第74話 複雑な気持ち
起きたら見たことのない部屋…じゃない。一回来たことあったな。ここの世界じゃなくて
※私の方のコラボのお話だよ!byリン
…今勾玉から声が…気のせいか
「あら、起きたのね?私のことは分かる?」
隣にいたのはキツネのフレンズ。綺麗な銀色のピンと立った耳、フワフワの尻尾。そしてしっかり者の雰囲気を醸し出す子
「ギンギツネさんですよね。お久しぶりです。ここは旅館であってますか?」
「ええ、その客室よ。寒くはないかしら?」
「そうですね…。はい、大丈夫です」
部屋にあるエアコンが稼働している音がする。フレンズに使えるのか?という疑問が浮かびそうだが、彼女はオイナリサマの従者、使えないことはないだろう。得意気にリモコンを操作している。部屋にいた理由はそれか
「ここまでどうやって来たかは覚えてる?」
「ヤタガラスさんが連れてきてくれた…ですよね?」
「記憶は飛んでないようね。良かったわ」
記憶が飛んでない?何でそんな事を言ったんだ?ちゃんとここに来るまでの事は覚えていますよ?
雪山に入って、セルリアンと戦って、洞穴で吹雪が止むのをまっ……て……
「キングコブラさんは…!?彼女は無事ですか!?」
「落ち着いて。彼女も無事よ。今は別の部屋で寝ているわ」
無事…けど安心は出来ない。凍傷になっていないだろうか?慣れない場所だし寒さと合わせてダウンしてしまったのか?風邪ひいたりしてないか?
「そんな深刻な顔をしなくても大丈夫よ。さっきオイナリサマとボスに見てもらったけど特になんともなかったし。大事をとって寝ているだけだからね」
「そう…ですか…。良かった…」
「今温かいものを持ってくるから、あまり動かないで待ってて」
ギンギツネさんが部屋から出てって数分後、キュウビキツネさんが入ってきた。ギンギツネさんは温泉の脱衣場を掃除してくるとのこと。どうやら彼女はバトンタッチが使えるようだ
「無事で良かったわ。体調はどう?」
「少しダルい…というか、力が上手く入らないんです」
身体中がしびれている感じだ。何とか上半身を起こし、動作を確認する。指や腕を動かそうとすると少し時間がかかりもどかしい…。彼女よりも俺の方が寒さに参っていた…ということなのか?なんにせよ、また心配をかけてしまった…
「すみません。何度も何度も…」
「謝る必要はないわよ。何があったかはキングコブラから聞いたしね。よく彼女を守ったわ。成長している証よ?」
偉い偉い、と言うかのように頭を撫でてくるキュウビキツネさん。あの…俺はもう4歳ではないんですよ?あの頃と同じような対応はちょっと…
「私達からしたらまだまだ子供よ。手のかかる弟みたいなものでもあるし」
まぁ~た心読まれてんよ…。神獣だから読めそうではあるし、実際そうなんだけどさ。てかやめる気配ないんだけど、恥ずかしいからやめてくれ
「セルリアンについても聞いていますか?」←頭を動かしてみる
「積もった雪に紛れていた個体がいたのよね?」←追尾+やめない
「…それなんですけど、俺の見立てでは、もう一体竜のセルリアンがいるはずです」←諦めた
本にあった氷結の竜は三体並んでいた。オイナリサマが一体、俺が一体倒したから、後一体もどこかにいると考えた。それを聞いたキュウビキツネさんは、ヤタガラスさんに調査、討伐の依頼をした
ヤタガラス vs
さて、ギンギツネさんは温かいものを持ってくると言い、バトンタッチされたキュウビキツネさんはそれっぽいものをお盆に乗せて持ってきていた。蓋を取ると湯気が立っていい匂いが部屋に広がる…
「お粥、作ってきたわ。久しぶりに作ったから、口に合えばいいけど」
中身は卵とネギの入ったお粥。トロトロになった卵がご飯を包んで輝いているようにも見える。そこにアクセントのネギ。おいしくない訳がない
「隠し味はサンドスター。よく味わってね」
撤回したくなった
「入ってるけど味見はちゃんとしたわよ?オイナリも美味しいと言ってたし。それにジャパリまんにもサンドスターは含まれているから、それと同じようなものと考えて」
「なら、ジャパリまんでもいいのでは?」
「その体調で食べるの?」
…確かに消化効率とか体を暖めるのを考えたらお粥の方がいいか。室温は良くても体温がまだ低いからね
彼女はスプーンで掬って、フーッ…フーッ…と少し冷ますように息を吹き掛けている
…あー…この流れは…
「ほら、口を開けなさい」
「いや、自分で食べられますから…」
「ならこのスプーンを持って食べてみて。出来たらやめてあげる」
なんで試験風なのか、これがわからない。この俺を嘗めすぎでは?こんなん楽勝ですよ
「…むっ?なかなか…っ」←手がプルップルしてる
「……」←口に手を当てた
「ぐっ…むぅ…」←口にスプーン入れた
「……クッ」←何かを堪えてる
「ゴクン…ふぅ~…。どうですか?」←ドヤ顔
「プッ!」
「なんで吹き出したんですか!?」
「だって『やってやったぜ』って言いたげな顔してるんだもの!あー可笑しい!」
「そんな笑うことですか今の!?」
笑いのツボがよく分からない。俺はただお粥を一口食べただけなのに。この空気をぶっ壊す為に、俺は急いでお粥を食べきった(そこまで速くなかったけど)
そんな俺の姿を、キュウビキツネさんはずっと見ていた。まるで、遠い過去を見ているような眼だった
*
「さて、動けそう?」
さっきのやり取りをなかったことにしようとしてるけど、残念ながら消せませんからね?キリッとしてるけど笑い転げたあの姿は忘れない
「何とか動けそうですね。けものプラズムはないですけど」
キュウビキツネさん曰く、倒れたのは、野生解放によってサンドスターが限界ギリギリまで無くなったことが原因だそうだ。遊園地で動けなくなった時とほぼ同じ感じか。やはりジャパリまんは必需品…
「あの子も今頃は起きていると思うから、会いに行ってきなさい。この部屋にいるわ。安心させてあげないとね?」
といって旅館の見取り図を渡してくれた。無理はしないでくれ、と言われたのにこれだからね。直ぐに会いに行かないと
「そ・れ・に…」
キュウビキツネさんがニヤリとした顔を耳元まで近づけてきた。何を言うつもりだ…?
