第33話 夫婦喧嘩になるのかな? (12)

 何とも言えない、金属音にも良く似た音が聞こえた思ったら。

「きゃ──」と、バカ女神から声が聞こえた。

 すると、俺の腹部と腰の痛みが、和らいだ──今だと、思った俺は、慌てて後ろへと下がり。そのまま背の羽を使用して空へと羽ばたいた。


 とにかく、この場から逃げないと、あのクソ女神に殺されてしまう。だから一気に加速を始める。


 それに、羽ばたきながら、作戦が上手くいったと、我ながら自画自賛したくなるよ。

 実際は男の俺としては本意ではないけれど。女性……美の女神フレイヤは、絶対に顔に殴り掛かれば、顔をガードする為に俺の腰に回してる、両手離すと思ったんだ。

 だから殴り掛かり手が離れ隙が出来たら、空へと羽ばたいて一気に逃げるといった作戦だったんだけど。上手くいったから喜んでいる。


 どうせ、俺は空へと羽ばたいて、移動する事が可能だけど、あのバカ女神は、大空を飛べないと俺は思うから。


 あああ……やっと、解放されたし、助かったよ……


「ううう……くそ……あの小童め、たかが生まれ代わりの分際で、ワラワの大事な顔を本気で殴りつけてきたな……もう、許さぬ……必ず捕まえて、殴り殺してくれよう……」


〈シュ──ッ!〉


「……ん? あっ」


「死ね──」


『ドガン──! ドゴン──!』


「うぎゃ、ああああああああああああっ!」


『ガ──ン!』


〈ドガン!〉


「うううううう……いっ、いてててててて……」


 どうもさ、一瞬の出来事過ぎて、俺は何が起きたかいまいち理解出来ないでいたけれど。

 よくよく考えて整理をしてみたら、あのバカ女神飛べれたんだよ。飛べれ……それも俺よりも早くね……


 それでさ、俺の目の前に現れると、直ぐにお返しの如く、顔を殴られ、その後は腹部に蹴りを入れられてこの始末だよ。


 大空から一直線に地面に落ちて叩き付けられて……


 だからね、痛いわ、体中……良く生きてるのが不思議なくらい。それにさ、体が上手く動かないんだよ。フレイヤに殴られる瞬間ガードしようと手を上げようとしたら手が上がらなかったんだよね。


 どうもね、俺が考えているよりも、体中の骨ヒビとか入っているのかも知れない……


 それにさ、フレイヤのも、自分自身が考えているよりも、効いているのかも知れないね。


 と、なると、本当にヤバイな、このままだと、あのバカ女神の述べる通り、俺は奴に殴り殺されそうだよ。


 さてさて、どうするかな?


 このまま地面で寝転んでいる訳にいかないし、あのバカ女神からどう逃げ伸びるかを本気で思案しないといけないよ。


「あ・な・たぁ~、もう力尽きたの~?」


 上空から、あの女の声がするよ、それも当てつけがましくね。本人は、これっぽっちも思っていない癖に、俺の事を『あ・な・た』と、バカにしたような、口調で呼びやがるんだ。


「あああ、お前が、ええ歳して、ガキ相手に向きになってくれるから。体中が痛くて動かないんだよ。オ・バ・サ・ン……」


 ちょっと俺、力尽掛けているから、先程迄みたいに威勢よく、広島弁は出ないけれど。女神フレイヤにオバサンと暴言を吐いてやったよ。


「はぁ~、今何ていったの、あ・な・た? わたくし耳が悪いから良く聞こえなかったの、もう一度、言ってくれるかな、あ・な・た」


 ワザとらしい仕草で自身の大きな笹耳に手を当てながら。バカ女神は尋ねてきた──体が動かなくて、地面で転がっている。俺をバカにしたような上から目線で述べてくるよ。


 だからそんな生意気な態度の女を見ると──流石に俺自身も歯がゆいじゃん?


 まあ、そんな訳だから。女神フレイヤに対して、俺はまた懲りもせずに悪態を付いてやったよ。


「はぁ~、オ・バ・サ・ン……歳だから耳が聞こえないって? それに俺の事生まれ代わりのクソガキと言ってくれた癖に調子良く……それも少しも思ってもいない癖に、と、気安く呼ぶなよ。この誰とでも股を開いて寝る淫乱女が……お前みたいなビッチに、あ・な・た・と調子良く呼ばれたくないは、オバサン……」


 まあ、先程みたいに、こんな感じで、女神フレイヤに悪態を付いて暴言を吐いたから。この後は皆さんの予想通り、凄い事になってしまったよ。


 俺死んでしまうかも知れないね?


「はぁ、ああああああああああああっ! 誰が誰にでも股を開くですて……」

 まあ、ここまで言い掛けた所で、急に下を向き顔が見えなくなったよ。

 う~ん、少しばかり酷い事を述べたかな、フレイヤに?

 ビッチとか、男なら誰にでも股を開くとか、思いっきり悪態を付いてやったからな、あのバカ女神に……


「な、何も、何も知らない癖に……」


「ん? なに?」と、俺は直ぐに思ったよ。だってね、フレイヤが 何を述べているのか全然解らないんだよ?


