第17話 【硃】
「ふぃー! 探偵社へとうちゃーく!」
怜は弐沙を担ぎつつ、Worstまで帰ってきた。
「もうちょっと丁寧に運べないのか? これでも一応さっきまで倒れていたんだぞ」
「これでも善処したほうですー。それに、皆神君は気づいていなかったみたいだけど、多分それは
「……良く分かったな」
怜に原因を即座に見破られ、弐沙はそっぽを向く。
「俺はなんでもお見通しなのだー。へへーん」
怜はそう言って自慢に胸を張る。
「さて、調査結果を纏めよー!!」
おー!と怜のみが自分で右手を上げる。
応接間へとやってきてソファへどっしりと座り込む弐沙と、もたれかかりながら座る怜。
「まずは怜の神社の調査からだな」
「おっけー」
怜はそう言ってズボンのポケットからメモ帳を取り出して開く。
「まずは、朱絆神社はここから電車を乗り継いで一時間半くらいかかる、暁鴉村にあった。村では神社に肖って縁結びの村なんかで村おこしをしていたよ。まんじゅうとかクッキーとかあったなぁー」
「暁鴉村とは結構田舎なのに、村おこしするくらいの人気なのか?」
「竹子情報だけど、最初は寂れた神社だったのが、テレビで芸能人夫婦が縁結びのお守りとして紹介したのが切欠で爆発的に流行ったんだってさ」
怜はぺらりとメモを捲る。
「暁鴉村は本当にド田舎! って感じだったよ。道もメインストリートらしき場所以外舗装されていなかったし。そんな中へ歩いていく人・人・人。住んでいる人もビックリだろうねぇ」
「そうだな。で、肝心の神社は?」
「神社は入り口がごった返してて全く入れない状態だったから、事前に竹子が神社側に聞いた裏道を通ったんだけど、少し険しい林道だったな。そこで、変な奴にあったんだよ」
「……変な奴?」
弐沙が首を傾げる。
「夏陽っていう村で酒を配達している奴なんだけど、なんというか一見普通の奴に見えそうで、雰囲気がなんかちょっと違うというか。チャラいキャラで自分をカモフラージュしているというか。ソイツは朱絆神社へ配達とかで結構訪れているらしいよ」
「怜の観察眼でそう見えるのなら、得体の知れない奴なんだろう。ソイツについても調べる必要があるかもな」
「で、その夏陽から、朱絆神社の神主である弟が戦時中にそのお守りを持ったことにより、掃討作戦の中で唯一無傷で生き残って帰ってきた。そして、村の人たちがそれは神様の奇跡だと信じて、姉弟が住んでいた丘に朱絆神社のお社を作ったのが始まりという話を聞いたよ」
「神様の奇跡ねぇ……」
ソファの手すりで頬杖をつく弐沙。
「その後で神主代理のお姉さんの結ヰかなえさんの話も聞いたんだけども、その弟さんっていう神主の姿は全然出てこなかった。元から表に出てくるような性格ではなかったらしいし、お姉さんが神主は朱糸守を制作し続けているって言っていたけど、オカシイよねぇ。それに……」
「それに?」
「使われてない用具を収納する倉庫が神社にあったんだけど、其処から声が微かに聴こえたんだ。神主代理曰く、誰も居ないっていうし、竹子は聴いていないって言うんだけど、確かに何者かのうめき声が密かに聴こえた。その倉庫には誰かが居る」
「他に何か気になるようなことは無かったか?」
「夜にも変なうめき声が聴こえた。泊まっていた宿泊先の婦人会の人が言うには熊らしいんだけど、熊の鳴き声にしては変かなって」
怜は思い出すようにメモを捲っていく。
「夏陽という存在、朱絆神社で姿が見えない神主、物置小屋の秘密、そして謎のうめき声。大体四つぐらいに謎が絞れたか」
弐沙が指折り数えていると、怜があっ、と声をだした。
「どうした?」
「そういえば、朱糸守の始まりはその神主代理が弟のために作ったお守りなんだけども、それって誰かから教わったものらしいよ」
「誰からか……教わったもの……」
「弟さんが戦いに行く直前に不思議な雰囲気をしている男と出会って『俺がとっておきの
「つまりは、感染呪術を教えた男がいるってことだな。その男の名前は?」
「訊いていないらしいよ? 姿もそれっきりとか」
「その男についても調べたら何か出そうな気もするな」
そう言って弐沙はソファの背もたれにおもいっきりもたれかかった。
「俺の方の調査は以上かなぁ? 次は弐沙の調査の方だねー」
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