最終片 恋は実るというけれど
ゴミ捨て場から出ると、下校途中の友人と遭遇した。
「あれ、帰ってたのか!!」
駆け寄って来た彼は非常に嬉しそうだ。彼の顔を見た瞬間にふと気が緩んだのかまた涙が溢れてきた。彼の前で泣くのはこれが2回目だ。
「また泣いてんのかよ。てか、アイツと別れたって噂、マジなのかよ?」
彼はまた私の涙を指で拭いながら私に目線を合わせる。彼のこういうところ、ずるいと思う。学年でモテ男と噂されるだけはある。私はコクリと一度縦に頷くと、彼は「はあ」と溜め息を大きくついた。
「アイツ、一回殴らせてくんねーかな」
「なんで急にそうなるの」
「そういう約束だったんだよ」
私の頭ははてなでいっぱいだった。
「いい、わからなくても」
彼はそう言って私の頭を撫でた。か、と思うと急に私を抱きしめた。骨張った体が彼が男なのだということを感じさせる。
「ど、どうしたの……」
「苦しいなら何度でも救い出す。俺はお前が泣いてるのが一番苦しいんだよ」
「俺がお前を救い出す代わりに、俺をこの恋から救い出してくれよ」
「それって……」
私は驚いて彼の胸を押す。すると彼は難なく私から離れて、私の両頬に手をあてた。
「ずっと好きだったんだ。俺の彼女になってください」
恋は「実る」という。
ならば、恋は誰かに摘まれるのだろうか。
否、摘まれるのではなく落ちていくのだ。
機が熟せば自ずと落ちる。
その結果が幸か不幸か、それは本人たち次第。
これは恋が実った者たちの記憶の断片を集めた物語。
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