第38話「やる気がないにも程がある」

「おお……やっとゲートが見えたぞ!けど、なんで枕を股に挟んでんだ……?」


「みのりんすごいにゃー!人間の域越えてるにゃ!でもなんで枕持ったままなのにゃ?」


「常にやる気を出せばいいものを……」


「典型的ドストライクなやればできる子だねー。ところであの枕はウケ狙いかな?全然面白くないんだけど」


枕之助を一度手放したと勘違いした方も多いだろうが、今現在私の相棒は両足で挟んでいる。移動時のみ器用に脇の下に挟んだりと工夫しながら枕之助と共に行動しているのだ。


今なんかとても失礼なことを言われたが他人の評価なんぞ知らん。好きにして。


その後も斧を両手で持ちザックザックと切り倒していき、ブラッドを筆頭に村人達が倒れた木を細かく切って薪にする……をしばらく続けていると、村の入り口が通過可能状態になってきた。


といっても切り株の処理がまだだから完全ではないけど。切り株を掘り起こしてその場所に土を固めてようやく道らしき道が整備できるのだ。


北の入り口の真ん前に私の家が建っており、両脇に逸れる形で道を作る。道幅は約4メートル程。ゲート付近に矢印の看板を建てておく必要もある。他の村からも商人が来るようだからだ。


ここらでもういいか、と思ったところで切るのを止めて両方の斧をブラッドに渡した。そして枕之助を地面に置き、頭を乗せる。


「あとよろしく。おやすみ………ZZ」


「まだやることあんだろが寝坊助女ぁ!!」


すぱぁんっ!と、それはもう脳みそが飛び出てきそうなほど強い衝撃が頭を襲った。そんな毎度毎度叩かんでおくれよ。毛根が死滅したらどうしてくれる。


「切り株の処理がまだだろーが!あと地面に寝そべるな!きったねぇ!」


「えー?粗方切り倒したじゃん。ほぼ私一人で。残りの作業あんたらでやってよ」


「序盤やる気ゼロだった人が何言ってんのさー?作業終わるまで皆で分担するんだよミノリちゃん。この村で自己中ゴリ押しできると思わないでね」


血管を浮き上がらせて眉をつり上げたアレンと柔らかな笑顔なのにどこか棘が含まれているような冷めた眼差しを送るクラーク。


むくっと起き上がり、二人をじっと見つめた。


「…………はぁ、やればいーんでしょ」


二人の眼力に圧倒されて両手を上げて降参のポーズ。わかったわかった、わかりました。きちんと最後までやれってことね。


枕之助と自分の身体についた土を取っ払い、枕之助を片手で抱え、アレンに「ん」と掌を差し出す。


「切り株掘り起こすんでしょ。ツルハシかなんか持ってきて」



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