第823話 前田慶次
「御大将、大丈夫ですか」
と、カイロ大使館に来た前田慶次、
「うん、大丈夫。わざわざ来なくて良かったのに」
「無事だと聞いてはいましたが、叔父も上様のご様子を見てきてくれと」
「あぁ、利家殿が心配しちゃったかぁ。信長様なら庭で、ハシビロコウさんに餌をあげているよ」
「はしびろこうさん?」
「鳥の名前だから」
と、案内すると、
「御大将、なんですか、この格好いい鳥は!」
と、前田慶次も一目で気に入ってしまったようだ。
「五月蠅い、傷に響く」
と、織田信長はご立腹で、その目の前でハシビロコウさんは織田信長にずっとお辞儀を繰り返していた。
「信長様の傷は大丈夫だから。それより慶次にはヴェネツィア付近で待機していて欲しかったな」
「それは息子の正虎に任せて来ました。そろそろ家督を譲ろうかと思いまして」
「え?隠居?」
「はい、もう歳ですから」
と、言う前田慶次だが、まだまだ元気な筋肉隆々のちょい悪オヤジだ。
「まぁ、余生を楽しむには元気なうちに隠居したいよね」
平成時代、阿呆な政治家が定年を延ばすと言う、馬鹿としか言いようのない愚策をしようとしていたが、引退はある程度の年齢で元気なうちにするべきだと思う。
働きたいと願う者は別だが、多くの者は余生を楽しみにしているはずだ。
働き続けてボロボロになってから定年退職、平均寿命から計算して残り約10年、元気に遊べるか?50年働きづめで、残りたった10年。
おそらく大半は病気療養生活だ。
余生を楽しむどころではない。
「えぇ、御大将がバイクと名付けたアレで世界を回ろうとしていたら、この騒ぎですから」
「慶次の忍びでもわからない?」
「ロシア帝国を探っていますが、御大将と敵対しようとはしていませんね。また、人質を送ろうとしているみたいですが」
「ん~、ロシア美少女・・・・・・興味はあるけど、こないだ来たのは酷かったから」
「おっ、衰えていませんね」
と、慶次は右手を拳にしてクイックイッとなんともがなの表現をしていた。
「その手はやめて」
と、笑うしかない。
「冗談はさておき、今後のご指示を承ります」
「うん、慶次はやはりヴェネツィアに帰ってスロバキア王国と連絡を密にとってその辺りの警戒を頼もうかな」
「やはり敵は旧勢力と睨んでいますか?」
「恨みを持つとしたら、その辺りだろうし」
「わかりました。さらに忍び・・・・・・各国に忍ばせた草を使って探索いたします。しかし、御大将、遊び方下手ですね。わずかな供回りで行くなら身分がわからぬように変装なりして行かなくては、命は狙われて当然ですよ」
「はははははっ、慶次みたいに遊び上手ではないからね」
「兎に角、気を付けて下さい」
「慶次も歳なんだから体には気を付けて」
と、前田慶次はすぐに戻っていった。
ロシア帝国・・・・・・また、女を送ってくるのか?ん~困ったなぁ。
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