第44話 エースに頼るアパッチ達

支えてくれていた仲間が、諸事情で減って行く中、ひたすら練習に明け暮れる長井達だった。それとは対照的に没頭できていない部員が一人いて、実は今、ある際立った動きが校内で起きていた。総体が目前だという非常に中途半端な時期になって、野球部が設立された。練習に打ち込めていない部員とは、それが気掛かりでならなかった箕田だった。

他の部員達にとっては別に大した話題でもなく、会話にすら出て来ない様な出来事だが、どうしても黙っては見過ごせなかった。この間の地区内での大会が終わって以来、河野と箕田は校舎で同じ中学の後輩達と、よく顔を合わせる様になった。ようやく今頃というか、最近になって存在に気付いたので、最初は気まずさを感じていたせいで、あえて避けて通り擦れ違っても挨拶すらしなかった。

まず顔を合わせた所で、何を喋ったらいいのか分からず、昔の先輩後輩の関係の様には行かなかった。ある時、そんな態度にイラ立ちを抑え切れなくなった後輩達は、強引に声を掛けて来た。内容は言う迄もなく野球部設立にあたり、一緒に参加してほしいとの誘いだった。河野にとっては、野球とは何の未練も無くなっていたが、自分の意思で辞めた訳ではない箕田には、迷いが生じていた。

『また機会があればプレーしてみたい…。』

その考えに辿り着く迄に、そう時間は掛からなかった。本音を言えば無理に河野に合わせ様と、強引に意思を押し殺していただけで、戻れるものなら元の鞘に戻りたいというのは、切実な願いだった。今は違う部に所属し、異なる活動をしている身でもあるので、そう抜け駆けは簡単に許されるものではない。

『今更自分に何ができるのか』と割り切った方が諦めが付いて良さそうで、本当に戻った所で何も成果は上げられない気がした。自信も無かったせいか去って行った、藍子と千秋の様な非情にはなり切れず、それでも後輩達からの誘いは擦れ違う度に続いていた。

わざわざ目の前での室内外を問わず『見せ付けキャッチボール』に、接近して来ては新品の『野球用品の見せびらかし』等、挑発的な勧誘行為と化し、とてもではないが迷いが抜け切れそうにはなかった。

ある日『授業が追い付かないので家でじっくり勉強がしたい』と下手な口実を作り、とうとう練習を休んでしまった。実際は帰宅せず、こっそり屋上で空を眺めて考えていた姿は、陸上部に入るかどうかで悩んでいた、一年生の頃の長井そのものだった。

ふと自分に近付く数人の足音を感じ、これが部員仲間なら、かなり面倒な事になる。それは野球部を作った元後輩達で、あっという間に取り囲まれてしまった。わざわざ彼等は同じ学校に入って迄、追い駆けて来るという、自らの進路さえ蹴った手段を取った。

ここは間違いなく志望校などではなかった筈であり、残念ながら慕った先輩が、そう迄した行為に応えてくれる事はなかった。むしろ嫌という程、理解せざるを得なかった事が何より辛かった。野球部の立ち上げにしても、本来は箕田がいてこその計画であり、後輩達だけで始めても意味が無い。

共に行動して貰える日を、ひたすら待ってはいたが見掛けるのは、ラグビーに没頭している姿ばかりだった。いつも陰から眺めるしかなく、これでは接する機会が中々見つからない。あの地区大会とやらの、楕円のボールに向かって励む姿勢とは、持続するものの様であり、とても見届ける気にはなれなかった。

次第に、既に野球からは離れてしまっているという印象を、認めたくはないが持つ様になった。結局、エース不在のまま部を立ち上げる事になり、帰って来ると信じていた先輩は、もういなかった。引き返しの効かない最終手段を選んでしまった以上、期待を掛ける先輩に、アタックしに来るしか目的は無い。

