンとサナは一度お風呂に入り、着替える。



「お出かけですか?」



 風呂を出ると、部屋の入り口では、もうすっかり回復したホロロが待っていた。


 当人は何も言わないが、風呂に入っている間に下着は取り替えたようだ。波動円の感覚が違うからわかる。



「うん、やることがいろいろあってね。あっ、そうだ。ホロロさんも一緒においでよ」


「私もですか? しかし、ホテルの仕事が…」


「オレが命令したって言えばいいんだよ。札束で支配人の頬を叩けば大丈夫でしょ?」


「かしこまりました。では、ご一緒いたします」



 そう言うホロロは嬉しそうだ。アンシュラオンと一緒なのが幸せなのだろう。


 まだギアスこそ付けていないが、すでにスレイブの鑑のような女性である。



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