第75話 何かしら付いてきました? (7)

「先程わたくしの事をと述べた者前に出てきなさい!」


「「「…………」」」


「……何も返答がないようですね? ……う~ん、まあ、いいでしょう、貴方達──もう一度だけ尋ねます。これでもしも返答がなければ、ここに居る者と町の者達を含め皆殺しにしますから」


『うゎあ、ああああああっ! 』


 とうとう、言い出したよ。うちのカミさん、『ニヤニヤ』と口の端を釣り上げて、薄ら笑みまで浮かべ始めたよ。完全に鬼婆仕様の女魔王さまだ。

 だから俺はそんなカミさんの様子を見てね

「えぇ、えええええええええええええええええええええええええええええええええっ、うっ、うそ──!」

 と、思わず大きな声まで出してしまった。

 だって犠牲になるのは、ここにいるオジサン達だけだと、俺は思っていたからね。

 でもね、うちのカミさんの考え方は、そんなお慈悲のある考え方では無くて、町の人達を含めて皆で責任を取って──神の為に人柱になれといった感じなのだ。

 だから直ぐにこんなお慈悲の無い言葉を述べてきたよ。


「嘘ではありませんよ、あなた──わたくしは本気ですよ」

「そ、そうなんだ?」

「はい! 神を罵倒するだけでも万死値するのに。神に向かって嘘を付いて誤魔化すなど笑止千万です! ……だから町の者達も含め皆で責任を取らせます!」


 まあ、こんな感じで憤怒して大剣幕しているから、本当にオジサン達……と、いうか、町の人達、本当に悪いと思うが。たちの悪い女神様に睨まれた思って諦めてくれと、俺は『スマン!』と思いながら、心の中で両手を合わせ──良い冥府への旅立ちを願った。


 特にうちのカミさんは、同じ闇どうしで、豊穣神でもある冥界の王ハデスとも仲がいいらしいから。後で良い旅が出来るようにと、俺がお願いをしてあげるからね。

 俺はそんな事を考えながら、カミさんを横目でチラ見をしていた。


「あっ、あの、女神様……」


「ん? 何です?」


「あの……先程女神さまに、"お嬢さん" と無礼を述べたの自分なのですが……」


 あっ? とうとう、出てきたよ、うちのカミさんに無礼を述べたオジサンが。でもね、『お嬢さん』と述べた言葉って無礼になるのかな?


 だってオバサンよりはいいとは思うんだけど?


 俺もさ、述べたらうちのカミさんに殺されそうで、怖くてモノ申せないけれど。フレイヤって、神話の時代から生きている訳だから、おばあさん以上の年齢だよね?


 そう思うとさ、俺は、と呼ばれるよりもと呼ばれる方が良いとは思うけれど?


 でもさ、うちのカミさんを横目で見てみると、相変わらず鬼婆のような顔をしているから、そうはいかないみたい……


「……そうですか……。では、死ね──」


〈ピュ──ン!〉


〈 カーン!〉


「えっ?」


 あれ? いきなり、カミさんの『死ね!』の言葉の後に、何か目に見えない小さな物が、空を切る音が聞こえたような気がするよ──それにその後には、金属に物が弾けるような音もしたような気もするけれど……


 う~ん……。多分気のせいかな?


「うっ、うぐぅ、ああああああああああああああああああっ……」


「「「うわっ!」」」


「えっ?」と、思わず声を漏らした俺だけど。うちのカミさんを愚弄したと因縁を付けられた町のオジサン。いきなりうめき声を漏らしながらその場に倒れこんだよ。


 だから俺を含めて残りの町のオジサン達も思わず声を声を漏らしてしまった。急に倒れ込むからね。


 するとさ、うちのカミさん、倒れてるいる町のオジサンを見ると。又『フン!』と、鼻息を荒立てて──その後は、残りの町のオジサン達を冷たい紅玉の瞳で見渡したんだよ。


 俺はね、そんなカミさんの様子を見て、これ以上町の人達に、酷い事をしなければいいのに、と思いながら見ていたよ。


 本当に残りの町のオジサン達、真っ青な顔して、本当に震えあがっているからね。それこそさ、先程も述べたけれど、見ているだけ痛々しいからね。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る