第23話 グッドタイミング
※時間がかなり戻るよ!二話と同じくらいかな
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ぺぱぷ達は目的地のジャパリカフェに来ていた。じゃんぐるちほーのロープウェイをこぎ、高山に登ったのだが
「ゼィ…ゼィ…あ、足が…」
「…お疲れ様でござる、ツキノワ殿」
「お疲れ様。ごめんなさいね…」
「だ、大丈夫…」
無理矢理8人乗せて登ったため、流石のツキノワグマでもきつかった。これはトレーニングだと自分に言い聞かせて最後までやりきった
「こんにちはー!」
「ふわああぁ!いらっしゃぁい!よぉこそぉ↑ジャパリカフェへ~!どうぞどうぞ!ゆっぐりしてってぇ!」
カフェのドアを開けて挨拶をすると、アルパカがテンションを上げて受付をしてきた。ここはトリの子以外はあまり来ないため、団体様は貴重なお客さんなのだ
「なんにぃのむぅ?」
「人数分の紅茶と…あと、水もちょうだい」
「わかったよ~」
紅茶を入れている間に、テーブルに置いてあるジャパリまんに手をつける一行。ここで速いのはやはりフルル…よりもツキノワグマのほうが速かった。水で頬張ったジャパリまんを流し込む
「あぁ~生き返るわ~」
「帰りは拙者がこぐでござるよ」
「ちょっと心配かな~」
「そこは信じてくだされ!」
ツキノワグマでこの状態である。カメレオンだと途中までしか持たないかもしれない
「できたよ~。さぁどうぞぉ~!」
「紅茶も久しぶりですね。いただきます」
そんなことを話していると、アルパカが紅茶を持ってきた。すっかり慣れたのか入れ方が様になってきていた
まずは香りを楽しみ、それぞれ口につける。温かくてホッとする味が広がっていった
「やっぱり美味しいわ。落ち着く…」
「よかった~!おかわりあるからねぇ~」
*
久々にきた感想や世間話をしていると、時間なんてあっという間に過ぎていく
「さて、この後はどうしますか?」
カフェに息抜きにきた彼女達は、次の目的地の話をしていた
「そうね…おもいっきり練習が出来るところがいいんじゃないかしら?」
「なら、やっぱみずべのステージか?」
「…いや」
コウテイが呟く。なにか思いついたらしい
「遊園地に行ってみないか?いつもとは違う場所で練習するのもいいと思うんだが」
遊園地にはステージがあり、周りには建物や色々な遊具がある。音の反響や客席からの眺めがみずべちほーのステージと違うため、普段通りに出来るかのチェックも兼ねての提案だった
しかし、この提案には問題があった
「いい案だと思うけど、そこまで行くのは大丈夫かしら?」
「今はカメレオンとツキノワグマがいてくれるけどさ~。遊園地まではきついだろ?」
「へいげんの反対ですからね…」
そう、セルリアンである。護衛がいたためここまで安全に来れたが、出会わなかった訳ではない。小さいものは彼女達でも倒せるが、少し大きめのはツキノワグマとカメレオンのコンボで倒してきたため、不安が残っていた
「そこで!私に作戦があります!」
勢いよく発言をしたのはマーゲイ。自信たっぷりの顔をしている
「作戦…?」
「そうです!私の声真似でセルリアンの動きを止めている間に、みなさんに逃げてもらうんです!」
「そのあとマーゲイはどうするの~?」
「木を登ったり走ったりしながら動きを止めていけばいけると思うんですよ!」
実際、マーゲイの声真似で超大型セルリアンの動きを止めたことがある。メンバーも見ていたため、納得は出来たのだが…
「大丈夫ですか?のどに負担がかかるのでは?」
「私は歌う訳ではないですから、多少は平気ですよ」
「しかしだな…」
そう、これは一種の囮作戦である。問題は声が出なくなってしまった場合。地上ならマーゲイの方が逃げるのは速いだろうが、心配なことに変わりはない
「なら、アルパカの紅茶を持っていったらどうかしら?」
「のどの調子が良くなるんですけど!」
会話に入ってきたのは、ジャパリカフェの常連のトキとショウジョウトキ。二人は歌う前にアルパカが入れる紅茶を飲むことにしている。飲むことでいつもよりうまく歌えるのだ
「それはいいけど、どうやって持ってくんだ?」
「これよ。『水筒』というらしいわ」
トキがカウンターから持ってきたのは、蓋がコップがわりになるタイプの水筒だった。見た目こそ普通だが、サンドスターを込めることで数日経っても大丈夫。保温機能もバッチリだ
「あぁ~それね。よかったら使って~」
「いいの?」
「どうぞぉ。どうせ使わねぇから、役に立つなら使ってくれたほうがいいよぉ~」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
ついでにジャパリまんと袋をもらい、準備は万端。アルパカ、トキ、ショウジョウトキに挨拶をして、彼女達はロープウェイを下る
*
「こ…これは…きついでごさるな…」
「途中で代わってもよかったのに…」
「せ…拙者だって、やれば出来るのでござるよ…」
帰りはカメレオンがこいでいた。最後までやり遂げてみせるという鉄の意思を持っていたが、交代した方が速くついていたのは内緒だ
「二人ともありがとう。ライブ楽しみにしていてくれ」
「みんなで行くからね。でも大丈夫?ここから遊園地まで遠いけど」
「大丈夫よ。体力作りもアイドルの仕事だから。それに無理はしないわ」
「ならいいけど…私達は少し経ってからへいげんに戻るね」
「はい!ここまで本当にありがとうございました!」
二人にお礼を言って、ぺぱぷ一行は遊園地を目指す
━━━━━━
※ここから現在になるよ!
