第800話 使者・アナスタシア・リュリーク

「お会いできて良かったわ」


と、流ちょうな日本語で挨拶されたるのはもう慣れた。

今の世界情勢的に日本語が堪能でなければ一流の使者ではない。


柳生宗矩が言うように金髪碧眼と言うより銀髪に近い髪に、ボンキュッボンの体つき、そして、きめ細かなクリーム色の肌が輝き、部屋には甘い匂いが充満していた。

確かに美少女。


「黒坂常陸守真琴だ。よくぞ来てくれた。歓迎する」


「嘘、スロバキア王国へ帰すつもりだったのでしょ?私には、わかります。私は皇帝より黒坂様のおそばに仕える事かなわぬ時は帰ってくるなと言われています」


「はははははっ、俺は人質をとることはない。人質の役目となるならスロバキア王国に滞在して貰う。しかし、美少女を使者に送ってくるとな」


「黒坂常陸様が美少女好きなのは有名ですから、私が選ばれました。私、美しいでしょ?」


と、目の前で煌びやかなドレスのスカートを持ってくるりと回られてしまう。


その一言、開いた口が塞がらない。


「あら、私に見惚れてしまわれたかしら」


「御主人様、御主人様、しっかりして下さい」


と、桜子に肩を揺さぶられてしまう。


「おっ、おう。・・・・・・。えっと、君が帰れるか帰れないかは俺には関係はない。用向きの返事は宗矩が伝えたとおりだ。このまま帰って貰おう」


「え?」


と、柳生宗矩が意外な俺の返事に驚いていた。


勿論、使者アナスタシア・リュリークも。


「そっ、そんな、私の美貌がいらないというの?ロシア帝国からの人質として黒坂様の側室になってあげると言っているのよ」


「うん、無理。だって君、うちの調和を間違いなく崩すタイプだもん。人質になるならバードリ・エルジェーベトの所に行きな。以上」


と、俺は退室した。


「×△●×△●」


退室した部屋からはロシア語だかの巻き舌の叫びが聞こえていた。


『酷い男』


と、でも言っているのだろう。


「御主人様、良いのですか?あのように帰して」


「かまわないさ。いくら美少女であろうと、うちの調和を乱すような女を側室にすることはないさ。あれは男を手玉にとって意のままに操ろうとする悪女の臭いがした。勘だがな」


「確かに、私達の中にはいない気性をお持ちのようでしたね。好きにはなれない方かと」


「だろ?んな娘、側室にするほど阿保でもないよ。残りの人生、今いる側室達と仲良く暮らす事を考えるほうが俺には重要だし」


「御主人様・・・・・・」


桜子は嬉しそうにしていた。


不可侵条約は石田三成に任せるように手配をした。

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