第82話 何かしら付いてきました? (14)

「まっ、魔王様……。生存者がいませんが……」


「えっ? うそ?」


「嘘では、ありません、本当です」


 俺達夫婦は、町のオジサン達というか、お爺さん、お婆さんの義勇兵を引き連れ──案内されて傭兵達が籠って悪さをしている砦に来たんだけどね。


 人気がないというか……あったのだろうと予測は付くんだけど。


 どう述べたらいいか?


 う~ん、何というか、とても悲惨で残虐的な光景が俺達の目の前に映し出されている。


「「「ううう……」」」


「「「おえ、おえ……」」」


 骨のオジサン達や俺達夫婦は、もう人ではないから平気な顔して見ているけれど。

 流石にまだ人でもある、町のシルバー義勇兵の人達には、かなりきついみたいで。バラバラに引き裂かれた死体を見ては嘔吐を始めた。


 そんなお爺さんとお婆さん達と、バラバラに引き裂かれた死体を俺は交互に見ながら。

「おいおい、これは、どうなっているんだ?」

 と、声を漏らし。その後は、一体誰がこんな事をしただろうか? と思案を始める。


 するとさ、うちのカミさんも俺と一緒の事を思ったらしくて。

「う~ん誰が、一体何の為に、ここまでしたのでしょうかね?」

 と、声を漏らした。


 まあ、取り敢えずは、戦闘も無く楽に砦も落とせたので良かったと思いながらも。あれでも、生存者や傭兵達をこんな姿にした、敵の兵等がいたらいけないので。骨のオジサン達に下知を飛ばす事にしたよ。


「お~い、骨のオジサン達──ちょっと悪いんだけど──」


「「「はい!」」」


 俺の呼び掛けに、しっかりとした返事が帰ると──三名程、骨のオジサン達が現れた。


「貴方達今から部下を引き連れて、この砦の探索──敵が入れば皆殺しにしなさい……。いい分かりましたか、貴方達?」


「「「はい、女王様! 頑張ります!」」」


「うん、宜しい……。褒美は、元領主の討伐が終われば、その館や街の女達を褒美として嫁に上げますから、頑張りなさい」


 えっ? うそ?


 俺自身も今のカミさんの発言を聞いて、思わず声が漏れそうにたった。

 でもさ、我慢したよ。出ないと日本時みたいになっても困るしね。

 で、でも、いいな……と、素直に内心思った。家のカミさんにばれないようにね。


「えっ? 嫁を頂けるのですか?」


「はい、当たり前です。貴方達も独り身では寂しいでしょう?」


「はい、それは、もう寂しいというか、昔と違って体力も精力も有り余っているので出来れば沢山の嫁が欲しいです」


 この骨のオヤジ、王の俺でさえ味わった事などない、ハーレム生活を異世界暮らしでしようと願望をしてきたよ。だからね、俺は本気でこいつらに殺意を覚えたから、後で裏の人気の無い所で殺傷処分してやろうと思うよ。


 ……でもね、家のカミさん、忠実な部下には割と軟いから。『ヨシヨシ』と、頷きながら。


「いいですよ、いいですよ、手柄を上げればいくらでも、褒美はあげますよ」


 骨のオジサン達に述べたもんだから、彼等は。


「「「ありがとう御座います! 女王陛下! 魔族の為に一生掛けて尽くします──」」」


 と、述べながら大喜びして、俺達夫婦の前から慌てて姿を消した。


「あなた、良かったですね」


 うちのカミさん、笑顔で俺に話し掛けてきたけど。


 俺は機嫌良い? それとも不機嫌?


 どちらなのか? と、他人に尋ねられたら。あっさりと不機嫌だと答えたくなる程悔しい。


 だって家臣達にはハーレム良いとの許可降りたのに、俺にはカミさんから許可が出なかった。


 だからちょっと不機嫌そうな口調で「えっ、何が?」と、答えたら。

「これから、魔族が沢山増えそうですから、良かったですね」

 と、カミさんから言葉が返ってきたよ。


 でもね、俺は、今のカミさんの話しを聞いて、ふと思ったのだけど。カミさんはやっぱり、俺と違って神様なんだと思ったよ。

 だって、俺は一国一城の主になれれば、それで十分って感じだけど。うちのカミさんの考え方は、少し違うみたい?


 この世界に自分が製作した精霊達を次の代へと子孫を残して繁栄 させて、新しい自分好みの世界を作りたいのかも知れないと思いだしたよ。

 何かあれば新しい魔族というか……。ヴァン神族が出来ると喜んでいる気がするし?

 余程神話の時代に、アースガルズに負けた事が悔しかったのだろうと思う……。


 それと、過去の事を触れられる、あんなにも切れた状態になるうちのカミさんだから。本当に酷い目に遇ったんだと思うんだ……。


 う~ん、そう考えると、俺はうちのカミさん一筋でいいかもと思ったよ。


 だって、どの世界合わせても美と豊穣の女神フレイヤと美で渡り合える女性は、片手の数字にも達しない訳だからね。


 まあ、そんな事を色々と考えていたら、反応のない俺にカミさんが。


「どうしたのですか、あなた? 嬉しくはないのですか?」

 と、尋ねてきたから。

「うぅん、嬉しいよ」と、言葉を返したよ。


 それに俺は、カミさんの夢に乗っかって、助けてやれたらな、と思ったよ。


 本当に、本当だよ、信じて……。


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