「にしても遠かったな~。もう少し休んでもいいんじゃないか?」
「ダメよ!ここに来るまで何もしてないんだから!ビシバシやるわよ!」
「でもまだ疲れが残ってるんだけどな~」
「そうだな、プリンセス、もう少し休もう」
「コウテイ…?」
コウテイがプリンセスを制した。コウテイにはプリンセスが焦っているようにも見え、このままだとイワビーと言い争いにもなりそうだったため先手を打った
「それに練習する場所をゆっくり探すのもいいんじゃないか?急がなくてもいいじゃないか」
「…そうね。ごめんなさい、焦ってたわ」
「焦る気持ちもわかる。途中、セルリアンに襲われたのも理由だろう?」
長距離を歩いていれば、セルリアンに会う確率は高くなる。実際何度も出会っている。ここにいる間もセルリアンが来ないとは限らない。プリンセスの焦りもここからきていた
「でもよかったですね。ブラックジャガーさんが一緒に来てくれて助かりました」
「ファンとして当然のことをしたまでだ」
途中で出会ったブラックジャガーがここまで護衛としてついてきてくれた。ぺぱぷの大ファンであったため、彼女達といられることに内心穏やかではなかったが、冷静に対応してくれた
「でも、おかげでみなさん怪我なく来れましたし、マーゲイさんの喉も問題なさそうですしよかったです」
「ありがとね~」
「セルリアンが来ても俺に任せておけ。マーゲイ、サポート頼むぞ(お礼言われた微笑んでくれた可愛すぎヤバイうれしい)」
「ええ、お願いね(必死に隠してるわね…わかるわその気持ち)」
一撃で決めるブラックジャガーと動きを止めるマーゲイ。なかなかのコンビである
ふたりはケモキュア!ライブ前の演劇にいいかもしれない
「…やらんぞ?」
「いいと思ったんだけど…」
速攻でなしにされた
「じゃあお願いするわ。練習はもう少し後でしましょう。ただ、しっかりやるわよ!」
「「「「もちろん!」」」」
─
なるほどね~
練習のためにここまできたのか~
本当にがんばりやさんですごいな~
ライブ楽しみだな~
きっときらきらしてるんだろうな~
サポートもいるから大丈夫そうだな~
ただ一つ思うことは~
なんてタイミングが悪いんじゃこの子達…!
落ち着け…情報整理だ。素数を数え…なくていいや。一旦窓から離れて…よし。これからどうしようか
ここからあのセルリアンが出てきたとハクトウワシさんは言っていた。なら他にもいるはず。不確定だが可能性はすごく高い。練習中にでも襲われたら大変だ
ブラックジャガーさん…ジャガーさんの色ちがいみたいだ。やっぱり強いんだろうな。色ちがいで強いとかパーティーに即入れるね。…そういえば観客席にいたね君。熱心なファンなんだね。ジャガーさんは知ってるのかな?
さて、ここは危険だと素直に伝えるべきかな?彼女達にとってはがっかりだろうけど、そこは納得してもらうしかない。 問題は信じてもらえるかどうかだけど
それと…前に会ってるから、なんか…会うの気まずい。すぐに逃げちゃったし。あの時は俺のことを怖がってる様子はなかったけど今会うとどう思うだろうか
…考えても仕方ない。まずはここを離れようかな
よし…いくz
「おい、そこでなにをしている!」
──えっ?
「えっ?ブラックジャガー、どうしたの?」
「そこの建物から気配がする。セルリアンかもしれない。少し見てくる」
「…気を付けてくださいね」
なんかデジャヴ。またタイミングを逃した気がする。また勘違いが生まれる気がする。僕悪いスライm…ヒトじゃないよ?
なぜこうなってしまうんだ?じゃんぐるのみんなが大丈夫だったのはやっぱり第一印象?
とりあえず、ラッキーさんを連れてと…
「ラッキーさん、ちょっと持ちますn」
「おいお前、ボスになにをしている?」
…あれー?部屋に入ってくるの速くなーい?今俺の後ろにいる?なんで?どこから…あっ
窓あいてるー!?しまった!閉めておけば!とか思ったけど閉めた音でおんなじ結果が待っていたかな?
だが、ここからコミカルになれる魔法の言葉がある!
近づいてきたな…今だ!
