第20話 立ち込める雲

 ドルイドはメアリとアリスの協力を得て、マイラの身体を清め、ベッドの周囲に

魔方陣を書き、お香を焚いて、彼女の魂とゆかりの深い身体を守るためにできることは全て行った。

だが経験上、これが有効とは思えなかった。

一晩、彼女の身体を見守っていたが何も希望が湧くような変化は無かった。


「ねぇドリー、私が見ているからあなたも少し休みなさい。あまり魔術に自信はないけれど、彼女に何かあったら知らせるくらいは

私でもできるわ。」


ドルイドはマイラ嬢から一瞬も目を離さずに答えた。


「いいえ、これは私が受けた仕事よ。

最後まで責任を持つわ。」


それを聞いてメアリは一瞬寂しげな顔をしたが、すぐに決意の込めた声で「では私も最後まで付き合うわ。」と言ってドルイドの横に座った。だが何時間もそうしているとメアリも睡魔には勝てず、やはり座りながら眠り込んでしまった。

ドルイドはその間も少しの変化も見逃すまいとマイラ嬢の物質的、霊的変化を観察し続けたが何時間してもこれといった変化は見受けられなかった。

ついに空も白みかけてきた頃、ドルイドはおもむろに椅子から立ち上がり、何かに導かれるように部屋を後にした。

ドルイドは音を立てないように静かに階段を降り、玄関に立つとゆっくりと扉に手をかけ、使用人がそうするように来客を出迎える。ドルイドは無意識に瞼を震わせ、少し首を傾けた。


「あなたが雲を連れて来たのね。」


闇の同胞が優しく微笑む。


「太陽と言われなくてよかった。私は君の影だからね。」


レイモンドはゆっくりと屋敷に入っていった。

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