第562話 捜索隊

「で、あるか」


儂は今、インカ帝国皇帝ファナ・ピルコワコの使者をジブラルタル城で迎えた。


日本国旗の案が常陸から送られてきて1ヶ月もしないうちに来た使者の言葉に、森蘭丸と柳生宗矩の顔を真っ青にさせておる。


常陸が南に向かい大西洋に出るはずな所で行方不明。


儂に伝えに来た使者を下がらせる。


「上様、すぐに捜索を」


「慌てるな蘭丸。新しい航路開拓をするべくして南に向かったのだな、なら、地理に詳しい常陸なら、その地にどのような危険があるか知っての行動のはずだ」


現在この地球上で一番地理に詳しい常陸が無謀な事をするのだろうか?


しかし、常陸が行方不明になって2ヶ月以上か、探さねばなるまい。


「上様、私は一度鹿島港に帰ろうかと思います。鹿島港では武甕槌より強力な船を建造しております。その船で同じ航路を進もうかと思います。今、下手に騒ぎ立てると沈黙している者共が動き出すかと」


流石に常陸が家臣に欲しい者はいないか?と、聞いたときに名前を出しただけの事はあるな、柳生宗矩。


「よし、儂が動けば動かない物まで動きかねない。宗矩、そちが思うようにせい」


「はっ、では早速」


柳生宗矩は顔色は変えた物の慌てふためく様子を一切見せず、あたかもごくごく普通に日本に帰るかのように、出航した。


「上様、常陸様はもしや」


「蘭丸、それ以上は申すな」


「わかっております。しかしながら」


儂は蘭丸の頭を扇子で小突く。


痛みを必死に我慢しながらも正座する蘭丸に、


「常陸はそこまで無責任ではないは!儂にこのような旗を国旗として認めてはくれないか?と、聞いて来て帰るなどあるはずもない」


紺色の布地に金の日が御幸を差している旗は、まさに時代の幕開けを表したかのような、そう、初日の出を具現化した旗。


儂にそのような物を送って起きながら消えるはずはない。


「蘭丸、弥助に一隻船を出させろ」


「はっ、行き先は?」


「常陸が書いた地図で言うとこの、ブラジルと書かれた地に向かい、そこからゆっくり南下させよ」


「すぐに手配を」


蘭丸は港に走っていった。

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