第559話 インカ帝国とナスカの地上絵
俺は地図が好き。
そして、古代遺跡が好き。
なので、大体の地図と位置関係は頭に入っている。
見渡す限り石の丘を持つ茶色の大地に立つ。
「来たか、ここだな」
「ヒタチさま ここに なにがあると 言うのですか?」
「ファナ、そう慌てるな、その前に皆に伝えておく、足下に、獣が通ったかのように、石がどけられて大地が見えている部分があるが、それを踏み消すことがないようにしてくれ。これが俺が見たかった物だ」
と、家臣達に指示を出す。
皆は足下の線を見つけては不思議がっていた。
こんな物を見たがるうちの大将は大丈夫なのか?
などと、思わない所は流石に直属の精鋭部隊と言った所だろうが、
お江は、
「マコ~、こんな線見てもつまんない」
と、正直だ。
「わかったわかった、よし、それではここに櫓を建てるぞ、丸太を組んでくれ」
運んできた丸太の木材はここに櫓を組むことが目的だった。
家臣達は手早く組み始めていく。
高さ20メートルほどの櫓が次の日には完成した。
その上に、お初、お江、桜子、小滝、ファナ、そして須佐を一緒に登らせると、
「なんですか、これは・・・・・・」
と、皆が固まっていた。
高さ20メートルほどからでは全貌はちゃんとわからないが、地上に線で描かれたなにかが有ることを確証するのには十分な高さだった。
「ナスカの地上絵と呼ばれる古代遺跡だよ。一説には700以上描かれているとか言われている」
「マコ~凄い凄いよ、どんなの描かれているの?」
と言うので、有名なハチドリや蜘蛛、猿と思われる物を書いて、
「このような物がここに描かれているんだ」
と、言うと
「父上様はなぜにそのような事を知っているのですか?」
「須佐殿、それは触れてはいけないことですよ」
と、お初が静止していた。
俺は須佐の頭に手を置き、
「細かいことは気にするな。ただ、ここには確かにこのような絵が描かれている。須佐はいずれ皇帝を引き継ぐことになるのだろうが、この地を守って欲しい。ファナ、ファナにも頼みたいことなのだが」
と、言うとファナは静かに同意の頷きをしてくれた。
家臣達にも交代で櫓に登らせると、不思議な光景に驚く者が多数いた。
俺だって驚いていないわけではないが、存在を知っていたのと、平成時代ならテレビや本を通して上から見ていたので少々感動が薄い。
これが小型飛行機や、熱気球などで全体が見えたなら感動は大きかったことだろう。
ほとんど幾何学模様の線しか見えないのだから残念だ。
しかし、こんな何もない大地になぜに巨大な絵を描いたのかは不思議だ。
「神様にでも見せていたのでしょうか?」
と、桜子が言うので、
「そうかもしれないな」
「桜子ちゃん、月のかぐや姫に見せていたのかもしれないよ」
と、お江が言う。
月には誰も住んではいないのは知っているが、今はそんな無粋な事を言うのはやめよう。
月の住人に送る地球の大地をキャンパスにした絵画悪くないロマンだ。
本当に誰に見せたかったのだろう。
この後、この地は皇帝直轄保護地区に定められて、入場規制・開発規制の法度が発布されることとなった。
それは古代遺跡好きの俺としては大変嬉しい法度だ。
草木も生えず、水もない大地を好き好んで開発しようとする物がいない土地な為、反発する者はいなかったのが良かった。
ナスカの地上絵、後世までこの姿を残して欲しいと願った。
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