『本当に、野球が捨てられる訳がない…。』

箕田が、落ち着かない様な気掛かりを感じ始めたのは、ちょうどこの時だった。まるで後輩達は、そんな確信を持っているかの様だった。本人には迷いがある事を、何となくではあるが察しており、そこに上手く付け込めれば本来の目的が成功させられる。僅かな望みでしかないが例え失敗したとしても、それは当然の予測の範疇だった。

彼等の主張する内容は部員は今、九人ちょうどいるので、一年生チームながら出れない事はない、次に行われる予選への出場を取り合えず決めていた。既に申請は通っているが、自分達だけでは不安があり、やっぱり本当の意味での、キャプテンの存在が必要になって来ると感じた。実にじらした前置きだが要は、どうしても入部を考えてほしかった。

一つの守備に配置できる部員は一人のみで、補欠がいない上、殆どが外野経験者だった。しかも打順が下位か、敗戦が濃厚な試合で代打でしか出た事がないにも関わらず、強引な内野へのコンバートを重ねる様に行っていた。

唯一のピッチャーというのも名ばかりで、実戦経験も無ければエースとしての自信も無く、箕田が決断さえしてくれたなら、控えか外野に回れるといった程度の自覚しかなかった。それが無理なら、ほんの一時期だけ、力を貸して貰いたいというものだった。

もはや悲壮感が漂う集団でしかないが、本当に心から、高校でも野球を続けたいと願うなら、こういう学校は始めから選ばない。これは名門校の扉を叩かなかった、残党の必然的な末路で、ここに揃った面々とは、いわゆる『アパッチ軍団』に過ぎなかった。

それでも大会参加の権利は得て、絶対エースの帰りを待ち準備は整えた。不動の先発投手枠と再び立つマウンドは、用意されており後は返答次第で、その椅子に座れるかどうかが決まる。プライドも無く過去を清算した残党だからこそ、できるセッティングだった。

『はい』と言ってしまえば、すんなりと終わるかも知れないが、これでは唐突に叩き付けられる、ただ即答を迫るものでしかなかった。藍子と千秋が、陸上部から受けた要請の時の事情とは、かなり程遠いものがあったが、別に比べる必要も無い…。

「中学の時から何度も言っている!河野がキャッチャーじゃない限り投げられない!」

河野がボールを脅威に捉える様になって以来、まともな練習にはならなくなり、そう言って野球部を辞めた。今思えば、もう少し自分に、相手の立場を考えられる気持ちがあったなら、事態は避けられていたに違いない。

チームへの不信感が募ったとか言っていたが、下らない言い訳程度にしか取れなかった。やがて練習自体、現れなくなった事で自身の野球への意識さえ、日毎に薄くなって行った。

高校に入ってからも、みんな野球部一筋でいれた筈であり、全ては自分の傲慢さが仲間の進路を変えてしまった。この後輩達は自分が去った後も、本来の野球部としての立場を獲得した、派閥組に加わろうとはしなかった。

かすかな望みをかけて路頭をさ迷う道を選んだ末に、自ら部を立ち上げて、見捨てて行った張本人を迎え入れ様としていた。こういう場面で目の前に現れる事も、きっと無かったので相当な覚悟があった事は、十分過ぎる程に伺えた。

申し訳ないが、それで、この学校に入って来た彼等の願いは聞き入れられなかった。みんなの元には行けないし、今の自分の置かれた立場が、どうしても許さないからだった。

「今更、何をやれって言うんだ。戻った所で、みんなを引っ張ってなんか行けない。」

一旦はグローブを投げ出した身であり、易々とマウンドに舞い戻れる程、甘い世界ではない事を自覚していた。もし、かつてのエースに頼りさえすれば、勝ち進めるといった理由で接近して来たなら、ただの筋違いだった。

打たれさえしなければ、投手と捕手だけで守備は成り立つなどと過信していたのは、もう昔の話しだった。野球部を立ち上げたので即、大会に出場するというのは、エースを取り戻したいが為の、こじつけに過ぎなかった。

