第2片 レモンサワー

「ここにしようぜ」

彼が指を差したのは学生に優しい値段設定の居酒屋。店に気を張らなくてよいのは学生カップルの利点だろう。


「いらっしゃいませー!」

足を踏み入れた途端、威勢の良い声が聞こえてきた。バイトの同い年くらいの男の子だ。

「2名で」

「はい、2名様お通りでーす!」

「いらっしゃいませー!」という声が至るところから聞こえる。ちょっとした個室のような席に通された。どうやらバイトの彼が気を利かせたようだ。

「何飲む?」

「私、レモンサワー」

「気が合うな。俺もそれがいい。すみませーん」

彼が店員を呼び先に飲み物を頼む。その間にメニューをじっくり見る。

「え、肉じゃがとかあるんだけど」

「おー久々に肉じゃが食いてぇな」

「ならそういう系にしようか」

私が適当にメニューを身繕い、レモンサワーが届いたタイミングで頼んだ。


「かんぱーい」

「乾杯」

コツンというグラスの音が控えめに鳴った。

「んー!レモンってやっぱ爽快な気分になれるな!」

彼はそう言ってまたレモンサワーを煽る。喉仏が上下に動く様子をサワーを飲みながら私は盗み見た。

「失礼しまーす!こちら肉じゃがになります。それから…」

「ありがとうございます」

店員が品を一つずつ机の上に並べ、あっという間に埋め尽くされた。店員が去ったあとに私は苦笑しながら「フードファイターね、私達」と呟くのだった。

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