第798話 自由人・織田信長
「なんだ、珍しく飾りっ気のない屋敷だの~」
「信長様、そんなにそんなに、あっちこっちに城、建てませんから」
リエーガ城から南東の島のクルク島にある屋敷に滞在していると織田信長がやってきた。
「ふっ、そうか。面白い物が見られるかと思ったのだが、つまらん」
「そんなに面白いところにばかり行っていないですから。こちらに来るよりヴェネツィアにでも行ったらどうですか?あちらのほうが面白いのでは?」
「もう行ってきた。ほら、土産だ」
と、差し出してきたのは一枚の絵だった。
「・・・・・・ん?んんんんん?えぇぇぇぇぇえ!」
「なにをそんなに驚いている?」
「これ、レオナルド・ダ・ビンチの絵じゃないですか」
モナリザを風呂敷から取り出す織田信長。
まだ100年ほどくらいしか経過していないので、色鮮やかだ。
「美女絵が好きなのであろう?くれてやる」
「いりませんよ。もう。俺の描く絵と全く違うじゃないですか?可愛くないし」
「ん?いらぬか?なら、暖炉にでもくべるか」
「うわわわわわわっと、燃やさないで下さいよ。お~こわ。これ俺のいた時代だと値が付けられないくらいに有名な絵画として残る至宝なんですよ。俺には良さはわかりませんけど」
「ミラノの壁画が気に入ってな。よくよく見ていたら噂を聞いたフランス国王がくれたのだ」
「え?『最後の晩餐』見てきたんですか?俺もそっちは見たいのに~」
「緻密な計算をした絵だな」
「あ~、信長様ほどになるとわかるんですね。あの絵画はいろいろと計算されて描かれているそうなんですよ」
「一枚の絵画で一舞いを表現しているような絵だった」
と、能に例えて言う織田信長。
「確かに一つの物語が、あの一枚に込められていると聞きますね。見たかったなぁ」
「行けば良いではないか?」
「うっ、はい。特に戦は起きなさそうだしって思うんですけど、後回しになってしまっていますね。まっ、壁画は逃げませんから」
「まだ戦の火種は残っているのか?」
「最後の晩餐が良い例かもしれませんね。あの一枚の絵にしてもキリスト教とユダヤ教の対立が秘められています。それはいついつまでも続くのですが・・・・・・」
「なにか迷っているな?」
「はい、エルサレムと言う地に行くかどうか。そして、行ったとしてどう介入するかを悩んでいます。俺の浅はかな考えで介入してしまえばいつまでも続く火種になってしまいそうだし」
「エルサレム・・・・・・」
と、織田信長は電子辞書で調べると、
「捨て置け。時の権力者が介入しようとするから傷口が膿、腫れ、爆発するのだ。だが、一度は見ておきたい地だな」
「ちょっと、そっちは本当、信長様勝手に行かないで下さいよ」
と、必死に止めた。
「あぁ、わかった。しかし、死海とやらが近いのだな。行ってみたいな」
「ちょっと待って下さいよ。俺も行きますから。もうしばらく待って下さいね」
と、織田信長を必死に止め、貰ってしまったモナリザを欧州イバラキ島に送った。
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