第2話 2人の訪問
カーライルがエレクトラ嬢を伴って屋敷を訪ねてきたのは、ドルイドたちがこちらに戻ってから1ヶ月後のことだった。
メアリに彼らが来ることを伝えると慌てふためいたが、それは当然の反応と言えた。なにしろドルイドはずっと前から
メアリは常識にかけるドルイドの振る舞いを非難した。
「来週にお客様が来るなんて!
どうしてもっと早くに伝えてくれなかったの?お客様と言ってもただのお客様じゃないのよ!子爵の長子と伯爵令嬢がいらっしゃるのよ!
それ相応の準備というものがあるでしょう!
晩餐の用意とか…部屋やリネンの用意とか!
1週間じゃとても間に合わないわ!」
メアリの悲痛な叫びもドルイドには届かなかった。
「姉さん、彼らは仕事の依頼で来るのよ。
どうして私たちがもてなす必要があって?」
「でもしばらく滞在なさるのでしょう?」
「彼女の身体が良くなるまでわね。」
滞在が長くなるとわかっていながら、あくまで平静なドルイドにメアリは怒りを込めて告げた。
「ドリー、あなたって何もわかっていない。
貴族令嬢がどんな生き物なのかをね。」
「どこの誰だろうと私には関係ないわ。」
そう言ってドルイドは、いつもの
「正しかった」のは、エレクトラが間違いなくやっかいなたちの客人であったことで、「かもしれない」というのはつまり、彼女の抱える困難さがメアリの言うところの貴族令嬢に属するものというより、彼女の元々の性格にあったということだ。
「私、魔女の家になんて来たことないわ!
もっと不気味なところかと思っていたのだけど案外普通なのね。」
エレクトラが風見鴉屋敷にやってきて開口一番言ったことがこれだった。カーライルは咳払いをして彼女を
だがエレクトラは悪びれることなく、くすりと笑っただけだ。それを見てドルイドがカーライルに言った。
「大丈夫よ、カーライル。
私は気にしないわ。
クライアントがどれだけ礼儀がなっていないお嬢様でも、契約をすれば私は仕事をするわ。」
エレクトラはドルイドの言葉に目を丸くした。
「あなたって面白いわね。」
ドルイドはさして反応は返さず本題に入った。
「エレクトラ嬢にはしばらくここで生活をしてもらいます。そのネックレスについて調べるためです。そのネックレスを修理すればあなたの体調は安定するでしょう。」
「わかったわ。では外せばよいのね?」
エレクトラが首に手をかけたところで、ドルイドは制止のために立ち上がった。
「今ではありません!」
するとドルイドの反応を見たエレクトラが笑い出した。
「わかっているわ。
ちょっと驚かせたのよ。
あなた、舞踏会でもそうだったけど人形みたいに表情がないんですもの。
だけどそんな顔もできるのね。
安心したわ。」
ドルイドはカーライルと目を合わせる。
彼女との共同生活を想像すると自然と溜息がもれた。
「2人の部屋を案内いたしますわ。」
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