「うわー!た、食べないでくださーい!」
よし決まった!これで…!
「…別に食べるつもりはないが?」
凄い冷静に返された!『食べないよ!』を期待したのに!いや勝手に期待したからその返しじゃないのはしょうがないんだけど!
「そ、そう…。あの、俺は敵じゃないよ」
「そのようだな。何をしていた?」
「えっと…さっきここに来たばっかりで…」
「そうだったのか。怯えていたようだが、なにかあったのか?」
おっ…いい感じに話が進みそう。警戒はされてないっぽい。怯えているように見えたのか。ぺぱぷの皆は来なさそう?
ぺぱぷに会うのが気まずいから、どうにか誤魔化しながら話そう。ごめんなさいブラックジャガーさん、でも危険なのは本当だから許して?
「その…セルリアン…っていうの?それがここの奥にいっぱいいて…なんとかバレずにここまで逃げてきたんだけど…」
「なに…?ならばここにいるのはまずいな…。みんなに知らせなければ…」
なんとかみんなが離れる方向に持っていきたい。突っ込むのは俺だけで充分
「あの数と大きさは一人じゃ無理だよ…。だから逃げないと…」
「そんなにか…。なら、ここは応援を呼んだほうがいいか…」
よしよし…ここまではOK。あとはこの子が皆を連れて外に出ていってくれれば──
「なんか悲鳴が聞こえたけど大丈夫!?」
──くれれば、よかったんだけどなぁ
「いや、フレンズをびっくりさせてしまっただけだ。すまん、心配をかけて(焦った顔もかわいい)」
「それならいいんだけど…あら?あなたはいったい?」
「どうしました?プリンセスさ…ん…」
あっ…忘れてるかな?忘れてて…
「あなたは、あの時の!?」
あー…忘れていなかったか…。忘れていいよって言ったんだけどなぁ…どうしよっかなぁ…
*
結局みんな集まってしまった。今私は正座をしています。ブラックジャガーさん怒ってるっぽい。違うんですよ、これには訳がありまして。だからそんなに睨まないでください…
「色々聞きたいことはあるが…まず、なぜ嘘をついた?」
「そう装えば、話を信じやすいかと思いまして…」
「信じないと思ったのか?」
「…このほうが信じるかなと思いました」
「…はぁ。じゃあ次」
呆れた…という顔をしている。まぁそうなるよね…
「セルリアンの情報は本当なのか?」
「…いっぱいいるかはわからないけど、危険なのは本当だよ」
俺はここまでは来るときに倒したセルリアンのことを話した。バイクもあったし説明がしやすかったな。これにはみんな驚いていた。当たり前だ。そんなの見たことないだろうから
「お前が私達を心配してくれたのはわかった。だが、お前一人では行かせない」
「いや、君まで来ちゃったらぺぱぷの皆はどうするのさ」
ジャガーだし、護衛としてここまで来たらしいし、強いのはわかるけど、心配なのは彼女達だ。元々海の子達だし、泳ぎが得意でも地上はきついんじゃないかな?ペンギンチョップは骨砕くけど
「問題ない。マーゲイの声真似で動きは止まる。その間に逃げるか、私が倒す」
マーゲイさんを見るとドヤ顔で胸を張っている。嘘ではなさそうだ。だけど…
「それってみんなで奥に行くってこと?」
「どこから襲ってくるか分からないからな。近くにいてもらったほうが守りやすい」
「それは…そうかもしれないけど…」
「それに、お前も彼女達を守ってくれるんだろう?」
…それもそうか。小さいのは任せても大丈夫だろうし、セルリアンを取り逃して襲われたらそれこそ危険か
「わかった。はぐれないように注意しよう」
「うむ、遅れをとるなよ?」
「大丈夫。なんとかするよ」
協力すれば速く解決するかもしれない。何もなければそれでいいしね。みんなの練習場を探す手伝いにもなりそうだし
「ところで、自己紹介がまだだったな」
これもデジャヴ。軽くしておこうかな…
ピロピロピロ…
「セルリアンガ近ヅイテキテイマス。オ客様ハ避難シテクダサイ。繰リ返シマス…」
…自己紹介まだなのにさっそくきたか。タイミング考えてくれ。ここはお引き取り願おう
「ボスがしゃべってる…てことは、もしかしてあなたは!?」
「それは後で。ちょっと見てくるね」
「待て…私も」
「突っ込むわけじゃないから平気。だからみんなを頼んだよ」
「…危なくなったら呼べ」
大丈夫だとは思うけど、危険な時はすぐに呼ばせてもらおう
さて…どんなセルリアンが来ているのか──
『グギギ…』ピョインッピョインッピョイン…
──ヒト型のセルリアン!?
いや、よく見たら頭になんか貼ってあるな。あれもしかしてお札?てことはキョンシー型のセルリアン?そんなものまで…
キョンシーか…。もしかしたら意志があるかもしれない。試してみるか
「よっと…」ブウン!
戦闘準備はしてと…
じゃあ、話し合いを始めようか
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