第556話 インカ帝国とマチュピチュ・その3

「父上様、父上様がグアヤキルで奉っているのも太陽神だと伊達政宗殿から聞きましたが、ここも太陽神を崇める地、よろしければシャーマン・テルヘペに命じまして、ここでも奉りませんか?」


グアヤキルには小さな祠を作り奉ったのだが、グアヤキル周辺が割譲され日本国となり、伊達政宗は気を利かせて正式な神社として建立してくれた。


主神を天照大御神とし、鹿島神宮からの分け御魂を一緒に奉る神社、グアヤキル鹿島神社。


須佐の申し出は嬉しい事だが、


「須佐、ここはインカの聖地として混じらぬ信仰を続けると良い。俺が保護する地となっても神社や祠などを作り奉る事は不用だ」


せっかくインカ帝国の文明を残せたのに、そこに神社を築いてしまってはイスパニア帝国とやっていることが変わらなくなる。


グアヤキルは古代遺跡がないので日本城郭式が色濃い城塞都市となっても文化財保護の観点から見ても問題は薄い。


共通点に近い太陽神を崇める文化だが、崇め方も違ければ神殿の根本的な形も違う。


「では、父上様の像を」


「違~う、そうだよ、あれはなんなんだよ。マチュピチュで頭いっぱいだったから忘れてたけどカヤオ港の像は」


カヤオ港の和式愛闇幡型甲冑の銅像を今になって思い出す。


ファナに撤去して貰うよう頼むのを忘れていた。


「母上様が自ら命じて作らせた像の事にございますか?」


・・・・・・ファナ自らが命じてる事になぜか敗北感を感じた。


「ファナ・・・・・・お前かぁ~」


お初が肩を軽く叩いて、


「大丈夫です。甲冑姿なので、顔はわかりません」


と、慰めになっていない慰めをしてきた。


「違うの、兎に角俺の神格化はやめさせて、ピラコチャとも違うんだからやめさせて」


「父上様、もう一体は完成して父上様が大西洋と呼ぶ海が見える丘に設置されてますが」


・・・・・・汗が吹き出る。


地図を広げ、


「どこ?」


「ここにございます」


と、須佐の側近が指さした。


「駄目だよ、そこに立てちゃ~」


山に俺の像なんて立てちゃ駄目だよ。


「撤去を命じて」


「しかし、イスパニア帝国のような国への威嚇になります」


ぐうの音も出ない正論的要素。


「この目で確かめて撤去させる。兎に角、俺の神格化と神社を無理やり奉るのはなしだから」


「ですが、父上様」


「駄目な物は駄目!」



『インカ帝国執政発布


黒坂常陸の像の設置を禁ずる


黒坂常陸の神格化を禁ずる


黒坂常陸を崇拝するのを禁ずる』


執政として法度を発布した。


慌てる俺にいまだにジャガイモを食べてるお江は笑っていた。

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