第32話「アフロよ……」

「はよーアレン。よく眠れたようで何より」


四つん這いになって私が殴ったところを擦り苦渋の表情を浮かべる彼の前にしゃがみ声をかける。


私の声に反応して顔を上げたアレンの顔に思わず笑いそうになった。


口から出た涎が鼻の穴に入ってる。しかも今気付いたけど、何そのボンバー頭。アフロかよ。


寝起きのアレンが実に面白いことになっていた。やばい笑える。


「……何笑ってんだよ」


腹を擦りながら、起きたばかりで現状が把握できてない脳みそを必死に起こそうとし、だが私がアレンを見て笑ったことに不機嫌顔で言い放ったアレンに更に笑いが込み上げてくる。


「アレンの寝起きボンバーが笑えるんだにゃ。ぷくく……っ」


猫耳女子が言ったそれにようやく頭が覚醒し、脳内処理が完了したアレンは眉間のシワを一気に増やした。


そしてくわっと口を開き、


「俺はボンバーじゃねぇ!!」


と叫んだ。


本人にとってはとても重要なことだったのだろう。普段のサラサラ真面目ヘアを気に入ってるのかな。うむ、君の拘りは分かった。


けどその頭はどう見てもボンバーさんだよアフロ、じゃなくてアレン。


「アレンは寝癖整えてきて。ミノリちゃんはちょっと来てくれるかしら?村の皆がミノリちゃんと話したがってるの。自己紹介も兼ねてお話しましょう」


アレンは急いで手櫛で髪を整えているが手櫛でどうにかなりそうにない。


猫耳女子と小人くんと一緒に肩を震わせて笑いを堪えていると、美少女人魚が人差し指をアレンに向けた。


するとアレンの頭上から滝のように水がどざーっと流れたではないか。突然の超常現象に一瞬思考が停止した。すぐ通常運転に戻ったけど。


おいここ私の部屋。水浸しになったじゃん。


「いきなり何してんだ!」


「乾かせば普段の髪型に戻るでしょ」


「そ、そうか。ありがとう」


うふふ、早く乾かしてね。風邪引いちゃうわ。と微笑む美少女人魚。


豪快だな。


「じゃあ二人ともクラークの家の前集合ね」


「待ってるからなー!」


「早く来てにゃー」


美少女人魚は颯爽と玄関に……ではなく、窓を開けてそこからふよふよとゆったりした動きで飛んでいった。それに続き小人くんを肩に乗せた猫耳女子も窓に足をかけて跳躍し、下へと落ちていった。


ここ、2階なんだけど。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る