だからこそ彼等の今の目的が、その予選での優勝だとは思っていない。あえて切羽詰った状況を訴えて、自分に救いの手を差し伸べて貰う様、仕向けているだけに受け取れた。

過去の自分に懺悔はしても、これに応じるかは話しが別であり、現状では非情になり切るしかなった。在籍するラグビー部にしても、始めの頃は『一回戦出場チーム』と散々、揶揄されていた。やがて後輩達の前から逃げる様に立ち去って行くと、取り残された彼等は、新たな手段を考えなければならなくなった。

一度の交渉で済まなかったのは本当に予測通りだが、日程に余裕は無く、あまり回数は重ねられない。『それなら河野の方を説得できればいいんじゃね?』と、ひらめいた誰かが方向転換を計り始めていた。

可能性がゼロではない限り、作戦を遂行し続けるのは勿論、加入してくれるメンバーは、一人でも多いに越した事はない。よくよく考えれば、良質の投手を仕入れ様としているのだから、それに見合う捕手を用意した上で、最高のバッテリーを組ませる必要があった。

寄せ集めでしかないメンバー内のキャッチャーでは、用が足りていないのは言う迄もなく、扇の要にはならない。打率はともかくとして、河野の采配やリードは、当時から一目置かれていた。もし入学していたのが河野だけなら、ここに彼等は来ていなかった。

酷ではあるが、あくまでも目的は箕田の獲得であり、それ以外に興味は無い。その為には、河野という鍵さえ入手すれば、ほんの少しの扉の隙間は大きく開かれるのだった。

解釈を変えれば『河野がやるって言うのなら自分もやるって言うんじゃね?』という事になり、迷いが抜け切れていないのが確認できている以上、詰め寄る余地は十分あった。

やはり要因は河野が当の本人の目の前に、常に居るからであり、未練が抜け切れていないのが明らかだった。機会さえあれば、またバッテリーを組んでみたいと、思い描いていると見て間違いはない。

その夢の続きは、かつての後輩達がきっと叶えると、異様な自信に満ちていたが、彼等こそ目的を果たさなければならなかった。練り上げた土台に立って貰うだけという所に迄、何とかこぎ付けたが、自分達だけで出場となってしまうと、生き恥を晒す事となる…。

練習を休んだのは一日だけで、翌日からは、いつも通りに加わったが、気が落ち着かないのは相変わらずだった。やがて終わって部員全員が帰った後、特に意味は無く一人で部室に座り込んでいると、長井が引き返して来た。

「良かったら一緒に帰らないか?」

そうは言っても長井は長距離の自転車通学で、比べて彼は電車なので駅に向わなければならず、方向も正反対だった。

「何か話しがあるんだろう?」

彼は不審そうに聞いたが、そうでなければ、こうして誘われる筈がない。当たり前の事は確認するなと、少々イライラしながらも学校近くの公園に入ると『もう野球はやらないのか?』と尋ねた。あまりにも的外れな質問で、自分が部員として軌道に乗っている時期に、どうしてそんな話しが出るのかと思った。

「誰が言ったんだ!」

また野球をやりたいとは口に出していないし、ここを辞め様とも思ってはいない。ひょっとして、河野が何か余計な事を言ったのかと、急に激怒し出した。それとも、あの後輩達が大胆にも、このキャプテンに直談判という、強行手段を取ったとも考えられた。

こうして呼び出される直前に、第三者と打ち合わせでもしていない限りは、まず指摘される事のない内容だった。河野を焦点にするより、まとめ役である長井に的を絞った方が、手っ取り早いという結論に達しても、おかしくはなかった。残念ながら、この何となく察した嫌な予感は、的中してはいなかった。

昨日の、たった一日の練習を休んだ彼の姿は、明らかに挙動不審だった。大体の行動は見抜かれており、本当に家で勉学に集中していたとは、誰も思っていなかった。野球部への未練があるとは、受け取られたくないと前置きした上で、仕方なく改めて経緯を話した。

