第17話 ロッジ探索


「…コウ。足ノ方ハモウ治ッテルネ」


ラッキーさんはそう言った


…流石に早くないか?たしか滝から落ちて、気絶していたけど、それは数時間くらいだったみたいだし。そのあと、ひらがなを教えて、夜が明けて…。ヒグマさん達が来て、夜が明けて…


折れてから、二日しか経ってないような…。変身して怪我を治すことに集中すれば、一日で治る。その日はもう使えなくなるけど…。力を保つ状態なら、平均して三日くらいだけど、今回は違う


使おうとしても使えなかった。そして、それは今も変わらない。なら、なぜ予想以上に速く治っているのか。無意識に使っていた?補給したエネルギーを回復に使っていたから、力の行使ができなかった?だけど、それじゃあ足りない


何か…別の要因が…?



「もしかして、サンドスターが関わっているんじゃないか?」


「なるほど。それなら納得だ」



…えっ?サンドスター?



「怪我とサンドスターって、何か関係があるの?」


「野生解放でサンドスターを多く使うことで能力があがるんだけど、回復力もあがるんだよ。コウはジャパリまんをよく食べていたから、フレンズ化しない代わりに治療に使われていたんじゃないかな?」



…サンドスターにそんな隠された効果が!?



テキストなんてないし説明書もないから知らないよそんなの!先に言ってそういうことは!真面目に考えてた俺がバカみたい!


…てことは


「ラッキーさん。俺の体にサンドスターの反応はある?」


「微弱ダケドアルヨ。サッキジャパリマンヲ食ベタカラダネ」


「…ちなみに、前にスキャンした時は?」


「今ヨリモ強イ反応ガアッタヨ。ソレガ治療ニ使ワレタンダネ。コノペースデイケバ、明日ニハ腕モ治ルト思ウヨ」


…そうですか。それはたいへん嬉しゅうございます、ラッキーさん


ガシッと、俺はラッキーさんの頭をつかむ


「なんでそんな大事な話をしてくれなかったのかな?」


「…特ニ聞カレナカッタカラネ」


「お客さんに体調チェック項目は伝えた方がいいと思うんだけどなぁ?」グググ


「アワワワワワ……」


ストップ!ストップ!と二人が止めに入ってきた。仕方ない、勘弁してやろう


全く、サンドスターの特殊能力に関しては教えてほしかったよ。しかし本当に不思議物質だな、オブジェクトクラス:Safeに収まらないだろ、これ


フレンズ化しないヒトの体内にも留まるんだな…。蓄えておけるらしいし、応用が効きそう


もしかして滝から落ちても生きていたのは、サンドスターが能力を底上げしていたから?その可能性は大いにあるな…


だがそれよりも大事なことがある


この情報のおかげで思ったことがある



そう…『ジャパリまん万能説!』 バァァァァン!



・回復力アップ!エネルギー補給効率大!

・お腹への満足感大!味も良し!

・☆3つじゃ全然たりない!

・雑誌があったら大々的に宣伝すべきもの!

・携帯食料+活力剤!俺にとっては+栄養剤!



さいきょーすぎるだろ…!まさに完璧な食事だ…!



「…こんなにジャパリまんに感動するやつ初めて見たな」


「ジャパリまんはパークだけのものなんだろうね。だからじゃない?」


「にしても、大げさのような気がするが…」


若干ゃ引かれた気がするが、特に気にしないことにしよう



*



足が治ったということで、杖なしで立ってみる


…うん、痛みはないな。少し歩いてみようか。軽いリハビリだ。アリツカゲラさんの所に挨拶しに行こう


「アリツカゲラさん、お疲れ様です」


「お疲れ様です、コウさん。あら、足はもう大丈夫なんですか?」


「はい、おかげさまで。アリツカゲラさんがジャパリまんをいつも一つ多く出してくれたからですよ」


「食べたあと、物欲しそうに見てましたからね。意外と食いしん坊なんだなぁって」


うっ…少し恥ずかしいんですけど…顔赤くなってないよな?ちょっと熱いよここ。ラッキーさん冷房つけてくれ。このままだとオオカミさんになんか言われそう…


話題を変えておこうかな


「それはおいといて…アリツカゲラさん、リハビリがてらロッジを探索したいんですけどいいですか?」


「ご自由にどうぞ。夜ご飯はいつもの所に来てくださいね」


「ありがとうございます。じゃあラッキーさん、ガイドよろしく」


「マカセテ」


「あ、そうでした」


アリツカゲラさんが受付のテーブルから何かを取り出し、俺に渡してきた


「これは?」


「お部屋の鍵ですね。私が見てもわからなかったものがいっぱいあったんですけど、コウさんならわかると思いまして。使えそうなものがあったら使っていいですよ」


「ありがとうございます!」


もしかしたら戻る手がかりが見つかるかもしれない。遠慮なく使わせてもらおう



*



という訳で、ついてきてくれたのはラッキーさんとリカオンさん。他のメンバーはトレーニング、漫画の原稿、そのアシスタントをするらしい。リカオンさんがついてきてくれたのはヒグマさんの指示と、ハンター組が使えそうなものを見つけるためだ


