第564話 柳生宗矩

 早く帰ってこの一大事を茶々の方様に伝えねば。


御大将が消えた。


それは深刻なこと。


実は御大将の秘密は知っている。


私だけではない。


前田慶次殿・真田幸村殿も同じなはずだ。


護衛に常日頃御大将のそばに側近の忍びを着けているのだから。


突如この時代に表れた、御大将はこの時代・この世界の者でないことは知っている。


そしてその経験上、世界を変えようとしていることも。


今、この世界は大きく変わろうとしている時期のはず。


そんな時に御大将が消えてしまっては・・・・・・上様も若くはない。


御曹司は若すぎる・・・・・・。


御大将、どうかあなたの理想とする形が出来るまで消えないでください。


どうか、ご無事で・・・・・・。


「鹿島港の大鳥居が見えます。常陸国に着きました」


物見をしている家臣の声が聞こえた。


「よし、着いたか。すぐに茨城城に登城する。・・・・・・なっなんだ、あれが新しい戦艦」


そこには今までの最大戦艦と言って良い蒸気機関外輪式推進装置付機帆船型鉄甲船戦艦・武甕槌の二倍以上の大きさの船が洋上で水蒸気を勢いよく吐き出しながら進んでいた。


旗印は黒坂家の家紋、抱き沢瀉が見える。


「海を動く城、いや島だな」


御大将、なんと言う恐ろしい物を考案したのだ。


胴体二つをつなげた巨大な戦艦に私は驚愕した。


鹿島港に入港すると真壁氏幹がその船から下りてきた。


「真壁殿、凄い船が完成致しましたね」


「はい、御大将ご不在中に完成致したので、お方様の命で試験航行をしていました」


「どうです?」


「はい、大きな船でありますが操舵が一隻分なので二倍の乗組員はいらず、なのに大砲の設置数は増え、積載量も二倍、安定性も良く素晴らしき船かと」


「真壁殿、この船すぐに使います。遠洋航海の準備を」


「なぜにございます?御大将の許しなしには・・・・・・」


「お方様の許しは私がもらい受けます」


人気のいないところに真壁氏幹を連れていき事の次第を告げると、


「わかりました。すぐに手配を。なに御大将設立の女子校の生徒も含めれば遠洋航海に必要な人数は確保できます。二度ほど樺太に試験後悔はしておりますから」


樺太は御大将の御子息がおられるので、物資のやりとりが頻繁になっている。


それを利用しての試験航行を済ませているそうだ。


なら、なんとかなりそうだ。


私は急いで茨城城に登城した。



《新戦艦・蒸気機関外輪式推進装置付機帆船型鉄甲双胴型戦艦

全長:約150m 最大幅:約60m マスト6本 三層構造・最大900人乗り・航行最低必要数450人

蒸気機関外輪式推進装置付機帆船型鉄甲船戦艦・武甕槌の約二倍

推進搭載装置となる外輪を両外側と真ん中に取り付けた形、水車が3つ搭載で建造

全面が黒い鉄板が貼られた鉄甲船で、可動式ドーム型砲台を搭載一つのドーム型砲台に大口径アームストロング砲3門、前に4機、後ろに2機乗せる。船体脇にも36門左右合わせて72門のアームストロング砲、合計90門

接岸用避難用小型船8隻搭載》


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