第3話


「ハナ、誕生日おめでとうーっ!」


ある日曜日。亘輝に誘われた。

今までは平日の放課後に遊んだりはしていたけれど、週末に約束をしたことはなかった。急に日曜に誘われたから何かと思っていたら、入ったカフェで彼はおもむろに、かわいくラッピングされた箱を差し出したのだ。突然のことにびっくりして固まってしまう。


「これ見た瞬間、お前にあげなきゃ!って思っちゃってさ!ほら、開けて開けて~!」


ウキウキとした表情で、そわそわと左右に小さく揺れている。確かに、今日はわたしの誕生日ではある。だけど、それを亘輝が知っていてくれたなんて。そして、わざわざプレゼントまでくれるなんて。

嬉しさで鼻の奥がツンとして、あわてて下を向いた。

 息を整えて、テーブルに置かれた小さな包みのリボンに手をかける。薄いピンクの、きれいなリボン。しゅるりと滑りながらそれは解かれ、震える手で箱を開ける。

そこにあったのは、キラキラと、輝くペンダント。

小さな星が、透明なまるいグラスの中にいくつもキラキラ舞っているような、そんなデザイン。


「きれい、、、」


取り出して、顔の前で揺らしてみる。きらり、きらり。それは光を反射して、角度によって色々なきらめき方をする。カタンと亘輝がテーブルに両手をついて、身を乗り出す。


「貸して?」


不思議に思って彼に手渡すと、彼はさらに背を曲げるから、亘輝の香りが目の前で揺れた。両耳を、彼の腕がそっとかすめる。吐息を耳元で感じるほどに距離が近づき、わたしの心臓はもう、壊れてしまうんじゃないかというほどに震えている。


「よし、できた…。」


彼のつぶやきが耳もとで転がって、その気配はすっと離れる。

残されたのは、胸元で輝くペンダントと、彼の香り。

ペンダントは、キラキラと輝いて、それはきっと、恋のきらめきも反射していて。


「嬉しい。ありがとう。」


素直に伝えると、彼は嬉しそうに微笑んだ。やっぱり、似合うって頷いて。

ああうれしい。

どうしよう。

今までで一番うれしい誕生日だ。

ねえどうしよう。

すきだよ。

亘輝、すごく、すごくすごく、あなたがすき。



「亘輝くん…?」


鈴の転がるようなかわいらしい声と、彼の表情が固まるのを見て、わたしの気持ちも一瞬で岩のように固まった。

そこにいたのは、間違いなく、彼が想いを寄せるあの子。と、その彼氏だった。


ずしんと、首からさがるペンダントは、重たい重たい錘に姿を変えた。




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