 だってさ、声は震えているし……バカ女神の体自体も震えているから、俺は様子を見てて何事が起きた? と、思ったぐらいだから。


「貴様ー! 貴様ー! 貴様──貴様に……何が分かると言うのだ……生まれ変わり風情の分際で……あのひとなら、絶対にこんな酷い事をわたくしに、言わない……」


「えっ? な、何が?」

 俺は思わず、この言葉が出たよ……フレイヤのあのひとと、いうのは、前世の俺の事だよね?


 だから前世の俺が、何を述べないんだろうか? と、瞬時に考えたよ。

『えっ、ど、どれ、どれ?』と、いった感じかな。それにさ、遠目からだけど、彼女の体が震えているのは、どうも泣いているみたいだね……


 となると、俺って女性相手に向きになって、彼女が落胆して泣いてしまう程、酷い暴言を吐いてしまったんだと後悔をしたよ。


 でもさ、この後悔なんて、直ぐにしなくなったよ。女神がさ、顔を上げたら、俺に『私泣かないから……(エヘ♪)』と、自分自身の涙を指で拭きながら、渾身の笑顔をくれる……と、かじゃなくてね。俺が心底震えるような、形相で睨んできたよ。泣いているところは一緒だけど。


 その後は先程も述べたけど。災厄が俺の身に降り掛かってきたよ。

 まあ、仕方がないかな?

 女神というか、神を愚弄した俺だから、天罰が落雷の如く降り注いできたよ。


「うううううう……し、死ねー! 死ねー! 死ね──神に暴言を吐いて罵倒したのだから、貴様の命で償え──この小童が──」


〈ピカ──〉


 女神フレイヤが俺にそう述べてくると、いきなりさ、彼女の手は青白く光り、球を成形し始める──その後は奴の俺に対しての「死ねー! 死ねー! 死ねー!」との言葉で合図の様に。俺に降り注いできた。


『ドガン! ドガン! ドガン──!』


「うぎゃ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああっ! いっ、痛い、痛い、痛い、痛いよ──」


 俺はね、体を丸めてガードするぐらいしか出来ないし。とにかく大きな声で苦痛の言葉を叫んだよ──叫ぶだけ無駄だと分かっていても、何の抵抗も出来ないし。俺自身の体も痛くて痛くて仕方がないからね。


 でもさ、そんな感じで、体を丸め痛がっている俺を。フレイヤは息の根を止めてやろうと容赦なしに。「死ねー! 死ねー! 死ねー!」の言葉を吐きながら手加減等せずに青白い火の玉のような、魔弾砲を打ち続けているから。


『ドガン! ドガン! ドガン!』


 俺は多分ここで先程、皆に述べた通り死ぬんだと思うよ。そう考えるとさ、もう少し色々と楽しんでいれば良かったと。後悔もするし、最沢山、親孝行をしてれば良かったと後悔ばかりするよ。 



と、なると、俺の頭の浮かぶのは、父さん、母さんの顔が浮かぶので。自然と俺のの口から漏れる悲痛な言葉は、「父さん……母さん……俺、体中が痛くて、痛くて、死にそうだよ……た、助けてよ、お願いだから……」としか述べる事ができないよ。


〈シュ──〉


『ドゴッ……』


 ……ん? なに?


 俺の体に何かが、高速で降りてきて圧し掛かってきた?


 あれ、何か鈍い音が、俺の体から聞こえてきたような気がするよ?


 と、思うとさ、体から激痛が走ってきた──それもさ、今迄俺が味わった事もないような痛みなんだ。


 だから俺は、激痛に我慢出来なくなり悲痛の奇声を上げてしまったよ。こんな感じでね。


「うぎゃ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」


 と、しか述て叫ぶ事しか出来ない……だ、だって、もう痛いとか、そういった問題では無くて、俺の下半身に感覚がないから。俺の体ってもしかすると半分に千切れて、裂けたのかも知れないよ?


 う~ん、だって痛さの余り、のた打ち回って暴れように体も動かないし。俺の下半身の位置にはどう見ても、人がたたずんでいるようだから。


 どうも、あの高さから、女神フレイヤが高速落下で移動──俺の腹部の位置に落下してきて、体が速度と重力に耐え切れずに、半分に裂けたようだよ。


 普通の人ならば今の一撃で即死で楽に成れたのだと思うけれど、俺が名付けた魔王の容姿のお陰なのだろうか?


 痛くて痛くて死にそうなのに、死んでも死に切れないというか、まだ虫の息で生きているようだよ。


 だから俺は、本当に苦しよ。だから女神……ではなくて、魔王フレイヤに一思いに殺してくれと述べたいくらいだよね。


「うううううう……父さん、母さん、助けてよ……俺、痛くて、痛くて、死にそうだよ……ううう……」


 もうね、これしか、俺の口から出ないよ。両親に対して、俺を助けにきて欲しいとの嘆願の言葉しかでない……本当に痛くて死にそうだから。


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