第782話 琴彦の見合い

 ハシビロコウの羽を飛び立てないよう、遠くに飛ぶ事が出来ないように気を付けながら剪定して、大使館のナイル川近くに広い檻を作り飼う指示を出していると、イタリアから琴彦が到着した。


「父上様、また変わった物を飼うのですね」


「かっこいいだろう。ハシビロコウさんだっ、俺ではなく、信長様と宗矩が飼うと言うんだがな」


餌を与えるとお辞儀をしてくる大きな鳥、ハシビロコウを紹介すると、


「父上様、茨城に送るときにはちゃんと飼い方を伝授してからにして下さいね。子供の頃、大変苦労したのですから」


と、琴彦は何かを思い出し笑いをしていた。


「それより、父上様、オスマン帝国皇帝陛下の縁者と見合いと聞きましたが?」


「ああ、そうだ。琴彦と桃信にと10人来ておる。見合いをし、気に入った者がおれば婚儀とする」


「はっ、わかりまして御座います。で、見合いが終わればイタリアに帰ってよろしいので?」


「ん?イタリアが良いのか?」


「いえ、前田慶次のローマ帝国の建物保全に興味がありまして」


「そうか、慶次は美しい物が好きだからな。だが、琴彦、悪いがこの地に残って欲しい。ここも残したい古代文明の遺産がある。その監視人に信頼出来うる者にしたい。桃信はオーストラリアを任せたいからな」


「そうですか・・・・・・」


「ほら、あそこに見えているだろ、あれを守役目も悪くないであろう」


と、ピラミッドを指さすと


「父上様?謀っておられるのですか?あれは山でしょ?」


「ははははは、まあ、近くに行けばわかるさ。取り敢えず、上がって休め」


と、大使館に連れて行く。


玄関で足を洗って貰う。


俺は、お江が。


琴彦は・・・・・・。


部屋に入り着流しにお互い着替え、エジプト料理で軽い昼食にすると、


「琴彦、どうした?エジプト料理は好かぬか?」


食が進まない琴彦。


「・・・・・・いえ、父上様、その・・・・・・」


「真琴様、琴彦は女子に惚れてお腹がいっぱいの様子ですよ」


「母上様!」


「茶々、琴彦、誰に惚れたのだ?」


と、琴彦に聞くと、


「先ほど足を流してくれた異国の女子美しく・・・・・・」


「お江、さっき琴彦の足を洗った者を連れてきてくれ。そうか、一目惚れかぁ~青春だな~」


と、ニヤニヤしていると、連れてこられたのはマラティヤだった。


「何事で御座いましょうか?」


「琴彦、この娘で良いのか?」


と、聞くとコクリと顔を真っ赤にして頷いた。


「琴彦、こちらの娘子は、アメフトス皇帝の娘マラティヤなるぞ」


と、言うと琴彦は『え?』と、鳩が豆鉄砲をくらったような顔を見せ驚いていた。


「不思議がるか?茶々達のように俺の妻達は皆働いている。それを見習いたいと働いていたのだ」


茶々を含め、俺の妻達は仕事を持ち、俺の身の回りの世話も出身身分関係なくしてくれている。


「いい娘、・・・・・・姫ですね」


「真琴様、見合いの必要はなくなりましたね」


と、茶々が言うと、


「茶々様、なぜに御座いますか?」


と、マラティヤは聞いてきた。


「マラティヤ、私の息子があなたに一目惚れいたしたみたいですよ」


「え?」


「母上様!」


「あとは、二人の時間を作りお互い結ばれても良いと思えれば、それでよし。マラティヤも嫌なら嫌としっかりと断って良いのだからな」


と、琴彦の身の回りの世話を頼んだ。


「琴彦、手だけは出すなよ」


「わかっていますよ、父上様」


と、琴彦は顔を真っ赤にさせていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る