第42話 ルビー&サファイア物語①

横浜市。総人口374万人(四国地方に匹敵)。面積437.38 km²。関東地方南部、神奈川県東部に位置する県の県庁所在地。政令指定都市。18区の行政区を持つ。京浜工業地帯。中心地(関内・関外地区、横浜みなとみらい21 (MM21) 地区、横浜駅周辺地区。城郷地区。羽沢地区。新羽地区。新横浜地区(新横浜駅周辺地区)………………………………………………………………………………………………

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 ぺりっ。


「マリアちゃん、なに読んでるの?」

 俺はマリアが熱心に読んでいるレジュメを取り上げた。


「新しい職場のための予習よ。基礎知識だけでもね」

 マリアは引っ越しと同時に転職も決めていた。タウン情報誌とかフリーペーパーを主に横浜周辺で取り扱う地方出版社である。


「改めて思ったけど横浜って馬鹿でっかいよね。徳島県、香川県、愛媛県、高知県、全部あわせた規模だもん」

 マリアは俺から取り返したレジュメを縦にしたり横にしたりして唸っている。


 短大を出ただけあってしっかりしているなと思うけど、昼間っから酒を飲みながらってのは感心できない。クリスマスからこっち、マリアは雪香シュエシャンの店に入り浸りだ。


 レディース・ランチセット、1200円。

 点心各種、チマキと大盛り野菜サラダにワインクーラーと食後のコーヒー付き。

 追加のワインクーラーが300円。


 絶妙な値段設定に雪香シュエシャンの恐ろしい商才を感じる。

 真冬に氷を入れたワインクーラー? と疑問を持ちそうだが、部屋の異常な暖房も計算のうち。


「なんかここにいると喉が渇いてくるな……雪香シュエシャンっ! 俺にもビールっ! それにしても引っ越し先が横浜だとは思わなかったよ」

 俺は丸テーブルのマリアの隣に腰を降ろした。


「考えたら就職しなくてもビルにたずさわれる仕事に就けばいいって気付いたの。なら横浜じゃない? 東京のビルはなんか味気ないわよ。家賃も探せばぐんとお安い所がいっぱいあるし、地元の友達にも横浜住みって見栄を張れる。東京住みより乙女心をくすぐるのよ」

 女の子の世界はなにかといろいろあるんだなと、ビールを一気に煽った。


「えー海外の玄関口として……有数の外資獲得力を誇った。関内(外国人居留地)、中華街もここよね? ……発展。山下町が低湿で狭隘きょうあいであることからより条件の良い堀川の南側の高台が注目され山手町が住宅地として開発。う~んとそれから、経済活動の中心は横浜駅周辺地域であり、政治(市政)の中心は関内地区である。両者には約3kmの隔たりがあり事実上分断された状況にあって、そこで両地区の中間に位置する横浜みなとみらい21地区(桜木町駅周辺)の開発を進め横浜都心の一体的発展を進めている。尚、それ以外の周辺地域の発展について……ぐふっ」


「お疲れ様。まあこれでも飲みなよ」

 俺は一杯300円のワインクーラーをおごることにした。


「あんがと……まあ働かざる者食うべからずよっ! 雪香シュエシャンっ! 私が一人前になったらこのお店も紹介してあげるねっ!」


 雪香シュエシャンが、ダブルピースしてから親指を立てた。



 路地を挟んだ向かいの広場では高校生が龍舞の個人練習をしている。春節に備えてだろう。働かざる者、食うべからずか~……てぃっ! おまえは飲むべからずだ!


 ジャンさんは誰に叩かれたのか判らないくらい酔っていて、周囲を見渡している。

 マリアは年明けの出勤日まで飲んだくれてもいいが、この男は金を持つと碌なことがない。ちゃんとしてるのか? 本国への仕送りもあるだろ?


「まあでもちょっと当てが外れちゃったなぁ。やっぱいるわよね、恋人」

 見れば、この街のルビー&サファイアが高校生の演舞に拍手を送っている。なぬ?


 もしかして、ひも野郎がいるから横浜に引っ越したのか? おいおい……






 













 

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