『自分達のキャプテンを帰して欲しい…。』

例の後輩達が今後、そう言って詰め寄って来たとしても、間違っても応じないでほしいとも訴えた。裏で勝手に動く計画程、怖いものはなく、自身で感知できなければ防ぎ様がなかった。とにかく何が何でもといった、あの後輩達には焦りや考えがあるに違いない。

どんな手段でも使わないと、箕田を引きずり出すという、本来の目的が果たせなくなるのだった。卒業する迄、期待したエースに振り向いて貰えなかったとしたら、その行動の全ては無駄になってしまう。そうはなりたくないので気の済む迄やらないと、ここに入学して来た意味が無いとの同情の余地を、長井は感じずにはいられなくなった。

現状を言えば彼等が必要としている人材を、異常に抱え込んでいる為、逆恨みされて襲撃されやしないかと、そっちの心配をしていた。ここに入部した当時を思い出してほしいと、強引に話題を切り替えると箕田は多少、戸惑った。河野が何かを掴んで自信を取り戻した後は、また二人で野球でも始めたらいい…。

二人が今の部に所属しているのは、それ迄の準備期間だと割り切って構わないというのが、当初の取り決めだった。ただ現実に叶えられる環境が揃ったらの話しで、入部したての頃は慣れない女子高同然の環境に、その望みは殆ど賭けられなかった。この先、何人の男子が増えるのかすら分からず、どうなるかは全くもって不透明を承知の上で入った。

言う迄もなく、始めから拘束する権限や条件などは存在せず、これからは自由意思で決められるので、所属する部は選択できる『待遇』にあった。その後輩達から河野が、どう思われているのかは分からないが、希望しているのであれば共に放出する気があった。

『わざわざ君を追い駆ける為だけに、この学校に入って来たんだよ…。』

「なんか、ごまかしているんじゃないか?」

説得する様に締め括ろうとはしたが、あまりの無理矢理さから失敗に終わった。彼にも立場というものがあり幾等、自分の為に進路を蹴って入って来たからとはいっても、結局は自己責任による行動だった。

予選出場を表明したのも、本人達の身勝手さから来たものであり、その為に、自分が犠牲になる様な気がしてならなかった。全ては寝耳に水でしかない事が、よく分かったので、急に降って沸いたものには賛同できなかった。

比べて長井には、部員として認めてくれた事に感謝しており、これからも一員として応えられる様、懸命に活動して行きたいと言った。最終的には、かつての後輩達からのラヴコールは、彼の耳には届かなかった。

『いや、このままでは下手すれば命に関わるので、移籍して貰わないと困る。本当にキャプテンに恩を感じているのなら、こんな訴えぐらい聞いてほしい…。』

二人が抜けた後の枠なら、戦力ダウンは否めないが、数人ばかりの新入部員でも補える。あらぬ疑いを掛けられるよりは、かなりマシだと思ったが、これも彼には伝わらなかった。

数日前からの中々、溶け込めない状態で練習に加わっている姿は、見ている側が辛くなるぐらいだった。何か迷いが、生じているからこその表れに決まっており、それが今日迄、明かされる事はなかった。原因は必然的に、あの後輩達との一件だと、箕田自らが言っている様なものだった。確かに本心や気持ちといった立場迄を、理解してやる事はできない。

ここ最近の、気落ちした様子を見せられている側にしてみれば、たまらなく不安でしょうがなかった。集中できなければケガをするだけの話しで、キャプテンとして言わせて貰うなら、これ以上、曖昧な気持ちで練習に参加されるのは迷惑なだけだった。

『キャッチャーがボールを怖がったのでは話しにならず、後輩にも示しが付かなくなるから、さっさと辞めるべき。』

これは箕田自身が、かつて逃げ出そうとしていた河野に向けた言葉であり、示しが付かなくなった今となっては、あまりにも説得力を落としていた。当時の河野にしてみれば、エースの方針には精神的にも受け付けなくなり、そう言われるのを待っていたかの様に、本当に目の前から去って行ってしまった。