「ジャア、マズハドコカラ行コウカ?」


「そうだね…部屋を見て廻ってから、この鍵を使う所に行こうかな」


「分カッタヨ。ツイテキテネ」


廊下をスタスタ歩き出す。木造が出す古い雰囲気はなかなか趣があって、思わず目線を右へ左へ移してしまう


「「…」」


…どうしよう、会話がない。リカオンさんがじっとこっちを見てる…と思ったらラッキーさんも見てる…交互に見てる?


おかしいな…。勉強会の時は普通にしてたのにな…。ちょっと思い出してみるか



『これで合ってますか?』


──うん。正解だね


『これはどうですか?』


──これは…残念。こっちが正解



※以降繰り返し



…あれ?質問しか受けてない?会話らしい会話してないんじゃ?


…急に気まずくなってきた。そうだ!怪我のことを…バカか!思い出させてどうする!


えーこんな時、皆さんはどうしますか?私の答えはですね…



「ボスって、ヒトにしかしゃべらないんですよね?」



相手が話しかけてくれました。情けない…


「そう、らしいね。それがどうかしたの?」


「羨ましいなって、思ったんです。ヒトの特徴を持ったのがフレンズなら、少しでもいいから話してくれたっていいじゃないですか」


確か、生態系の維持とかで話さないんだっけ?フレンズに色々話すと崩れちゃうってことなんだろうけど…崩れるのか?確かにどっかの長が料理料理してたら、栄養片寄りそうではあるけど…


「リカオンさんは、ラッキーさんと話ができなくて寂しいんだね?」


「…はい。ボスって、私達のためにいつも頑張ってるじゃないですか。お礼を言っても、届いているかわかんないですし…」


…なるほど。言葉にしたって、相手が受け取ってくれているかは判断が出来ないもんね。特に、ラッキーさんとフレンズに関してはそれが顕著だ。伝わらないというのは寂しいもんだ、何度言ったって不安になるし


…言ってもダメな時はあるけどね


「ラッキーさん。これを聞いてなんか言うことある?」


「…」


「俺を通せば、干渉してることにはならないんじゃないかな?」


「…コウ。フレンズ達ノ好意ヤ感謝ハ、嬉シイシチャント伝ワッテルト伝エテホシイ」


「…わかったよ。だってさ、リカオンさん」


「…!ありがとう、ボス!コウさん!」


曇っていた顔が晴れて笑顔になった。面倒な誓約だけど、これでお互いに想っていることはわかったかな


そこからは自然と話ができるようになった。好きな場所、いつも何をしているのか、ヒグマさんとキンシコウさんのこと…


パークについても色々話してくれた。廻る余裕があるかはわからないけど、いつか行ってみたいね


…後半、愚痴多かった気がするけど



*



「ココガ、鍵ヲ使ウ部屋ダヨ」


色々な部屋を回った後で案内されたのは、他の部屋から離れた場所。いわゆる倉庫だった。扉が両横に開くようになってるな…体育館の倉庫を思い出す


ここならヒトの残したものがたくさんありそうだし、期待ができる


では早速…



ガチャンッ!ギギギ…ギギギ…



…扉、結構重いな。よいせっ!と…。ふぅ、なんとか開いたな…。反対側は…



「私はこっち開けますね」



ガラガラガラ…ガンッ!



…簡単に開けよった。いや、そっちの扉が軽かった可能性が…ちょいと失礼…!ふん!



ギギギギギ…ギギギギギ…



…わかっていたさ、基本スペックは勝てないって。やはりフレンズの身体能力はヒトの比じゃないんだな…


でもほら、俺も男じゃん?いいとこ見せたかったっていうかさ?わかるよね?わかって…?



「得意なことは違うから、こういうのは任せてください。慣れてますから」



リカオンの そのやさしさが 突き刺さる



というのは置いといて…気を取り直して、中に入ろう。埃っぽいけど、いられないことはないね。なにかないかなー?


