第72話 何かしら付いてきました? (4)

「じゃ、あなた、わたしに"あの人"の元にまた戻って、性奴隷におもちゃになれと申すのですか! えぇ、ええええええっ! あぁ、ああああああっ! はぁ、ああああああっ! どうなんですかぁ、ああああああっ!」


 まあ、家のカミさんに注意をしたら。こんな感じで逆切れしてきたよ。特にさ、口には出さないけれど。俺自身が一番気にしてる、主神オーディンあのジジイの事を述べてきたんだよ。だからさ、本当に頭にくるじゃない。だから売り言葉に買い言葉だよ。


「はぁ、ああああああっ! お前、ええ加減にせぇよ。わりゃ、そんなに主神オーディンあのくそジジイの、"なに"がいいんか"なに"が……。あああ、もう分かった──別れたるけぇ、はよう、出ていけぇ、ええええええっ!わりゃ、ああああああっ! ……そして主神オーディンあのくのジジイの所に行くんなら、行けぇやぁ、ああああああっ! もう、別れちゃるけぇ、とっとと、出ていけぇ、ええええええっ!」


 くそ……。直ぐに主神オーディンあのジジイの事を"あの人"と、呼びやがるんだよ、うちのカミさんは……。そんな言葉を聞いたらね、いくらフレイヤにしてみたら哀しい過去だと聞いていても。お前本当は、俺なんかよりも、主神オーディンあのジジイの方がいいんじゃ、ねえのか?

 と、俺自身も嫉妬心もあるから、錯覚して思うじゃない……。


 ねえ、こればかりは、俺が怒るのも仕方がないよね?


『"あの人" "あの人"って!』女性が特別な男性を呼ぶ時の言い方だと俺も思うから……。


「いや、いや、出ていきません、別れません、絶対にあなたから離れません……あんな男は嫌です……許してください、あなた……それにあなたは、わたくしと離婚する事は不可能ですから」


 するとさ、こんな感じで泣き始めたよ。許してくださいと。今度はマゾモードに突入始めた……。と、思っていたら、両手で涙を拭きながら、今度は訳分からない事を述べ始めた。


 だから俺は、気になるから。「はぁ、お前、どういう意味やぁ?」と、尋ねたんだよね。


「……えええ、天界のアースガルズに行けば……。女神フリッグの所にわたくし達夫婦の、戸籍と住民票──それと結婚届がちゃんと保管してありますから。何度逃げても駄目ですよ。わたくしが拇印押すまでは、離婚も成立しませんからね……」


 うちにカミさん、今度はね。わぞとらしく、両手で涙を拭っているよ。それにさ、時々指の間から俺の顔色を見て、様子を確認までしている。


 そんなに、俺が怒るのが嫌なら、言うなよ、"あの人" と、主神オーディンあのくそジジイの事を。俺はその言葉を聞くだけで本当に腹が立つし、煮えくり返るから。

 それにね、うちのカミさん……直ぐに"あの人"と呼び合うという事は余程、主神オーディンあのくそジジイに、摺り込まれたというか、可愛がられた…と、いうか、面倒を見てもらったのだろうと思うと。俺は本当に悔しいし……。涙がこぼれてきそうだよ。


 もう、どう述べたらいいかな……。


 でもさ、俺自身、それも全部含めてフレイヤを愛するし、守ると決めたから。

 俺自身の頭を左右に振って気を取り直して、カミさんに話し掛け始めた。


「あのな、じゃ、フレイヤ、言うぞ?」

「はっ、はい、あなた……」

「もう、二度というなよ?」

「えっ? 何をですか?」

「な、"何を" じゃないだろ、"何"をじゃ、主神オーディンあのくそジジイの事を"あの人"と呼ぶな、"あの人"と……俺はお前のその台詞を聞く度に本当に頭にくるし、主神オーディンあのくそジジイと、刺し違えでもいいから殺したくなるぐらい悔しい……。だから俺の事を本当に想うのなら。二度と"あの人"と口にしないでくれ、お願いだから……」


 まあ、こんな感じでね、最初は憤怒しながら述べたけど。後は優しく、うちのカミさんに述べたよ。


「ううう……もう二度と口にしませんから許してください……それに、わたくしが愛しているのは、あなただけですから……」


 その後はね、又、凝りもせずに二人で抱き合って唇を重ねて。愛を確かめあった。まあ、新婚みたいなモノだから、みなさん許しておくれよ。直ぐにラブラブモードになるのは、本当に悪いんだけど……。


 と、思っていたら、骨のオジサン達が町の有力者達を連れてきたよ。

 だから俺も仕方がないかと諦めて、悪事に手を染める魔王になる覚悟を決めて、カミさんの行動を横で見ていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る