長井には、元を辿れば気の進まなかった彼を、引き込んだ責任を感じていた。覚悟を決めての決断とはいっても、入部後も野球が常に頭から離れなかったに違いない。

そこに突然、昔の後輩が現れて諦めていたものへの誘いなど受けたら、どうしても考え込んでしまうのは当然と言える。彼が野球を捨てて今の部を続けるのは、自分が今でも、やむなく陸上部を続けている事と同じだった。それが実現しなかったのは幸いであり、本当に好きだからこそ未練を感じるし、いつ迄も打ち込んでいたいと思うものだった。

今後の彼の将来を願うなら、憎まれ口を叩いてでも、今の部からは静かに送り出した方がいいと思った。これは、あのアパッチ集団からの謂れ無き襲撃を回避するが為に、引き止め様としないのではない。慣れ親しんだ部員が離れて行くのは非常に、大きな損失であり涙の無償トレードといった所で、何か求め様ものなら見返りなどある筈もなく、鉄拳制裁の雨嵐が降り掛かって来るに決まっていた。

『いや、だから…。向こうには行かないって、さっきから言っているじゃないか。』

まず襲撃など引き起こしでもしたら、その後輩達は大会どころではなくなり、一向に呑み込みの悪い長井に彼はイラ立った。元々自分に出てくれさえすれば、それだけで喜ぶかも知れないという、ただの目的にされていたのは分かっていた。仮にもエースの頃のプライドは残っており、そんな義理に応えて迄、引き受ける事こそ何も結果は生まれなかった。

別に上位に食い込むのが、本来の目標ではないと割り切った出場が、とてもではないが善だとは思えなかった。散々ラグビーに没頭した直後に、ピッチャーとして機能できる程、甘いものではない。マウンドに立つには前もって、それなりの練習に打ち込む時間が必要であり、余計な事を考える余裕などなかった。

決意は揺ぎ無く、その事で襲撃される心配も皆無の様なので、これで野球部移籍を説得する必要は無くなった。安心し切ったものの、この一連の流れの大半は、長井の勘違いが大半を占めていた。箕田にとっては、自分を拾ってくれた仲間達への思いが、とても強かったと断言できる。別な受け皿が用意されれば、簡単に背を向けて辞められるのかという、答えに繋がってしまいそうな気がしていた。

どうして同級生にあたる長井の後輩達が、この学校に入ったのかは、よく理解できる事だった。その経緯と何の前触れもなくやって来た、あの後輩達とは明らかに違う。勝手に入って来ただけであり、それでも尚『自分が選んだ道』だと胸を張って言うのなら、本当に自分達だけで全うして貰いたかった。

野球を続けたいと口にしていたのは、長井と行動を共にする直前の頃の、いわば自分への言い訳に過ぎず、もう何も関係が無い事だった。展開次第では、エース復帰を考え直したかも知れないが、知らぬ間の陰での進行が、どうしても許せなかった。絶対に辞めないと言い切ってくれる部員は、心強い存在には変わりないが、これから何かと問題が起こりそうな気が、しないでもなかった。

藍子と千秋は、何か通じるものがあったとか言って、せっかく続けていた陸上部を去ってしまった。大会が終わる迄の間と割り切って、期限付きながら活躍の場を戻し、昔の仲間の所に戻ったのは、それから数年経ってからだった。もし、このまま戻って来なかったとしても、今迄の関係は変わらない。

限られた卒業迄の間、お互い頑張ろうとでも言うつもりでいた。今の部員達にしても、みんな好きで選んだ道だと言って、本来とは違う進路を取った。これらは長井が美談としているが、実際は自分を追い駆ける為だと言うよりは、あまりの孤立奮闘と無援さから、周囲が救済処置に走っただけだった。

河野と箕田だけは、こうした入ったきっかけが異なり、始めから長井と行動を取りたいと望んでいた訳ではない。今こそ好きな道を選ぶべきと思われるが、意思が無いのが明らかで、その先が進まなかった。最も、お気の毒なのは彼の後輩達だけという話しであって、その進捗は、こっちには無関係だった。

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