「デートはまだ終わってないでしょ?旅館を二人で廻るのも、中々乙なものよ?」
「なっ…!?」
「私は片付けがあるから、無理はしないようにね?それじゃあ頑張ってね♪」
スタスタとお盆を持って行ってしまう。待って頑張れって何をだよ!?あの人、まさかこれを言いたいが為に誘ってこいって言ったのか!?あり得ない、とは言えないのは彼女らしいというかなんというか…
なんかもう色々な意味で行きづらくなったじゃないか…。どうしてくれるんだ、全く…
取り敢えず、洞穴の出来事は一旦考えないようにして行こう。それに安心してくれるならそれで良し。そうじゃなかったら…また正座かなぁ…
*
「キングコブラさ~ん?いますか~?」
言われた部屋に来たので呼ぶが返事がない。というかいる気配がない。入りますよ~?と声をかけて入るが案の定いなかった
「何処に行ったんだろ…?」
旅館の中を歩き回って探しているんだけど見つからない。厨房、別の部屋、受付…。こっちもあっちもフラフラしてるからすれ違いが起きてるのかな?
と思ったら、お土産屋の所にチラリと見慣れた尻尾を見かけた
「キングコブラさん?」
ビクッ!っと体が飛んでいきそうな、普段の彼女からは見れないような反応。最初に会った時のお嬢様みたいで懐かしい…
「あ、ああ、コウか。もう大丈夫なのか?」
「ええ、歩く分には……なんでこっち向かないんですか?」
彼女は棚にある湯飲みやキツネのぬいぐるみを取っては戻す、を繰り返している。何だか落ち着かない様子だ
「貴女は大丈夫ですか?」
「わ、私は大丈夫だ!すこぶる元気だぞ!」
「そうですか、良かった。なら一緒にゲームでも…」
「あっ!いや、その、い、今は!一人にしてくれ!」
「えっ?あっ…」
スタタタタ…!っと、まるで俺から逃げるように去っていったキングコブラさん。意外と速いんですね…じゃない、何で?
ポツンとその場に取り残され、時が止まった感覚になる。数秒遅れて思考が追いついてきた。追いついて、出た言葉はこれだった
「もしかして…俺、嫌われた…?」
─
なんだこれは…!?おかしい、なんであいつのことを見れない…!?恥ずかしい!?照れている!?そんなことあるはずが…!
「落ち着け…落ち着け…」
コウの声を聞いた途端、心臓の鼓動が速くなった。緊張して上手く返事が出来なかった。洞穴じゃ平気だったのに…そうだ、今まで通りにすればいいんだ。今まではもっと自然に…
ホワンホワン…←コウとの思い出(出会いから全て)を振り返ってます
「っ~~~~~!?///」←カオマッカ
しっ、失敗した…!思い返すと凄く恥ずかしい!なんて大胆な事をしていたんだ私は…!あいつもなんで平気で変な台詞言うんだ…!いや格好よかったし頼もしかったのは事実だし凄く嬉しかったのだが…!
こ、これが恋というものなのか!?あいつのことを考えると心がかき乱される…!自覚した途端これか…!折角誘ってくれたのに、逃げるように去ってしまった…凄い罪悪感が…
今から戻るか…?い、いやまだ駄目だ…今会うと…なんか駄目だ!←思考崩壊
と、取り敢えず落ち着けるような場所へ…!
「あれ?もしかしてキングコブラさん?」
追いつかれた!?…って、コウじゃなくて…
「ジェーン?久しぶりだな。いつからここに?」
「お久しぶりです。先程ついたんですよ。私は旅館内を少し見て回ってまして、これから温泉に入りに行くんです」
どうやらペパプも来てたようだ。『ライブお疲れ様でしたの会』を開き、温泉に来たようだ。誰だそんなネーミングをつけたのは…。慰安旅行でいいんじゃないか?…使い方あってるよな?
「貴女は何故ここに?じゃんぐるちほーからここは遠いですし、寒いのは苦手だと思っていましたが」
「あっ、その…ヤマタノオロチとの修行をここでしていたのでな…」
「成る程…貴女らしいですね」
咄嗟に嘘をついてしまった…。何故かコウとの事を話すのは不味いと思ったんだ。しかし疑わないのだな。バレたらその時に謝ろう…
「そうだ!それなら貴女も一緒に入りませんか?」
「わっ、私も?」
「はい、お話したいこともありますし。折角ですのでどうですか?」
ペパプと…温泉に?いや、好都合か。温泉に入ればあいつは来ないだろうから
それに…私も、話したいことがあるしな
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