第593話 地中海

 現在、地中海はジブラルタルから貿易船が経由して各地にアメリカ大陸からの輸出物を輸送するため、貿易船がひっきりなしに行き来している。


地中海の各地は港を中心として栄えると言う時代になっていると現状報告を耳にした。


今はアメリカ大陸との交易は日本国を通すか、織田信長の名で発行される御朱印状が必要な為、自由な貿易ではない。


必ず、貿易の利権を狙ってくるはずだと地図を見ながら想像する。


今は、皆、大人しくともいつかは牙を剥く。


そして、ある地も押さえたい。


それには準備をしておかねばならないだろう。


「幸村、経津丸と北斗を連れて地中海を一周してきてくれ」


真田幸村を呼び出し、命じると、


「御大将、それは経津丸様と北斗様に世界を見せるためにございますか?」


と、言うと、柳生宗矩が、


「表向きはで、ございましょう」


と、言ってきた。


宗矩は気が付いているみたいだ。


「そうだな、経津丸と北斗とは俺の代わりという事で各地に友好の同盟を結べないか?と、手紙を託そう」


幸村はまっすぐ過ぎる。裏を読んでいない。


「幸村殿、偵察をしてこいと言っているのですよ。御大将は」


と、宗矩が言うと、幸村は


「あぁ、なるほど、各地の港の状況を把握してこいと言うわけですね」


「そういうことだ。いずれ攻め込むことを想定している。俺は必ずこの地を支配下にしたいのだ」


と、地図を指さす。


長年戦争の火種となる地を支配下に置き、一つの民族が支配しない状況を作りたい地。


エルサレム。


最終的支配目標なのだ。


オスマン帝国の姫、アセナには知られてはいけない。


いや、俺の信用できる家臣の中でも重臣と、お初、お江くらいまでしか知らせられない案件だ。


だからこそ、今ジブラルタル城にいる重臣の真田幸村か柳生宗矩かに頼む案件。


戦艦・伊弉諾尊を各地・各国の港に向かわせるには、それ相応の俺の代役が必要。


それを息子二人にさせ、幸村には港を探らせる。


「はっ、この幸村密命をしっかり肝に刻みまして、使者、経津丸様と北斗様、両お二方のお守り致します」


「二人はまだ若いからその事は伏せ、あくまでも俺の手紙を各地の王、領主、支配者に渡す役目とする」


「それが、よろしいかと。我が裏柳生も乗船させます」


「頼んだ」


俺は手紙と萌陶器、萌漆器などを準備し、経津丸と北斗を南蛮交易総取締役奉行の役目の黒坂常陸守真琴名代使者として出港させた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る