第810話 ガザ
歓迎の仕度が出来たというので、ガザに向かった。
俺が知る時間線では曰く付きと言って良いだろう問題の地だが、意外にも他と変わらぬ港町として繁栄していた。
アセナが『じいや』と呼ぶパシャのムリタファス・ケラル・アダディリュクが出迎えてくれる。
「ふぉっほほほほほ、今度は常陸様は何を求めておられるのか、このジイも楽しみですぞ」
「はははははっ、今回はそんな大した物ではないですよ。エルサレムと死海を見たいので」
「エルサレム、岩のドームですかな?それとも聖墳墓教会ですかな?それとも西の壁ですかな?」
エルサレム、アブラハムの三宗教の聖地。
岩のドーム=イスラム教の聖地
聖墳墓教会=キリスト教の聖地
西・嘆きの壁=ユダヤ教の聖地
平成時代紛争が絶え間なく、日々なにかとニュースとなる地。
宗教という本来なら人々に幸せを与える地が、紛争の火種となる皮肉の土地。
電子辞書ですでに読んでいる織田信長は「焼き払って壊してしまえば良い」と、船の中で言っていたのは聞かなかったことにしよう。
「すべてを見たいですね。これは信教ではなく、文化として目に入れておかねばと思って」
「ふぉっほほほほほ、常陸様らしいですね。エルサレム、死海の案内もお任せ下さい」
と、ムリタファスは笑っていた。
茶々達も同行する。
今回、ナイーブな土地、三大宗教の文化を尊重するため、頭には薄い布を被らせ、髪を見えにくくして貰っている。
「女性の美しい部分を隠せ、美しい部分は大切な人にだけ見せるっと言う教えはなかなか奥が深い物ですね」
と、茶々は感心していた。
「厳しくコーランの教えを守っているところでは全身、黒い衣装を身にまとっているから、目しかわからなかったりするんだよ」
「え?マコ、欲求不満になっちゃうね」
と、お江は笑い、
「それでどうやって判別するのかしら?」
と、お初は不思議がっていた。
確かに俺もその点気になるが、そのような環境下で育つなら、きっと特別な識別能力も育つのだろう。
目だけで誰だかわかるのかもしれない。
ムリタファスが用意してくれたラクダ、ロバに揺られてエルサレムに向かった。
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