第75話「恐竜の子供のSOS」
異常なまでに遭遇する蜘蛛との妙な縁を呪っていると、蜘蛛が動いた。
追い詰めた子供恐竜にとうとう襲いかかったのだ。
「キャウゥ……」
涙目で絶望感を露にする子供恐竜。長い8本足を器用に動かし、子供恐竜を捕まえようとする蜘蛛。非常に気持ち悪い絵面である。
と、そのとき。不意に子供恐竜と目が合った。
その目は強烈に助けを求めているのが丸わかりで。
何故か、気付いたら身体が勝手に動いてた。
瞬時に間合いを詰めて子供恐竜を襲わんとする蜘蛛の足を剣でまとめて切断し、燕返しの要領で蜘蛛の胴体を真っ二つにする。
真っ二つになった巨大な蜘蛛は血飛沫を上げながら倒れた。当然息はしていない。
剣に付着した血を払って柄に納める。
「大丈夫?」
後ろを振り返って子供恐竜に聞く。
巨大生物は言葉が通じないけど、それ以外の種族は共通で言葉が通じるらしいからね。すぐそこにある恐竜の村といい、どう考えてもこの子は巨大生物ではないだろう。
私よりほんの少し目線が低い子供恐竜が唖然として私を凝視していたが、ハッと我に返ってコクコク首を縦に振った。
「なら良いや。こいつ、あんたのお仲間殺したやつ?」
悲しそうに表情を歪め、力なくコクリと頷いた。どうやら意思疏通はできても喋れない種族のようだ。
そっか、と呟いて子供恐竜の頭にぽんっと手を置く。ザラザラした皮膚の感触が掌に伝わる。子供恐竜は一瞬びくっとしたが怯えたという雰囲気ではない。ただ純粋にびっくりしただけのようだ。
そのまま子供恐竜の頭を撫でる。
「よく独りで頑張ったね」
もし恐竜の村に住むのがあれで全員なら、この子はたった独り生き残ったということ。それでもなんとか生きようともがいた。
子供ながらよく頑張ったよ。えらいえらい。
子供恐竜は撫でられ続けている中、堰を切ったようにぶわっと涙を溢した。今までの緊張感から解放され、それはもう滝のように涙を流した。
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