「…ん?これは」


「なにか見つけました?」


「ホワイトボードがあったよ」


「ホワイトボード?」


一般的に売っていた、ローラー付きのものだな。ペンもあるし、壊れてはなさそうだ


「もしかして、作戦会議に使えますかね?」


「持ち運びは厳しいと思うけど、使えるとは思うよ。よかったら持っていこう」


まず一つ、役に立ちそうなものをゲット!リカオンさんの珍しい行動が見れそうだね


「他には…これは、顔出しパネル?」


遊園地や動物園でよく見たやつだ。クマにライオンにサル…結構種類あるね


「どういうものなんですか?」


「えっとね…」


俺は後ろに回って、パネルから顔を出す


「おお…コウさんがクマになった」


「こうやって楽しむものだよ。みんなでやると面白いかもね」


ロッジの新たな名物に出来そうだね。アリツカゲラさんに教えてあげようかな?


さて次は…



ピロピロピロピロ…ピキーン!



『ミライさん!これなに!?』

『これはラジオですね。ここから音がなるんですよ。こうやって…』


~~♪~~~♪


『すごーい!歌が流れてる!』

『歌やトーク番組が流れますからね~。聴きながらおやつを食べるのもいいんですよ』

『歌…トキの歌が流れたら…』

『ちょっと!変なこと考えないでよ!?』

『あはは…セルリアンが各地で暴れそう…』

『…かわいそうではありますが、囮作戦には使えそうですね。どうやら、セルリアンは爆音が嫌みたいですし』

『爆音…まあそんな感じよね』

『ミライさん!これは!?』

『えっと…それはですね…』



ピロピロピロ…



…今のは、もしかして過去の音声データ?この場所に反応して流れたってところか


…トキの歌ってセルリアンの囮に使えるの?それに爆音が苦手って言ってたな。これは重要な情報だ。いざとなったらそれを使おう


「今のはなんですか?」


「過去の音声だね。昔のパークの様子が録音されていたんだ。えっと…これかな?」


古びたラジオを見つけたので、早速スイッチを入れてみる



ザーッ…ザッ…ザザーッ…



…まぁ流れないよね。壊れてるし


「ダメそうだ。他に何かないか探そう。不思議なものがあったら言ってほしいな」


「オーダー、了解です」


十八番が出たね。言ってもらえて光栄ですよ



*



一通り見て、中々収穫はあった。特にトレーニングに使えそうなものが多く、リハビリにはもってこいだ。ハンターさんにもいいかもしれない。俺には必要のないものも多かったから、それはそのままで。皆にもお土産(?)ができたし


動物図鑑、獣生ゲーム、将棋、オセロ、花札UNO、トランプ…etc


…ゲーム多くない?ちゃんと仕事してたのか?


資料の一つや二つあれば良かったんだけど、ここは倉庫だからないとラッキーさんが言ってた。他に職員専用室があるらしい。そういうのも先に言ってほしかった


さて、そろそろ切り上げようかな


「コウさん、これはなんですかね?」


おっと、リカオンさんが何か見つけたみたいだ。なんかほかに比べてでかいものが…。布被ってるな…取ってみるか…えいやっ!


「これは…!」


まさか…D・ホイーr


「 “ジャパリバイク” ダネ。太陽電池デ動クモノデ、動カシ方ハ普通ノバイクト同ジダネ」


…ですよねー。どちらかと言えば棺桶バイクかな?ドリルとかつけられないかな?チャージショットでもこの際いいんだけど


「バイク…って、なんですか?」


「パークの外にある乗り物だよ。バスと同じで運転するんだ」


「じゃあこれは動くんですね?」


「どうだろ?ラッキーさん、これ大丈夫?」


ピロピロピロ…と音を鳴らしてバイクをチェックしてる。頼む…動いてくれ!


「…電池ガナイケド、部品ハ問題ナイネ。太陽ニ当テテオケバ充電サレルカラ、運転デキルナラ大丈夫ダヨ」


よっしゃー!ジャパリバイク、ゲットだぜ!正直歩くのすごい疲れるから助かる!充電する時に叫べばいい?たいよおおぉぉ!


「ありがとうリカオンさん!これは大発見だ!今度乗せてあげるね!」


練習してからになるけど、早速外に…!



──あっ



「どうかしましたか?」


「…今日はいいかな。他のを持っていこう」


「あっ…(察し) …運んであげますよ。コウさんはそっち持っていってください」


「…ごめん。ありがとう」


この時ほど、速く腕治れと思ったことはない

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